ディープ産駒、来年のダービー候補に

アイルランドの平場シーズンもそろそろ終幕が迫ってきましたが、9月24日の日曜日にはナース競馬場で4鞍のG戦が行われました。最後の集中開催でもあります。本来この開催はカラー競馬場で行われますが、カラーは去年に続いて今年も改修工事が始まったため、ナースに移しての施行となりました。
馬場は soft 、周回コースは所により soft to heavy と重い状態が続いています。

最初のパーク・ステークス Park S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)は9頭立て。未勝利馬ながら前走デビュタント・ステークス(GⅡ)で3着したメアリー・チューダー Mary Tudor が15対8の1番人気に支持されていました。
3頭を出走させてきたオブライエン厩舎の3番人気(6対1)バレー・シューズ Ballet Shoes が逃げ、メアリー・チューダーは中団待機。これを3番手で追っていた6番人気(10対1)のエルシー Ellthea が残り1ハロンで捉えて先頭に立つと、2番手を進んだオブライエン厩舎の2番人気(3対1)のシッズリング Sizzling に2馬身4分の3差を付ける快勝。逃げたバレー・シューズが半馬身差で3着に粘り、メアリー・チューダーは追い込んだものの4着に終わっています。

勝ったエルシーは、英国のカール・バーク厩舎、コーム・オダナヒュー騎乗。当初は前日のファース・オブ・クライド・ステークスを予定していましたが、エア競馬場がキャンセルとなったためアイルランド遠征に踏み切ったもの。
2戦目にカーライルの5ハロンで初勝利を挙げ、前走5戦目にもドンカスターで6.5ハロンのナーザリー戦を圧勝したのに続く3勝目でG戦初制覇となりました。夏の間は発情(フケ)に悩まされ続け、ドーヴィルに遠征してカルヴァドス賞(GⅢ)に出走しては見たものの11頭立ての9着に終わっていました。

ナースのG戦2鞍目は、今年からGⅢ戦に格上げされたラフブラウン・ステークス Loughbrown S (GⅢ、3歳上、2マイル)。そもそも2013年にリステッド戦として創設された一戦で、秋のアスコットでチャンピオン・ロングディスタンス・カップが出来たことにより、そのトライアルとして意味を持たせたのではないかと思われます。
G戦第1回としては僅か4頭立てと期待を裏切りましたが、前々走の愛セントレジャー・トライアル(GⅢ)にも出走した(5着でしたが)レンネーティ Renneti が4対5の1番人気。

3番人気(6対1)のスターズ・オーヴァー・ザ・シー Stars Over The Sea が逃げ、レンネーティはこれを2番手でマーク。人気通り逃げ馬を捉えた大本命、最後はスターズ・オーヴァー・ザ・シーに5馬身の大差を付けて期待に応えました。最後方から追い込んだ2番人気(2対1)のワイルド・アイリッシュ・ローズ Wild Irish Rose が3馬身差の3着。
ウイリアム・マリンズ厩舎、パット・スマーレン騎乗のレンネーティは、これが平場のG戦初勝利となる8歳せん馬。ということは障害レースの常連でもあり、そちらの分野ではGⅡとGⅢに夫々一つづつ優勝しています。当然ながらアスコットのチャンピオン・ロングディスタンス・カップを目指すようで、オッズは16対1に上がりました。その後は、もちろん障害シーズンでの活躍が期待されます。

続いて短距離のルネサンス・ステークス Renaissance S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。これもアスコットのチャンピオン・スプリントへのトライアルとなる一戦で、1頭が取り消しての10頭立て。今期は1戦しか出走できなかった去年の最速スプリンター、クワイエット・リフレクション Quiet Reflection が復活をかけて5対2の1番人気。
オブライエン/ムーアの4番人気(13対2)アルファベット Alphabet が勝つ積りの逃げ作戦を打ちましたが、中団に控えた本命馬、前が開かずに難儀する場面もありましたが、一旦間隙が出来ると直ぐに抜け出し、残り150ヤードでアルファベットを捉えると、同馬に2馬身4分の3の決定的な差を付けて堂々人気に応えました。後方9番手から追い込んだ6番人気(14対1)のアードフーメイ Ardhoomey が同じく2馬身4分の3差で3着。

クワイエット・リフレクションは、言うまでもなく去年のコモンウェルス・カップとヘイドック・スプリント・カップを制したGⅠ戦2勝馬。パーク・ステークスのエルシーと同じ英国カール・バーク師の管理馬で、マーチン・ハーレイが騎乗していました。
3歳の去年もアスコット・チャンピオン・スプリントに出走しましたが7着と敗れ、今期は5月にヘイドックのテンプル・ステークス(GⅡ)から始動したものの12頭立ての10着と大敗。立て直すのに時間が掛かり、結局この日が5月以来の今期2戦目でした。
目標はあくまでもアスコット、オッズはレース前の16対1から8対1に急上昇し、今年の3歳チャンピオン・スプリンターを目指すハリー・エンジェル Harry Angel (目下6対4の本命)との対決が楽しみになってきました。本来重馬場を得意とする同馬、馬場が渋れば逆転も可能、とバーク師も自信を深めたようです。

最後は、2歳馬にとってクラシックへの登竜門となるベレスフォード・ステークス Beresford S (GⅡ、2歳、1マイル)。5頭と出走頭数は少なくなりましたが、そのうち3頭はエイダン・オブライエン厩舎の馬。このレース最近21年間で16勝とほぼ独占状態の厩舎の中から主戦ライアン・ムーアが選んだ1戦1勝のサクソン・ウォリアー Saxon Warrior が5対6の断然1番人気に支持されていました。
本命と同厩、3番人気(4対1)のキュー・ガーデンズ Kew Gardens が強いペースを演出し、3番手に付けたサクソン・ウォリアーが残り1ハロンで先頭に立つと、2着争いに2馬身半の差を付けて余裕の勝利。その2着争いも2番手を進んだオブライエン軍団の2番人気(3対1)デラノ・ルーズヴェルト Delano Roosevelt が4番人気(12対1)のウォーム・ザ・ヴォイス Warm The Voice に頭差で先着していました。もちろんオブライエン師のワン・ツー・フィニッシュ。

これでオブライエン師はベレスフォード17勝目で、且つ7連覇。去年の勝馬カプリ Capri は今期、愛ダービーとセントレジャーの二冠を達成しました。8月27日にカラーでデビュー勝ち(ドナック・オブライエン騎乗)したサクソン・ウォリアーは、これで2戦2勝。我々日本のファンにとっての朗報は、何と言ってもディープインパクト産駒ということで、来年の英ダービーのオッズは10対1が出され、現時点での2番人気に上がっています。尤もブックメーカーによっては6対1の本命を付ける会社もあって、ディープインパクト産駒のエプサム制覇が現実味を帯びてきました。
ディープ産駒で凱旋門賞、というのが日本競馬界の夢ですが、サクソン・ウォリアーがダービーを制覇することになれば、日本の夢はエイダン・オブライエンとライアン・ムーアによって叶えられることになるかも。これは飛んでもないことになってきました。母はモイグレア・スタッド・ステークス(GⅠ)勝馬で英1000ギニー3着のメイビー Maybe 、父系も牝系も間違いなくクラシック制覇を目指せる良血馬です。
当初は重馬場に懸念があった同馬ですが、それも問題なくクリアー。今期はこれで終戦とするのか、もう一戦使うのかは未定とのこと。いずれにしても「Saxon Warrior」という馬名を忘れちゃいけませんよ、皆さん。

 

 

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