2017ロイヤル・アスコット4日目

引き続き好天に恵まれているロイヤル・アスコット、相変わらず good to firm で行われた4日目の6月23日は、これまでリステッド戦だったクイーンズ・ヴァースが新たにGⅡに格上げとなり、第1レースから第5レースまでが全てG戦。残り1レースのみがハンデ戦と言うプログラムでした。

4日目の幕開けはアルバニー・ステークス Albany S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。1頭の取り消しがありましたが、この日最も出走頭数の多い20頭立て。無敗馬7頭、未勝利馬5頭と難解な一戦で、ナース競馬場で2連勝してきたアイルランド(ジェシカ・ハリントン厩舎)のアルファ・センタウリ Alpha Centauri が2対1の1番人気。
レースはスタンド側とスタンドから遠い側の真っ二つに分かれ、遠目にはどちらが有利なのか判らない流れ。3日目のノーフォーク同様、スタンドから遠いコースを逃げた9番人気(20対1)の伏兵ディファレント・リーグ Different League が、同じく遠い側で2番手を追走した本命アルファ・センタウリを首差振り切ってのサプライズとなりました。スタンド側を先行していた勝馬と同じ9番人気のテイク・ミー・ウイズ・ユー Take Me With You が3馬身差の3着。

勝ったディファレント・リーグは、フランスのローカル競馬出身というほとんど知られていなかった1頭。リヨンとアンジェールの2歳戦を連勝し、3戦無敗でG戦初勝利となりました。管理するマシュー・パリュシエール師、騎乗したアントワーヌ・アムリン騎手共にロイヤル・アスコットは初勝利。

続いてはキング・エドワード7世ステークス Kibg Edward Ⅶ S (GⅡ、3歳牡せん、1マイル3ハロン211ヤード)。アスコット・ダービーとも呼ばれますが、実際歴史の初期にはその名前で行われていたこともあります。1頭が取り消して12頭立て。前走ダンテ・ステークス(GⅡ)は3着でしたが、ダービーをパスして馬の成長を優先したサー・マイケル・スタウト厩舎のクリスタル・オーシャン Crystal Ocean が9対4の1番人気。
レースは10番人気(25対1)のグレンカダム・グローリー Glencadam Glory が逃げ、クリスタル・オーシャンは中団。馬群が直線に向く所で、本命馬は外を回って進出したためコーナーワークで外に膨れ、その間2番手を追走していた2番人気(6対1)のパーミアン Permian がスルリと抜けて先頭に立つと、3番手を進んでいた6番人気(10対1)のカリディ Khalidi に半馬身差を付けて優勝。クリスタル・オーシャンはコース取りの不利もあり、1馬身4分の1差で3着と届きませんでした。本命にはアンドレア・アッゼニが騎乗していましたが、心無いファンが不満をぶつけるという紳士の国らしからぬシーンも見られたようです。

これがロイヤル・アスコット40勝目となるマーク・ジョンストン厩舎、当初の予定(アダム・カービー)から乗り替わってウイリアム・ビュイックが騎乗したパーミアンは、2走前のダンテ・ステークスでクリスタル・オーシャンを破って優勝していた馬。前走ダービーが10着と凡走に終わったため距離が不安視されて1番人気の座を明け渡していたもの。ビュイックによればエプサムはコースが合わなかったということで、スタミナ不足が敗因ではなかったようです。
GⅡ戦を2勝したパーミアン、次は当然ながらGⅠ獲りに挑戦していくでしょうが、愛ダービーはレース間隔が無く、陣営の狙いはその先でしょう。

さて4日目はGⅠ戦が2鞍組まれていますが、先に行われたのが3年前に創設された3歳馬の短距離王決定戦、コモンウェルス・カップ Commonwealth Cup (GⅠ、3歳、6ハロン)。快速馬12頭が揃ってスピードを競います。中でも自身が調教した馬で最も速い馬、とオブライエン師が豪語する5戦負け無しのカラヴァッジョ Caravaggio が5対6の断然1番人気に支持されています。
12頭立てと比較的少ないメンバーのため、馬群が二手に分かれるような展開にはなりません。オブライエン厩舎のペースメーカー、インテリジェンス・クロス Intelligence Cross のハナを叩いて逃げたのは、ゴドルフィン軍団の2番人気(11対4)ハリー・エンジェル Harry Angel 。これを同じくゴドルフィンの3番人気(9対2)ブルー・ポイント Blue Point が追走してゴドルフィンのワン・ツーという場面も見られましたが、やはり速かったのがカラヴァッジョ。然程良くないスタートから中団で待機していた本命馬、最後の1ハロンでスタンドから遠い側に進路を取ると、逃げたハリー・エンジェルを4分の3差で差し切っていました。半馬身差でブルー・ポイントが3着に入り、4着のアメリカ馬(ワード厩舎)バウンド・フォー・ノーホエア Bound For Nowhere は更に3馬身離されています。

