無敗の新星、マグナム・ムーン

カレンダーの関係で今年の3月は土曜日が5回、その真ん中に位置する3月17日は、4つの競馬場で合計6鞍のG戦が行われました。

フロリダのガルフストリーム・パーク競馬場ではインサイド・インフォメーション・ステークス Inside Information S (GⅡ、4歳上牝、7ハロン)一鞍。fast の馬場に7頭が出走し、G戦は未勝利ながら堅実に1着・2着を堅持しているアイヴィー・ベル Ivy Bell がイーヴンの1番人気。
そのアイヴィー・ベル、スタートで躓き後手を踏みながらも4~5番手をキープして進みます。レースは3番人気(3対1)のリッチ・モミー Rich Mommy が逃げましたが、終始内を進んだ本命馬が前が開かないと見て直線で外に出して追い込むと、6番手から伸びた4番人気(8対1)のジョーダンズ・ヘニー Jordan’s Henny に1馬身差を付けて人気に応えました。3番手を進んだ5番人気(18対1)のマインズ・アンド・マジック Mines and Magic が首差の3着。
これが転厩初戦のアイヴィー・ベルはトッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗の5歳馬で、これがG戦初制覇。去年6月にチャーチル・ダウンズのシカゴ・ハンデ(GⅢ)で2着したのがG戦初出走で、今回が二度目のチャレンジ。前回の後はブラック・タイプのステークスで3戦して1-2-2着。レース中の不利を克服して本格化してきた印象です。

次はシンシナティ州のターフウェイ・パーク競馬場から、夫々のオークスとダービー。ここはオールウェザー・コースで知られ、先ずバーボネット・オークス Bourbonete Oaks (GⅢ、3歳牝、8ハロン)。馬場状態は fast と発表されていましたが、3頭が取り消して8頭立て。2歳時はイギリスで1勝し、前走アメリカ初戦のカリフォルニア・オークス(ブラック・タイプ、ゴールデン・ゲート競馬場)に勝ったコンソリディア Consolidia が2対1の1番人気。
スローな出だしから7番人気(22対1)ヘイ・ネグリタの逃げ。これを2番手でビッシリとマークしていた4番人気(9対2)のイン・ザ・ムード In the Mood が第4コーナーで外から捉えて先頭に立ちましたが、前半5番手で待機した3番人気(3対1)のゴー・ノ二・ゴー Go Noni Go が外から末脚を炸裂させると、最後は抑え気味にイン・ザ・ムードに2馬身差を付ける完勝となりました。6番手から追い込んだ5番人気(7対1)のホームメイド・サルサ Homemade Salsa が首差の3着に入り、後方2番手から末脚に賭けたコンソリディアは5着に終わっています。
マイケル・メイカー厩舎、タイラー・ガッファリオーネ騎乗のゴー・ノ二・ゴーは、去年7月にエリス・バークで初勝利。前々走12月のガルフストリーム・パークでアローワンス戦に勝ったのが2勝目。前走2月のスイーテスト・チャント・ステークス(GⅢ)5着を経て、これがG戦初勝利です。

次はケンタッキー・ダービーポイント対象でもあるジェフ・ラビー・ステークス Jeff Ruby S (GⅢ、3歳、9ハロン)。聞き慣れないレース名ですが、実は去年までスパイラル・ステークスとして行われていたもので、元々はジム・ビーム・ステークスと呼ばれていた3歳戦。これが3度目の改名となりました。12頭が参戦し、去年のBCジュヴェナイル8着、前走タンパ・ベイのアローワンス戦も2着ながらプレッチャー厩舎のハジット Hazit が3対1で1番人気。
そのハジットがスタートで躓くというアクシデントがあり、後方からの競馬。9番人気(13対1)の伏兵マガリッツ Mugaritz が向正面では後続に6馬身差の大逃げを打って先頭で直線に向きましたが、内から外から後方集団が一気に差を詰めると、7番手から内ラチ沿い一杯を通って突き抜けた2番人気(6対1)のブレンディッド・シチズン Blended Citizen が、9番手から外を急襲する3番人気(同じく6対1)ポニー・アップ Ponu Up に首差で優勝。やはり8番手から追い上げた8番人気(12対1)のアラワク Arawak が1馬身差で3着に入り、終始勝負に絡めなかったハジットは12着大敗に終わりました。
ダグ・オネイル厩舎、カイル・フレイ騎乗のブレンディッド・シチズンは去年11月のデル・マー、5戦目にして初勝利を挙げた馬で、これが2勝目でのG戦初勝利。前走は丁度一月前、ゴールデン・ゲート競馬場で今はリステッド戦に格下げされたエル・カミノ・レアル・ダービーで3着に入っていました。

