GⅠ戦6鞍、BCトライアル7鞍

10月7日、ブリーダーズ・カップを丁度1か月後に控えたアメリカ競馬は、BC各部門のトライアルを含めて3つの競馬場で合計9鞍のG戦。先週以上の忙しさで、今週も簡略なレポートになってしまいます。

最初にベルモント・パーク競馬場から3鞍のG戦。うち2鞍がGⅠ戦でもあり、勝馬にBCへの優先出走権が与えられるトライアル・レースでもあります。最初のシャンペン・ステークス Champagne S (GⅠ、2歳、8ハロン)は、もちろんBCジュヴェナイルのトライアルで、fast の馬場に12頭が出走し、デビュー戦と前走一般ステークス(ファニー・サイド・ステークス)を2連勝中の無敗馬アヴィヌー・モルケイヌー Aveenu Malcainu が3対1の1番人気。
その本命馬が逃げましたが、5番手を進んだ2番人気(4対1)のグッド・マジック Good Magic が第4コーナーで前3頭を外から捉えて先頭で直線。更に外から追い込んだのが7番手に控えていた7番人気(11対1)のフィレンツェ・ファイアー Firenze Fire で、グッド・マジックに半馬身差のサプライズ。4番手を進んだ5番人気(7対1)のエンタイスド Enticed が3馬身差の3着に入り、バテた本命アヴィヌー・モルケイヌーは7着と初黒星を喫しました。
ジェイソン・サーヴィス厩舎、イラッド・オルティス騎乗のフィレンツェ・ファイアーは、デビューから2連勝でサンフォード・ステークス(GⅢ)を制しましたが、前走ホープフル・ステークス(GⅠ)は4着で株を落としていました。この快勝でBCジュヴェナイルの有力候補でしょう。

次のヒル・プリンス・ステークス Hill Prince S (芝GⅢ、3歳、9ハロン)は3歳馬限定戦とあって、BCの対象ではありません。firm の芝コースに9頭が出走し、4連勝でナショナル・ミュージアム(芝GⅢ)を制したブリックス・アンド・モーター Bricks And Mortar が3対2の1番人気。前走サラナック・ステークス(芝GⅢ)は3着で連勝がストップしていました。
最低人気(31対1)の伏兵セクレタリー・アット・ウォー Secretary At War が逃げて直線も良く粘りましたが、前半3番手に付けていた3番人気(4対1)のヨシダ Yoshida が直線、前が詰まりながらも内から馬群を割って突き抜け、4番手から外を回って追い込む5番人気(14対1)のルカラン Lucullan を首差抑えて優勝。5番手から伸びたブリックス・アンド・モーターは半馬身差の3着惜敗でした。
ウイリアム・モット厩舎、マヌエル・フランコ騎乗のヨシダは、このブログでも度々紹介しているようにハーツクライ産駒の日本産馬。G戦はこれが初勝利ですが、ベルモント・ダービー(芝GⅠ)で5着、そのあとナショナル・ミュージアムとサラナックが共に2着で、ブリックス・アンド・モーターとは3戦続けて対戦し、これで3戦で2度先着という結果になりました。

ベルモントの最後は、アメリカ伝統の長距離戦だったジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ Jockey Club Gold Cup (GⅠ、3歳上、10ハロン)。現在は距離もかなり短縮され、BCクラシックのトライアルの一つとなっています。7頭が出走し、トラヴァース勝馬で今期もサバーバン・ハンデ(GⅡ)を制しているキーン・アイス Keen Ice が6対5の1番人気。
1番枠スタートから2番人気(7対2)のディヴァーシファイ Diversify が先手を取って逃げ、控えたキーン・アイスは第3コーナーでは一旦最後方にまで下がる展開。そこから直線で猛然と追い上げたキーン・アイスでしたが、最後は1馬身届かず、ディヴァーシファイの逃げ切りを許してしまいました。2番手を進んでいたパーヴェル Pavel が4分の3馬身差で3着。(ブラッドホースの結果表では3馬身4分の1差となっていますが、間違いでしょう)
リチャード・ヴァイオレット厩舎、シャンペンに続いてイラッド・オルティス騎乗のディヴァーシファイは、これがG戦初挑戦にして初勝利となるニューヨーク産の4歳せん馬で、前走サラトガの一般ステークス(エヴァン・シップマン・ステークス)を含めて3連勝です。初のステップ・アップでGⅠ馬を破る快挙で、明らかに上がり馬の1頭でしょう。

