仏2000ギニーとサン=タラリ、日本と関係が・・・

土曜日に続いて、フランスのドーヴィル競馬場でシーズン最初のクラシックが行われました。前日の仏1000ギニーは大荒れとなりましたが、2000ギニーはどうだったのでしょうか。

その前に、この日はG戦が2鞍組まれており、共にGⅠ戦という豪華な日曜日。ギニーの前に行われたサン=タラリ賞 Prix Saint-Alary (GⅠ、3歳牝、2000メートル)から話を始めましょう。
前日はかなりの不良馬場でしたが、この日は風と太陽のお陰で馬場は相当程度回復、それでも馬場発表は soft でしたが、快方に向かっている重馬場というのが結果にも影響したようです。英仏オークスのトライアルとあって出走馬は11頭。前走ヴァントー賞(GⅢ)に勝ったゴールド・ラック Gold Luck が3対1の1番人気に支持されていました。

流石にドーヴィルの2000メートルは直線ではなく、引き込み線から左回りで直線に合流する形状。9番人気(31対1)のエステル・マ・ベル Estelle Ma Belle の逃げでレースが始まります。これを2番手で追走していた7番人気(202対10)のソーベツ Sobetsu が直線入口で外から逃げ馬を飲み込むと、あとは独走。内の3番手から抜けた8番人気(28対1)のヴュー・ファンタスティック Vue Fantastique に3馬身差を付ける圧勝でした。
後方から追い込んだ3番人気(18対5)のコロネット Coronet が1馬身4分の3差で3着に入り、人気のゴールド・ラックは先行して何時でも抜け出す位置に付けながら伸びず、5着に終わっています。

結果的には荒れたようにも見えますが、内容は最強馬が順当に圧勝した印象。勝ったソーベツはゴドルフィンの所有馬で、英国でチャーリー・アップルビー師が管理し、ウイリアム・ビュイック騎乗。去年8月にニューマーケットの7ハロンでデビューして3着、2戦目に同じニューマーケットの1マイルで初勝利。続いて10月のフィリーズ・マイル(GⅠ)に挑戦しましたが、苦手な固い馬場で5着に終わりました。この時の勝馬が、英1000ギニーで不利がありながら2着したロードデンドロン Rhododendron です。
馬名のソーベツは、恐らく北海道の「壮瞥」のことで、母はレイク・トーヤ Lake Toya 。そう、洞爺湖のことで、壮瞥は洞爺湖がある町の名前。日本と関係があるのは馬名だけではなく、2代母シンコウエルメスは、去年の皐月賞馬ディーマジェスティーの2代母でもあります。
レース内容も血統面も1マイル半の距離には全く問題が無く、恐らく19日後に迫った英オークスに向かうでしょう。オッズはレース前の33対1から16対1にと半減しています。

また2着したヴュー・ファンタスティックは、前日の仏1000ギニーをプレシューズ Precieuse で制したファブリス・シャペ師の管理馬。こちらはフランス・オークスを目指すようですし、3着のコロネットはゴスデン厩舎、こちらも英オークスでソーベツに雪辱戦を挑むことになるようです。

というゴージャスな前座戦に続いて行われたのが、仏2000ギニーに相当するプール・デッセ・デ・プーラーン Poule d’Essais des Poulains (GⅠ、3歳牡、直線1600メートル)。枠順紹介通り13頭が出走し、ジャン=・リュック・ラガルデール賞勝馬で、今期ジェベル賞(GⅢ)2着と順調にスタートを切ったナショナル・ディフェンス National Defense が4対1の1番人気。今回は初めてクリストフ・スミオンを鞍上に迎え、万全の態勢です。
実績より厩舎の魅力か、パドックの状態が余程良かったのか、オブライエン厩舎でへファーナンが騎乗したオーダーオブザガーター Orderofthegarter が43対10で2番人気、前走フォンテンブロー賞(GⅢ)に勝ったブラムトー Brametot が5対1の3番人気で続きます。

レースは前日の仏1000ギニー同様、スタートから完全に二つのグループに分かれます。スタンドに近い(つまり外ラチ沿い)グループ5頭の先頭を走るのがオーダーオブザガーター、スタンドから遠い馬場中央を選んだ8頭の先陣を切ったのが4番人気(57対10)のリヴェット Rivet 。レース半ばで二つのグループが合流し、中央のリヴェットが前に出たと見るや、中央グループの2番手を追走していた5番人気(128対10)のル・ブリヴィド Le Brivido が最内から抜けて先頭。
しかしスタンド側グループの4番手を追走していたブラムトーが最内から鋭い瞬発力を爆発させ、最後は馬を内に寄せながらル・ブリヴィドを追い詰めます。首の上げ下げ、最後で短頭差で差し切ったのがブラムトーでした。粘ったリヴェットが3馬身差で3着に粘り、そのあとは6馬身の大差が付いてスポーティファイ Sportify 4着、オーダーオブザガーター5着。1番人気のナショナル・ディフェンスは中央グループで先行していましたが、戦意を喪失したか、最後はスミオンも追うのを止めて最下位13着で遅れて入線しています。

勝ったブラムトーは、去年アルマンザー Almanzor をチャンピオンに育てたジャン=クロード・ルジェ師の管理馬で、クリスチャン・デムーロ騎乗。ルジェ師もデムーロ騎手も仏2000ギニーは初制覇となります。
実はルジェ陣営、先月厩舎内に馬ヘルペスが蔓延し、厩舎の存在が危ぶまれたほど。師は“最悪の1週間”と表現しましたが、ブラムトーは幸い感染を免れ、無事にトライアルから本番と連勝。ルジェ師は地獄の後で天国を見た思いだったでしょう。

改めてブラムトーの戦績を振り返ると、2歳時は3戦続けてドーヴィルで走り、初戦の1200メートルと次戦の1500メートルに優勝。3戦目の1600メートル・リステッド戦は2着でしたが、2歳の終戦クリテリウム・ド・ボルドー(リステッド、1600メートル)に優勝。今期2連勝で通算6戦5勝2着1回となりました。
次走は間違いなく、3週後に行われる仏ダービーになるでしょう。末脚を活かすレース内容、血統面もスタミナに問題はなく、単なるマイラーじゃありません。なお同馬、仏2000ギニーの1週前にアル・シャカブが購入し、今回からはアル・シャカブの勝負服で走っています。

血統についてはプロフィールで詳しく取り上げる予定ですが、予告編としてチョッと触れると、その4代母が日本ダービー馬エイシンフラッシュの5代母と同じ。お楽しみに。

 

 

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