2017皐月賞馬のプロフィール

桜花賞に続いて波乱、池江泰寿厩舎のワン・ツー・フィニッシュとなった皐月賞馬のプロフィールです。
今年の勝馬アルアインは父ディープインパクト、母ドバイ・マジェスティー Dubai Majesty 、母の父エッセンス・オブ・ドバイ Essence of Dubai という血統。

去年のディーマジェスティーに続くディープインパクト産駒の2連覇となりましたが、皐月賞史上2連覇を達成した種牡馬はディープが6頭目になります。即ち1939年と1940年のプライオリー・パーク Priory Park 、1949年と1950年はプリメロ Primero 。そしてディープの父サンデー・サイレンス Sunday Silence が3頭目となり、その後もネオユニヴァース(2009年と2010年)、ステイゴールド(2011年と2012年)と続いてきました。
サンデー・サイレンスは1995年と1996年、2000年と2001年の二度に亘って連覇を達成しただけでなく、2003年から2005年までは3連覇。現在の日本競馬は、サンデー抜きには語れない所以でしょう。
もし来年の皐月賞をディープインパクト産駒が制すれば偉大な父と並ぶことになり、2018年の皐月賞の最大の見どころになるのではないかと思っています。

ここからはアルアインの牝系に話題を移します。
桜花賞馬レーヌミノルは2号族、それも初期の段階で傑出した牝馬が分岐していったため、取り残されるような形で近年は活躍馬に恵まれていない2-Cファミリーという紹介をしましたが、実は皐月賞馬も2号族に属しているのですね。
こちらは2号族でもアタランタ Atalanta (C)ではなく、ラス・オブ・ザ・ミル Lass of the Mill (M)から更に分岐したオーヴィル・メア Orville Mare(1809年生まれ)を基礎とする2-Sファミリーに入ります。2-Cに比べて分岐が遅いため、このファミリーは現在でも多くのGⅠ級勝馬が多出しており、いつものように母から順に遡っていきましょう。

先ず母ドバイ・マジェスティー(2005年 黒鹿毛)からしてGⅠ馬であることは既にご存知でしょう。父エッセンス・オブ・ドバイはUAE2000ギニーとUAEダービーに勝ったドバイの2冠馬で、アメリカでもスーパー・ダービーを制しました。
ドバイ・マジェスティーは2歳から5歳までの4シーズン走り、通算成績は34戦12勝2着7回3着6回。ブレット・カルホウン師が管理し、主にジェイミー・セリオという騎手が騎乗していました。以下掻い摘んで経歴を見て行きましょう。

彼女のデビューは2歳の11月、フロリダの現在は閉鎖されているカルダー競馬場。6.5ハロンの新馬戦でしたが、グルッと一周してきただけの競馬で5着でした。しかし一叩きされて競馬を覚えたか、2戦目カルダーの5ハロン戦では2番手から抜け出して初勝利を飾りました。3戦目は同じカルダーのアローワンス戦4着でシーズンを終えます。
3歳のドバイ・マジェスティーはクラシックには縁が無く、12戦4勝2着2回3着3回。5月のシーズン3戦目にやはりカルダーで6ハロンのクレイミング戦を3番手から抜け出して勝ち、6月には5戦目(カルダー、6ハロン)と6戦目(カルダー、8ハロン)のアローワンス戦を連勝。7月12日にはカルダー競馬場で初めてG戦に挑戦します。もちろんステークスも最初となったのはアゼリア・ステークス(GⅢ、6ハロン)で、5番手から伸びて2着と、彼女の先行抜け出す競馬でのステークス初入着となりました。
このあとはインディアナ・オークス(GⅡ、8.5ハロン)3着、レイヴン・ラン・ステークス(GⅡ、7ハロン)3着と続き、11月のチャーチル・ダウンズで1マイルのアローワンス戦に勝って5勝目。

明けて4歳時、2戦目にフェア・グラウンズで6ハロンのアローワンス戦に勝ち、4月のキーンランドで初めてGⅠ戦(ヴァイナリー・マディソン・ステークス、7ハロン)に挑戦し、逃げて4着。続くチャーチル・ダウンズのフマーナ・ディスタッフ・ステークス(GⅠ、7ハロン)も逃げて3着と捕まり、逃げる作戦では勝てないという結果が出ました。しかし、3戦続けてのG戦挑戦となった同じ5月開催のチャーチル・ダウンズ、ウイニング・カラーズ・ステークス(GⅢ、6ハロン)ではやはり逃げ、一旦は2番手と交わされましたが再び差し返す渋太さを発揮、遂に念願のG戦初勝利を記録します。この年は秋のキーンランドでも一般ステークス(フランクリン・カウンティー・ステークス、5.5ハロン)に勝ち、シーズンを終えます。
ドバイ・マジェスティー現役最後のシーズンとなった5歳時は、10戦4勝。前年も走った短距離のG戦、ヴァイナリー・マディソン2着、フマーナ・ディスタッフ9着に続き、G戦初勝利となった縁起の良いウイニング・カラーズでは彼女のスタイルを貫き、2番手追走から抜け出して2連覇を達成します。更に夏のモンマス・パークでも一般ステークス(インヴィンシブル・リヴェンジ・ステークス、5.5ハロン)に勝つと、2着の一戦を置いて10月のキーンランドでサラブレッド・クラブ・オブ・アメリカ・ステークス(GⅡ、6ハロン)に快勝、この年はチャーチル・ダウンズで行われたブリーダーズ・カップに参戦し、遂に牝馬スプリンターの頂点となるフィリー・アンド・メア・スプリント(GⅠ、7ハロン)をやはり3番手から抜け出して制し、遂にGⅠホースのタイトルを獲得したのでした。