金曜日に秋開催が始まったばかりのキーンランド競馬場、二日目はいきなりG戦5連発。その内4鞍がBCトライアルで3鞍はGⅠ戦という豪華版で、最初はどれにも当てはまらないセレクト・ステークス Select S (芝GⅡ、3歳上、5.5ハロン)。とは言え今年、GⅢからGⅡに格上げとなった一戦で、firm の馬場に9頭が参戦し前走ケンタッキー・ダウンズ・ターフ・スプリント(芝GⅢ)で2着だったコメンド Commend が5対2の1番人気。
5番人気(15対1)のレイテント・リヴェンジ Latent Revenge が後続に5馬身差を付ける大逃げを打って直線半ばまで粘っていましたが急速に失速、2番手でマークしていた6番人気(26対1)のバッケーロ Bucchero が一気に外から先頭に躍り出ると、4番手を進んだ3番人気(5対2)のホギー Hogy に1馬身4分の3差を付けて優勝する大波乱となりました。3番手に付けていた4番人気(3対1)のモンゴリアン・サタデイ Mongolian Saturday が半馬身差で3着に入り、6番手に控えたコメンドは伸びず、6着惨敗。
G戦初勝利のティム・グライショウ厩舎、ペルー人ジョッキーでこれまたG戦初勝利となるフェルナンド・ド・ラ・クルーズ騎乗のバッケーロは、これがG戦初勝利となる5歳牡馬。これが通算で9勝目となるタフな馬ですが、これまでG戦は去年のこのレースも含めて2度走って10着と11着(去年のセレクト)でしたから驚きです。

続くサラブレッド・クラブ・オブ・アメリカ・ステークス Thoroughbred Club of America S (GⅡ、3歳上牝、6ハロン)はGⅡの短距離戦ながら、勝馬にはBCフィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権が与えられるレース。fast の馬場に1頭が取り消して7頭立てとなり、既にGⅢ戦を2勝している4歳馬フィンリーズラッキーチャーム Finley’sluckycharm が4対5の断然1番人気。
6番人気(38対1)トゥルー・ロマンス True Romance の逃げを4番手で追走した大本命、直線で外から粘る逃げ馬を捉えると、2番手マークから内ラチ沿いに伸びる5番人気(11対1)のシャロン Chalon に1馬身4分の3差を付けて人気に応えました。逃げたトゥルー・ロマンスが粘って4分の3馬身差の3着。
ブレット・カルホウン厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗のフィンリーズラッキーチャームは、5月にウイニング・カラーズ・ステークス、6月にもシカゴ・ハンデと何れもチャーチル・ダウンズのGⅢ戦に勝ち、前走サラトガのオノラブル・ミス・ステークス(GⅡ)は2着でした。これがGⅡ戦での初勝利、BCでGⅠ戦初制覇を目指します。

キーンランドGⅠ戦3連発の第一弾は、BCフィリー・アンド・メア・ターフの前哨戦となるファースト・レディー・ステークス First Lady S (芝GⅠ、3歳上牝、8ハロン)。7頭が出走し、割れた1番人気は2対1で並んだ2頭の内、僅かの差で3走前にチャーチル・ダウンズ・ターフ・マイル(芝GⅡ)に勝っているロカ・ロホ Roca Rojo 。
4番人気(5対1)のホークスモア Hawksmoor が後続に3馬身差を付けて逃げましたが、2番手でマークしていた6番人気(16対1)の伏兵ジペッサ Zipessa が直線で外からこれを捉え、そのまま1馬身半差を付けて差し切る番狂わせとなりました。4番手を進んだ人気のロカ・ロホが追い上げたものの、首差届かず3着まで。
マイケル・スティドハム厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のジペッサは、これが去年7月にパークスでジェームス・ペニー・メモリアル(芝GⅢ)に勝って以来の勝ち星で、8連敗に終止符を打ち、GⅠ戦は初勝利。去年のBCフィリー・アンド・メア・ターフでは5着しており、前走ケンタッキー・ダウンズのレディーズ・ターフ・ステークス(芝GⅢ)で2着し、復調の兆しが見えていました。

