イネイブル、圧巻の二冠達成

今年は珍しくもジュライ・カップと愛オークスが同日開催。先にニューマーケットをレポートしましたが、寧ろ話題はアイルランドの方かも。この日カラー競馬場では3鞍のG戦が組まれていましたが、最後に行われたアイリッシュ・オークス Irish Oaks (GⅠ、3歳牝、1マイル4ハロン)から先に取り上げましょう。

馬場状態は good to firm 、先に枠順を紹介したように10頭が参戦し、エプサム・オークスとの二冠が掛かるイネイブル Enable が2対5の圧倒的1番人気。落馬負傷から前日復帰したばかりのランフランコ・デットーリも、“本当はもう1週間休みたかったけれど、復帰を速めたのはイネイブルに乗りたかったから。彼女は私にとっては大好物のニンジンなんだ”と冗談も飛び出すほど。
同じゴスデン厩舎のコロネット Coronet が6対1の2番人気で続き、流石のオブライエン厩舎もレイン・ゴッデス Rain Goddess は7対1の3番人気に甘んじていました。枠順紹介の際にムーアがどの馬に乗るか、と書きましたが、ムーアはこの日ニューマーケットで騎乗。ジュライ・カップと愛オークスには1時間20分の間隔がありますが、検量などもあり、今間にニューマーケットとカラーを移動するのは流石に無理。レイン・ゴッデスにはヘファーナンが騎乗しました。

レースは8番人気(33対1)ベンガラ Bengala が逃げ、イネイブルは2番手追走。しかし直線、やや早めにイネイブルが仕掛けると、後は行けば行くほど後続との差は広がる一方。結局4番手で直線に向いたレイン・ゴッデスが単騎大本命を追いかけましたが、ゴールでは5馬身半差の大楽勝で圧巻の2冠達成です。中団の最後尾にいた6番人気(20対1)のエジーラ Eziyra が2馬身差の3着に入り、コロネットは4着まで。
管理するジョン・ゴスデン師は、2012年のグレート・ヘヴンズ Great Heavens に続いて2度目の愛オークス。オーナーのハーリッド・アブダッラー氏にとっては3勝目で、デットーリは4勝目の愛オークスとなりました。デットーリがアイルランドのクラシックを制したのは9度目。
そのデットーリ、“今日はセカンド・ギアで勝った”とか、“痛めていた肩を使わずに勝てたよ”とも。相変わらずのフライング・ディマウントで復帰後初勝利の喜びを爆発させていました。

二つのオークスを共に大差で楽勝したイネイブル、牡牝を問わず1マイル半の距離では文句なく最強の3歳馬でしょう。キングジョージ、凱旋門賞共に5対1のオッズが出されましたが、キングジョージはレース間隔が詰まっており、ヨークシャー・オークスから凱旋門というローテーションが現実的。
凱旋門賞には追加登録料を支払う必要がありますが、個人的には今年の凱旋門賞はイネイブルで決まり、と思いたくもなります。今年の凱旋門は日本馬にチャンスという意見もありますが、イネイブルを破るのは相当に難しいのではないでしょうか。

続いては、カラーで行われた最初のG戦アングルジー・ステークス Anglesey S (GⅢ、2歳、6ハロン63ヤード)。1頭が取り消しての5頭立て。2連勝で臨んだロイヤル・アスコットのコヴェントリー・ステークス(GⅡ)では不利も手伝って4着に終わったブラザー・ベアー Brother Bear が9対10の1番人気。
そのブラザー・ベアーと、2番人気(100対30)のテオバルド Theobald とが逃げ争いを演じましたが、これを追走した4番人気(7対1)のアクトレス Actress が2ハロンから先頭争いに加わり、最後はテオバルドを1馬身4分の3差抑える逆転劇。人気のブラザー・ベアーは半馬身差の3着でした。

勝ったアクトレスは出走馬中只1頭の牝馬で、エイダン・オブライエン厩舎、シーミー・ヘファーナン騎乗。5月14日、2戦目にカラーで初勝利を挙げ、ロイヤル・アスコットのアルバニー・ステークス(GⅢ)は6着に終わっていました。前走ティッペラリーのリステッド戦でも2着に敗れ、ここでは1枚下と評価されていた1頭です。
オブライエン厩舎はこのレース、11勝目となりました。

最後にサファイア・ステークス Sapphire S (GⅡ、3歳上、5ハロン)。ここも6頭と少なく、去年のアベイ・ド・ロンシャン賞(GⅠ)勝馬で前走キングズ・スタンド・ステークスでも怪物レディー・オーレリア Lady Aurelia の3着だったGⅠ馬マーシャ Marsha が1対2の圧倒的1番人気。
4番人気(10対1)のカスピアン・プリンス Caspian Prince が逃げ、2番手に付けたマーシャが残り1ハロンで先頭に立って勝負ありと見えましたが、逃げたカスピアン・プリンスが再び盛り返し、最後は短頭差で大本命を競り落とすサプライズとなりました。後方から伸びた2番人気(5対1)のアードフーメイ Ardhoomey が2馬身半差の3着。

トニー・コイル厩舎、デクラン・マクドナー騎乗のカスピアン・プリンスは、これがG戦初勝利となる8歳せん馬で、これで通算成績は何と73戦17勝。これまではハンデ戦か、せいぜいリステッド戦で走っていた馬ですから、競馬はやって見なければ判りません。

 

 

 

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