ファウンテン・オブ・ユースの番狂わせ

冬競馬も終わって、ケンタッキー・ダービーまであと2か月。3月第1週のアメリカ競馬はフロリダとカリフォルニア、特にガルフストリーム・パーク競馬場は残り1か月のG戦祭りとなっています。3月31日のフロリダ・ダービー・デイが実質上の千秋楽となる同競馬場、3月3日はグランド・フィナーレへのトライアル・デイでもありました。この日は全部で8鞍ものG戦が組まれていましたから、駆け足で結果を紹介していきましょう

最初は第4レースのザ・ヴェリー・ワン・ステークス The Very One S (芝GⅢ、4歳上牝、9.5ハロン)。firm の馬場に7頭が参戦し、G戦は未勝利ながら前走ラ・プレヴォヤンテ・ハンデ(芝GⅡ)2着のデアリング・ダッチェス Daring Duchess が6対5の1番人気。
そのデアリング・ダッチェスがゆったりしたスタートから逃げて順調にゴールを目指しましたが、前半3番手から第3コーナーで一旦は5番手まで下げた2番人気(7対2)のホーリー・ヘリーナ Holy Helena が内ラチ沿いに足を伸ばし、直線半ばで外から本命馬を捉えると、デアリング・ダッチェスに1馬身4分の3差を付ける快勝です。2番手を進んだ6番人気(9対1)のパリノーディー Palinodie が1馬身半差の3着。
ジェームス・ジャーキンス厩舎、イラッド・オルティス騎乗のホーリー・ヘリーナは、これがG戦初勝利となる4歳馬。去年5月にベルモントのダートコースで初勝利を挙げ、カナダのオールウェザー・コースでは牡馬を相手にクイーンズ・プレートに優勝。前走2月には同じガルフストリームの芝コースでもアローワンス戦に勝っており、3つの違ったタイプの馬場で能力を如何なく発揮しています。

一つ置いて第6レースのパーム・ビーチ・ステークス Palm Beach S (芝GⅢ、3歳、8.5ハロン)。これも芝コースでの7頭立て。前走このレースの前哨戦となるダニア・ビーチ・ステークス(芝GⅢ)を制したスピード・フランコ Speed Franco が8対5の1番人気。
このレースも1番枠から出た人気のスピード・フランコが直ぐに先手を取っての逃げ。終始後続に2馬身差を付けて快調に飛ばしましたが、これを2番手で追走していた2番人気(5対2)のマラード Maraud が徐々に差を詰め、第4コーナーで並ぶと直線の叩き合いを制し、ゴール手前でスピード・フランコを首差捉えての優勝。2レース続けて同じような展開の結末となりました。3番手を進んだ4番人気(9対2)のセラピスト Therapist が2馬身4分の1差で3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のマラードは、前走ガルフストリームのアローワンス戦に続く2連勝で、G戦は初勝利。去年夏のサラトガで新馬勝ちし、挑戦したピルグリム・ステークス(芝GⅢ)では3着していました。

続く第7レースのヒアカムズザブライド・ステークス Herecomesthebride S (芝GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。芝コースのG戦が続きますが、ここは8頭立てで、2月に前哨戦のスイーテスト・チャント・ステークス(芝GⅢ)に勝ったザウェイアイアム Thewayiam が3対2の1番人気。
5番人気(12対1)のマイ・フェイヴァリット・ギフト My Favourite Gift が逃げてそのまま直線に向きましたが、後方2番手のインコースで待機していた人気のザウェイアイアムが直線では馬1頭分がポッカリと空いた内ラチ沿いギリギリを衝いて一気に抜け出すと、2番手を進んだ2番人気(5対2)のアマテューム Amertume に1馬身4分の3差を付けて見事人気に応えました。4番手から追い込んだ3番人気(4対1)のブラッタータ Brattata が頭差の3着。
グレアム・モーション厩舎、ホセ・オルティス騎乗のザウェイアイアムは、これでG戦2連勝。3戦1勝だったフランスから移籍してきた1頭で、芝コースの3歳牝馬チャンピオンを目指します。