BCを最後にキーンランドで競売に掛けられたドバイ・マジェスティーを競り落としてのが、社台ファームの吉田勝巳氏。この辺りの秘話はいずれ優駿などで紹介されるでしょう。いずれにしても、ドバイ・マジェスティーは1マイル戦で2回勝ったとは言え、得意な距離は6ハロンと7ハロンのスプリントと見て良いでしょう。2011年から日本でスタートした繁殖記録は、
2012年 ゴールドエッセンス 牝 鹿毛 父キングカメハメハ 吉田勝巳オーナー、栗東の斎藤崇史厩舎で2017年4月現在、18戦3勝。去年8月に糸魚川特別(新潟2000メートル)に優勝。
2013年 ジュベルアリ 牝 鹿毛 父ディープインパクト 未出走
2014年 アルアイン

2代母はグレート・マジェスティー Great Majesty (1990年 黒鹿毛 父グレート・アバヴ Great Above)。この馬は15戦4勝ですが、走ったのは未勝利戦とクレーミング戦のみでステークスの経験はありません。勝鞍は5ハロン、5.5ハロン、6ハロンが2回で、娘同様スプリンターでした。
母としても特に名を残しているような馬は見当たらず、彼女以降5代母までは活躍馬も無く、名前の列記になってしまいます。

3代母ミスティック・マジェスティー Mistic Majesty (1978年 鹿毛 父ヒズ・マジェスティー His Majesty)もデビュー戦に勝っただけの13戦1勝。
4代母ネカラス・ミス Necaras Miss (1968年 栗毛 父アンバーナッシュ Ambernash)も15戦1勝で、競走成績も繁殖成績も特記するほどのものは見当たりません。

5代母はサラセン・ミス Saracen Miss (1944年 黒鹿毛 父パイレート Pilate)と言い、51戦9勝とそれなりの成績ですがステークスの勝鞍は無く、競走馬としては無名。
しかし母としては牡馬タウソン Towson がサルヴァトーレ・マイルに勝って活躍したほか、3頭の娘がGⅠ級活躍馬の祖となって今日に枝葉を広げてきました。

その1頭がアルアインの祖ネカラス・ミスですが、残る2頭にも触れておきましょう。
先ずは1955年生まれの娘タウソン・ミスで、その娘ジッピー・ドゥー Zippy Do はコロンビアーナ・ハンデ(GⅡ)に勝った他、ハリウッド・ターフ・カップ(GⅠ)に勝ってBCターフでも4着したヴィルザック Vilzak と、フリゼット・ステークス(GⅠ)とマトロン・ステークス(GⅠ)に勝ってサンタ・アニタ・オークスで2着したサム・ロマンス Some Romance を産みました。
更にサム・ロマンスは、フランスで古馬としてモーリス・ド・ギースト賞(GⅠ、1300メートル)を制したガースウッド Garswood の4代母でもあります。

またサラセン・ミスの1963年生まれの娘タウソン・タウン・ギャル Towson Town Gal は、2勝馬ながら2頭の優れた娘を産みます。
その1頭セイロンギャル Sailongal はサンタ・モニカ・ハンデ(GⅠ)とホーソン・ハンデ(GⅡ)に勝ったフリーダム・クライ Freedom Cry の2代母となり、
よく似た名の妹セイリンゴン Sailingon も自身がクリサンシマム・ハンデ(GⅢ)を2連覇し、ヴァニティー・ハンデ、サンタ・マルガリータ・ハンデ、サンタ・マリア・ハンデとGⅠ3勝の名牝マニスティック Manistique と、ハリウッド・ダービー(GⅠ)馬アンブライドルド・コマンド Unbridled Command の夫々3代母となりました。

以上が皐月賞馬アルアインの5代母まで遡ったプロフィールですが、最後に2-Sファミリーの更に偉大な名馬リストを挙げておきましょう。
基礎牝馬オーヴィル・メアから4代を経たタスマニア Tasmania はヨークシャー・オークスの勝馬で、その産駒に偉大な3頭の娘がありました。

①1860年生まれのキュラコア Curacoa という牝馬の活躍が最も目覚ましく、その子孫からは三冠馬セクレタリアート Secretariat 、凱旋門賞2回のアレッジド Allefed 、キングジョージのバステッド Busted 、ダービー馬アンペリー Empery など名馬は綺羅星の如し。日本でもロードカナロア、ニシノフラワー、ニチドウタロー、ミッキークイーンがこの子孫。
②1863年生まれのポトマック Potomac は姉ほどの成績ではないものの、それでも仏1000ギニー馬ポリムニー Polymnie の祖。
そして③マルガリータ Margarita が、アルアインの5代母サラセン・ミスの更に6代母というファミリー・ヒストリーとなり、この母からはカネヒキリやアグネステスコも出ているという具合。

些か広げ過ぎた感はありますが、アルアインの牝系として紹介した次第です。

 

 

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