そしてブリーダーズ・フューチュリティー Breeders’ Futurity (GⅠ、2歳、8.5ハロン)。もちろんBCジュヴェナイルのトライアルで、2頭が取り消しての11頭立て。前走ホープフル・ステークス(GⅠ)2着の実績が買われてフリー・ドロップ・ビリー Free Drop Billy が3対2の1番人気に支持されていましたが、波乱のレースとなりました。
大外枠から飛び出した10番人気(83対1)のレディー・プロスペクター Ready Prospector が飛ばし、後続に3馬身差を付けての逃げ。2番手に付けていた4番人気(5対1)のテン・シティー Ten City が第3コーナーでスパートし、バテたレディー・プスペクターを交わして一気に先頭に立ちましたが、突然故障を発症してズルズル後退して競走を中止してしまいます(致命的な骨折により安楽死処分に)。前の流れを5番手で見ていたフリー・ドロップ・ビリー、第4コーナーで外から先頭を奪うと、3番手追走の8番人気(47対1)ブラヴァーゾ Bravazo に4馬身の大差を付けて期待に応えました。9番手から追い上げた6番人気(17対1)のローン・セイラー Lone Sailor が2馬身半差で3着。
これがこのレース4勝目となるデール・ロマンス厩舎、ロビー・アルバラード騎乗のフリー・ドロップ・ビリーは、6月15日にチャーチル・ダウンズでデビュー勝ち。そのあとサンフォード・ステークス(GⅢ、勝馬フィレンツェ・ファイアーはこの日、シャンペン・ステークスを制した)、ホープフルと2戦続けて2着し、これが2勝目でのG戦初勝利。エクリプス・ステークス(GⅠ)勝馬ホークビル Hawkbill の半弟に当たる血統で、長距離向き。当然ながらBCを狙う1頭ですが、このレースはケンタッキー・ダービーのポイント・レースでもあり、来年のダービー候補でもあります。

キーンランドの最後はシャドウェル・ターフ・マイル Shadwell Turf Mile (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)。これはBCマイルの前哨戦で、ヨーロッパからの遠征馬も含めて14頭の多頭数。前走バーナード・バルーク・ステークス(芝GⅡ)の勝馬で、その前は2戦突けてGⅠ戦で入着しているハート・トゥー・ハート Heart to Heart が2対1の1番人気。
そのハート・トゥー・ハートが逃げてゴール寸前までリードを守っていましたが、7番手に控えていた6番人気(9対1)のヨーロッパ遠征馬のスードア Suedois (アメリカではスエイドアと発音していましたが)が鞍上の如何にもヨーロッパ風アクションで大外から激しく追い込み、本命馬を半馬身抑えての差し切り勝ち。5番手を進んだ4番人気(6対1)のバラー・ロックス Ballagh Rocks が頭差で3着に食い込みました。
デヴィッド・オメーラ厩舎、ダニエル・タドホープ騎乗のスードアは、前走レバーズタウンでブーメラン・ステークス(GⅡ)を制した6歳せん馬で、去年のジュライ・カップでは2着したスプリンターでもあります。短距離から1マイルまでを射程に入れている古豪で、もちろん優先出走権を得たBCマイルに向かうものと思われます。

土曜日の最後は、サンタ・アニタ競馬場のサンタ・アニタ・スプリント・チャンピオンシップ Santa Anita Sprint Championship (GⅠ、3歳上、6ハロン)。もちろんBCスプリントのトライアルで、出走馬は6頭立てと少なく、前走ビング・クロスビー(GⅠ)で2着したロイ・エイチ Roy H が4対5の1番人気。
2番人気(5対2)アメリカン・アンセム American Anthem の逃げを3番手でマークしたロイ・エイチ、第4コーナーでは前の2頭に外から並び掛けると、2番手追走から3頭の真ん中を通る最低人気(41対1)のミスター・ヒンクス Mr. Hinx を外から1馬身捉えて人気に応えています。内を通って粘ったアメリカン・アンセムが2馬身4分の1差の3着。
ピーター・ミラー厩舎、ケント・デサーモ騎乗のロイ・エイチは、前々走3連勝でトゥルー・ノース・ステークス(GⅡ)に勝ったのに続き、G戦は2勝目でもちろんGⅠ戦は初となる5歳せん馬。BCでGⅠ戦連勝を目指します。

 

 

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