第8レースのダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale S (GⅡ、3歳牝、8ハロン)が、この日最初のメインコースG戦。fast の馬場に8頭が出走し、目下2連勝中の新星フライ・ソー・ハイ Fly So High が7対5で1番人気。
先ず先頭に立ったのは2番人気(5対2)のテイク・チャージ・パウラ Take Charge Paula でしたが、3番手にいた4番人気(7対1)アルター・ムーン Alter Moon がインコースからスルスルと先頭に躍り出ると、これを追って5番人気(9対1)のヘヴンハズマイニッキ Heavenhasmynikki が連れて2番手に上がり、第4コーナー手前では外から前を交わして先頭。これを終始外目を通って追走していた人気のフライ・ソー・ハイ、直線でヘヴンハズマイニッキを外から捉えると、一旦4番手まで控えていたテイク・チャージ・パウラに3馬身の大差を付けて期待に応えました。4分の3馬身差でヘヴンハズマイニッキが3着。
クロード・マゴーヒー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のフライ・ソー・ハイは、去年10月ベルモントのデビュー戦こそ3着でしたが、次の11月アケダクトで初勝利。今年初戦1月のガルフストリームでアローワンス戦にも勝って、これで3連勝でG戦も初勝利となります。クラシックを狙う1頭。

また1レース置いての第10レースが、カナディアン・ターフ・ステークス Canadian Turf S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。ここも8頭が参戦し、G戦は未勝利ながら前走サンシャイン・ミリオンズ・ターフ・ステークス(一般ステークス)を勝ち上がったガレオン・マスト Galleon Mast が5対2で1番人気。
レースは6番人気(6対1)のコンクェスト・サンドマン Conquest Sandman が逃げ、これにブラインド・アンビション Blind Ambition が並び掛け、2番人気(4対1)シャキマット Shkhimat を加えた3頭が後続を7馬身引き離して飛ばす縦長の展開。前半は6番手で待機していた4番人気(5対1)のホギー Hogy が直線で外から纏めて前を交わすと、後方2番手から追い上げる本命ガレオン・マストに3馬身4分の3差を付ける圧勝での逆転劇となりました。4番手を進んだ5番人気(5対1)のマーチ March が1馬身4分の1差で3着。
マイケル・メイカー厩舎、イラッド・オルティス騎乗のホギーは、衰えを知らぬ9歳せん馬で、G戦はこれが3勝目。2013年にハンシン・カップ(GⅢ)に勝っており、去年は8歳にしてケンタッキー・ダウンズ・ターフ・スプリント・ステークス(芝GⅢ)にも勝っていました。短距離からマイルまで、どんな距離でもこなす大ヴェテランです。

また一つ飛んで第12レースが、短距離のガルフストリーム・パーク・スプリント Gulfstream Park Sprint (GⅢ、4歳上、6.5ハロン)。去年は2月25日に行われていましたが、今年は翌週のフェスティヴァルでの開催。1頭が取り消して10頭立てとなり、3歳時スウェイル・ステークス(GⅡ)勝馬で、前走年末のマリブー・ステークス(GⅠ)で3着したフェイヴァラブル・アウトカム Favorable Outcome がイーヴンの1番人気。
レースは大外枠発走の6番人気(15対1)が飛び出しての逃げ、これを9番人気(34対1)のアンブライドルド・アウトロー Unbridled Outlaw が追走。前2頭を3番手で見ていた3番人気(5対1)のクラシック・ロック Classic Rock が第4コーナーで前2頭の間を割って先頭に立つと、最後方から追い込こむ最低人気(95対1)のスイートオンザレイディーズ Sweetontheladies に3馬身差を付ける圧勝劇となりました。5番手を進んだ5番人気(12対1)のエイト・タウン Eight Town が首差の3着に食い込み、人気のフェイヴァラブル・アウトカムは6着敗退。
カスリーン・リトヴォ厩舎、ルイス・サエズ騎乗のクラシック・ロックは、これがG戦初勝利となる4歳牡馬。前走12月のガルフストリーム・パークでのアローワンス戦から2連勝で、前々走の7月キャリー・バック・ステークス(GⅢ)では5着でした。