ライアン・ムーアの馬を信頼しきった騎乗が光ったカラヴァッジョ、これで6戦6勝と文句なく3歳短距離王。GⅠ戦は2歳時のフェニックス・ステークスに続く2勝目で、去年のロイヤル開催でコヴェントリー・ステークス(GⅡ)を制しているので、アスコットも2勝目となります。今期はラッケン・ステークス(GⅢ)で始動し、これが2戦目。次はもちろん古馬との対決となり、差し当たってはジュライ・カップで三つ目のGⅠ戦を目指すことになりそうです。

第4レースもGⅠ戦のコロネーション・ステークス Coronation S (GⅠ、3歳牝、7ハロン213ヤード)。こちらは3歳マイル女王決定戦で、この日最も少ない7頭立て。英愛仏米の4か国からマイラーが集いましたが、ここでもオブライエン/ムーアの英愛1000ギニー2冠馬ウインター Winter が4対9の圧倒的1番人気。追加登録料を支払って参戦した仏1000ギニーのプレシューズ Precieuse は8対1の3番人気に留まっています。
オリヴィエ・ペリエ騎乗のプレシューズが先手を取って逃げましたが、4番手の内を追走していたウインターが楽にこれを捉え、後は2着争いを尻目に一直線。2番手追走を粘った4番人気(12対1)のロリー・ポリー Roly Poly に2馬身4分の1差を付ける完勝で3歳牝馬マイル・チャンピオンに輝きました。首差で3番手を進んだ5番人気(16対1)のハイドランジア Hydrangea が3着に入り、オブライエン厩舎は出走させた3頭によるワン・ツー・スリー達成。2番人気(13対2)のダブヤー Dabyah が4着、アメリカから芝のGⅢ戦を連勝して遠征したラ・コロネル La Coronel は4着、プレシューズは7着最下位とギニー馬対決はクッキリと明暗が分かれました。

オブライエン師はこのレース、2002年のソフィスティキャット Sophisticat 、2010年のリリー・ラングトリー Lilly Langtry に続く3勝目。ムーア騎手も2014年のリジーナ Rizeena に続く2勝目と、ロイヤル・アスコットでも勝つのが難しいGⅠ戦と言えるでしょう。オブライエン/ムーアはコモンウェルスと併せてGⅠダブル。
ウインターにとっても3歳牝馬限定戦はこれが最後、このあとは古馬との対戦で世代を超えたチャンピオンを目指すことになります。

最後は、冒頭で紹介したように今年からGⅡに格上げされたクイーンズ・ヴァース Queen’s Vase (GⅡ、3歳、1マイル5ハロン211ヤード)。開催初日にも触れましたが、GⅢとリステッドを行き来し、ここ数年間はリステッド戦に格下げされていたもの。一気にGⅡに格上げされたのは、パターンレース委員会が長距離戦を重視していくことを打ち出したためですが、従来の2マイルという距離から1マイル6ハロンに短縮したのは、より走り易くすることと、セントレジャーのトライアル的性格を強めるためでもありましょう。
オーソリティーの意向も働いたか、出走してきたのは13頭。目の前でGⅠダブルを見せ付けられたオブライエン/ムーア・コンビのベルグラヴィア Belgravia が5対1の1番人気に支持されていました。

逃げたのは3番人気(7対1)のタイム・トゥー・スタディー Time To Study でしたが、残り2ハロンで4番人気(8対1)のカウント・オクターヴ Count Octave が先頭。そこに中団に付けていた2番人気(11対2)のストラディヴァリウス Stradivarius が追い込み、残り120ヤードで先頭に立つと、カウント・オクターヴを首差抑えてGⅡヴァーズ初代勝馬になりました。7番人気(10対1)のシークレット・アドヴァイザー Secret Adviser が2馬身差の3着に入り、人気のベルグラヴィアは4着。
ジョン・ゴスデン厩舎、今開催では初勝利となるアンドレア・アッゼニ騎乗のストラディヴァリウスは、前走チェスターで12ハロンのハンデ戦で2着、その前にシーズン初戦となるビヴァリーで10ハロンのハンデ戦で2勝目を挙げていました。当然ながら、三冠の最終戦セントレジャーの候補に挙がっています。

なお、このレースにはディープインパクト産駒が2頭参戦。1頭はオブライエン厩舎のウィスコンシン Wisconsin 、もう1頭がシムコック厩舎のフィアース・インパクト Fierce Impact でしたが、期待空しく前者が12着、後者は13着と最下位争いに終わったのは残念。やはりステイヤーではないのかな?

最後は第6レース、デューク・オブ・エデンバラ・ステークス Duke of Edinburgh S は3歳上、1マイル4ハロンのハンデ戦で、19頭立て。このレースも4対1の1番人気に支持された無敗の4歳馬ワディガー Wadigor が16着に敗れる波乱で、20対1のレア・リズム Rare Rhytms が勝って穴をあけました。
アップルビー厩舎、ビュイック騎乗と言うことでゴドルフィンの馬。毎年のことですが、現代の2大競馬グループであるゴドルフィンとクールモアはロイヤル・アスコットでもライヴァル同士。初日ゴドルフィンがハットトリックを達成し、チャーチルで敗れたクールモアは後手を踏んだ感じでしたが、4日目はGⅠダブルで共に4勝で並んだ直後。この日の最終レースでゴドルフィンが再び一歩リードしたことになります。残り1日、軍配はどちらに・・・。

 

 

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