オブライエン師、ディープ産駒で世界記録更新

10月28日の土曜日は、事実上イギリス平場シーズンのフィナーレ。最後のG戦3鞍がニューバリーとドンカスターで行われましたが、ここは何と言ってもドンカスター競馬場のレーシング・ポスト・トロフィー Racing Post Trophy (GⅠ、2歳牡牝、1マイル)からレポートしていきましょう。
シーズン最後のGⅠ戦でもあり、good to soft 、所により good の馬場に12頭が出走し、1シーズンでGⅠ戦最多勝記録更新が掛かるエイダン・オブライエン厩舎は4頭出し。中でもライアン・ムーアが選んだエース格で2選2勝のサクソン・ウォリアー Saxon Warrior が13対8の1番人気に支持されていました。

オブライエン厩舎のペースメーカーで9番人気(66対1)のコート・オブ・アームス Court Of Arms が逃げ、先行したサクソン・ウォリアーは残り2ハロンで早くも先頭。しかし後方で待機していたゴスデン厩舎の3番人気(8対1)ロアリング・ライオン Roaring Lion が本命馬に襲い掛かり、残り1ハロンでこれを捉えると1馬身差を付けて逆転、と思われたその時、一旦2番手に交わされたサクソン・ウォリアーがムーアののムチに応えて差し返し、最後はロアリング・ライオンを首差捻じ伏せての劇的な勝利を飾りました。中団から伸びたオブライエン厩舎の5番人気(10対1)ザ・ペンタゴン The Pentagon が2馬身半差の3着。
こうしてオブライエン師は1シーズンのGⅠ戦勝利数を「26」に伸ばし、2003年にアメリカのロバート・フランケル師が達成した25を抜いて世界記録を更新したことになります。

日本の競馬ファンにとっての朗報は、この大記録達成の立役者となったサクソン・ウォリアーがディープインパクト産駒であることでしょう。詳しくは前走ナースのベレスフォード・ステークス(GⅡ)優勝レポート(9月25日の記事)で紹介しましたが、これで3選3勝。無傷で来年のクラシックに向かうことになります。2000ギニーのオッズは9対1、ダービーは5対1となり、目下のダービー1番人気。今ブックメーカーを通して予約すれば、単勝6倍もつく勘定ですね。法的に許容されるなら買っておきたいくらい。ダービーのオッズの方が低いのは、もちろんディープインパクトにガリレオ牝馬という配合と、レース振りがダービー向きなためで、仮に2000ギニーに出て勝つようなら、2冠馬と言う夢も膨らんできます。
負けたと思った地点からの巻き返し、オブライエンの26勝の中でも最もスリリングな1勝だったと言えそうです。

ドンカスターは以上にして、今年最後のG戦としてニューバリー競馬場の2鞍を取り上げましょう。馬場は soft 。
最初のセント・サイモン・ステークス St Simon S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)は11頭立て。前走ニューマーケットのリステッド戦に勝ち、今期はコロネーション・カップとプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスで2着している実力馬フロンティアーズマン Frontiersman が9対2の1番人気。

そのフロンティアーズマンがスタートから先手を取って逃げましたが、先行していた3番人気(6対1)のベスト・ソリューション Best Solution が10ハロン地点で2番手に上がると、残り1ハロンで本命馬を捉え、中団から伸びる2番人気(5対1)のラヒーン・ハウス Raheen House に1馬身4分の3差を付けて優勝。終始2~3番手に付けていた7番人気(11対1)のデーンヒル・コディアック Danehill Kodiac が1馬身半差の3着に入り、フロンティアーズマンはバテて6着敗退に終わりました。
勝ったベスト・ソリューションは本命馬と同じゴドルフィンが所有する3歳馬で、サイード・ビン・スロール厩舎、パット・コスグレイヴ騎乗。G戦は2歳時のオータム・ステークス(GⅢ)以来2勝目で、勝鞍も今春のリングフィールド・ダービー・トライアル(リステッド戦)以来となります。ダービーは8着、キング・エドワード7世ステークスも着外に終わりましたが、その後はドイツに遠征してGⅠ戦で2着・5着していました。あくまでも重馬場が条件となる馬で、冬はドバイに向かいますが、馬場が適した場合のみ出走するとのことでした。

今年最後の英国G戦レポートは、ホリス・ヒル・ステークス Horris Hill S (GⅢ、2歳牡せん、7ハロン)。1頭が取り消して6頭立て、前走フランスに遠征してジャン=リュック・ラガルデール賞(GⅠ)で5着したミシカル・マジック Mythical Magic が2対1の1番人気。
本命ミシカル・マジックが逃げ切りを図りましたが、先行した3番人気(4対1)のネボ Nebo が残り100ヤードで先頭に立ち、後方2番手から追い込む5番人気(15対2)のタングルド Tangled に半馬身差で優勝。ミシカル・マジックは4分の3馬身差で3着でした。

チャールズ・ヒルズ厩舎、ランフランコ・デットーリ騎乗のネボは、ニューバリーのデビュー戦(6ハロン)に買って以来の2勝目、G戦は初制覇ですが、その間サパラティヴ・ステークス2着、リッチモンド・ステークスも2着、ミル・リーフ・ステークスは3着で、前走クリテリウム・ド・メゾン=ラフィットも2着と、4つのGⅡ戦で入着してきた堅実な成績を残してきました。
今期はこれで終戦、来年はここニューバリーのグリーナム・ステークス(GⅢ)から2000ギニーを目指すローテーションになるとのことでした。

 

 

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