メインの一つ前、第13レースのマック・ダイアルミダ・ステークス Mac Diarmida S (芝GⅡ、4歳上、11ハロン)は12頭立て。去年のBCターフ4着以来の休み明けとなるサドラーズ・ジョイ Sadler’s Joy が9対5で1番人気。
レースは長距離戦とあって8番人気(12対1)のワン・ゴー・オール・ゴー One Go All Go が淀みない流れで逃げ、人気のサドラーズ・ジョイは慌てず騒がず最後方から。逃げ馬がそのまま粘って直線に入りましたが、大外を通ったサドラーズ・ジョイが一気の末脚を爆発させ、ゴール直前でワン・ゴー・オール・ゴーを4分の3馬身差で制する鮮やかな追い込み勝ちでした。やはり後方2番手から伸びた7番人気(11対1)のネッシー Nessy が同じく4分の3馬身差で3着。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のサドラーズ・ジョイは、これがG戦3勝目となる5歳馬で、去年の4月のパン・アメリカン・ステークス(芝GⅡ)がG戦初勝利。秋にはソード・ダンサー・ステークス(GⅠ)を制してGⅠ馬となり、続くヒルシュ・ターフ・クラシック(芝GⅠ)4着からBCターフも4着。目標はもちろんBC制覇でしょう。

そして愈々、第14レースがこの日のメインとなるファウンテン・オブ・ユース・ステークス Fountain of Youth S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。もちろん今月31日に予定されているフロリダ・ダービーのトライアルで、ここからケンタッキーの本番と言うのがクラシック定番のローテーションの一つにもなります。1頭の取り消しがあって9頭立て、前年のBCジュヴェナイルの覇者グッド・マジック Good Magic がクラシックに向けて始動するとあって3対5の断然1番人気。
大外枠を引いた5番人気(18対1)のプロミシズ・フルフィルド Promises Fulfilled が逃げ、大本命グッド・マジックは3番手追走。この隊列のまま直線に向きましたが、外から前を捉えようとするもグッド・マジックは動きが今一。結局はプロミシズ・フルフィルドが2番手追走の2番人気(7対2)ストライク・パワー Strike Power にそのまま2馬身4分の1差を付けて逃げ切ってしまいました。人気のグッド・マジックは2着馬との差も詰められず、更に2馬身4分の1差の3着に終わる波乱です。
デール・ロマンス厩舎、イラッド・オルティス騎乗のプロミシズ・フルフィルドは、去年9月17日にチャーチル・ダウンズで新馬勝ちし、10月のキーンランドでアローワンス戦に連勝。無敗で臨んだ11月のケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス(GⅡ)3着で2歳シーズンを終え、ここが3歳シーズンのスタートでした。もちろんG戦は初勝利となりますが、ここまで4戦3勝3着1回、ダービー・ポイントを獲得し、真の試金石が次走フロリダ・ダービーになります。勝馬の父シャックルフォード Shacleford は、ロマンス師に最初のクラシック(プリークネス・ステークス)をプレゼントした馬でもあり、父と同じ逃げスタイルのプロミシズ・フルフィルドもクラシック・ホースになれるか・・・。

昨日の最後は、サンタ・アニタ競馬場のサンタ・イザベル・ステークス Santa Ysabel S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。オークス50ポイント対象ですが、雨で馬場は渋り、wet fast の馬場に1頭が取り消して5頭立て。前走1月にサンタ・イネズ・ステークス(GⅡ)を制したミッドナイト・ビスー Midnight Bisou が1対5で圧倒的な1番人気。
2番人気(7対2)スプリング・リリー Spring Lily の逃げを3番手でマークしたミッドナイト・ビスー、第4コーナーで外から逃げ馬に並び掛けると、鞍上はムチを使うことなく先頭に立ち、2番手から上がった4番人気(8対1)のサーティーン・スクエアード Thirteen Squared に2馬身4分の1差を付けて堂々人気に応えました。逃げたスプリング・リリーは8馬身離されての3着。
ウイリアム・スポール厩舎、マイク・スミス騎乗のミッドナイト・ビスーは、サンタ・イネズ、サンタ・イザベルを連勝し、間違いなく西海岸のオークス筆頭候補でしょう。このあとサンタ・アニタ・オークスからケンタッキーへ、というのがカリフォルニア牝馬のエリートコースでもあります。

 

 

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