続いてアーカンソー州に向かい、オークローン・パーク競馬場からもG戦2鞍。古馬牝馬によるアゼーリ・ステークス Azeri S (GⅡ、4歳上牝、8.5ハロン)は fast の馬場に8頭が出走し、去年3歳時にブラック・アイド・スーザン(GⅡ)とカムリー(GⅢ)と二つのG戦を制しているアクトレス Actress が9対5の1番人気。
ここでも本命アクトレスが出遅れるというハプニングがあり、5番人気(8対1)ファーレル Farrel の逃げ。4番手を追走した2番人気(3対1)のマルティーニ・グラス Martini Glass が抜け出すと、最後で懸命に追い上げる本命アクトレスに3馬身差を付ける圧勝となりました。出遅れが無ければ、と悔やまれる一戦でしたが、逃げたファーレルが半馬身差で3着に粘り、去年の勝馬ながら7番人気(13対1)の人気薄だったスティームライン Steamline は最下位9着に終わっています。
キース・ネイションズ厩舎、パコ・ロペス騎乗のマルティーニ・グラスは、前走ガルフストリーム・パークのロイヤル・デルタ・ステークス(GⅢ)に続くG戦2連勝となりました。

オークローンのメインは、ケンタッキー・ダービーの50ポイント対象となるレベル・ステークス Rebel S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。取り消しが1頭出て、10頭立て。1勝馬ながらもBCジュヴェナイルの2着馬で、前走ロス・アラミトス・フューチュリティー(GⅠ)では1着入線ながら3着降着となって以来となるソロミニ Solomini がイーヴンの1番人気。
1番枠発走の5番人気(14対1)タイトル・レディー Title Ready が逃げ、ソロミニは5番手から。3番手に付けていた2番人気(3対1)のマグナム・ムーン Magnum Moon が第4コーナーで外から逃げ馬を捉えると、追い縋る人気のソロミニに3馬身半差を付けての逆転劇となりました。後方2番手から追い込んだ4番人気(8対1)のコンバタント Combatant が頭差の3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ルイス・サエズ騎乗のマグナム・ムーンは、1月13日にガルフストリーム・パークでデビュー勝ちし、前走2月15日にはタンパ・ベイのアローワンスに連勝。ステークスもG戦も初挑戦となるここで一気に無敗で3連勝を飾り、俄然ダービー候補に名乗りを上げた1頭。このあとアーカンソー・ダービーを叩き、ケンタッキーへ向かうルートになるでしょう。3歳デビュー、無敗でダービー馬となれば歴史上でも珍しい快挙になるのでしょうが・・・。

今週も土曜日の最後は、カリフォルニアのサンタ・アニタ競馬場。古馬牝馬のサンタ・マルガリータ・ステークス Santa Margarita S (GⅠ、4歳上牝、9ハロン)は、GⅠ戦とは言いながらエイベル・タスマン Abel Tasman 、パラダイス・ウッズ Paradise Woods 、ユニーク・ベラ Unique Bella といった強豪は全てパスし、ややレヴェルの低い混戦模様。fast の馬場に10頭が参戦し、今期初戦のラ・カニャーダ・ステークス(GⅡ)を制し、前走サンタ・マリア・ステークス(GⅡ)ではユニーク・ベラの2着だったモポティズム Mopotism が8対5の1番人気。
レースは4番人気(7対1)メンディッド Mended の逃げで始まりましたが、最低人気(55対1)のターキッシュ・タビー Turkish Tabby が終始絡む展開。それでもメンディッドが振り切って逃げ粘る所、7番手の後方で待機していた2番人気(3対1)のフォールト Fault が直線に向いて直ぐにメンディッドを捉えると、直線は独り舞台。そのまま逃げ馬に6馬身半の大差を付ける圧勝劇でした。人気のモポティズムも6番手から追い上げたものの、更に2馬身4分の1差で3着に終わっています。
フィリップ・ダマト厩舎、ジョヴァンニ・フランコ騎乗のフォールトは、これがGⅠ戦初制覇となる4歳馬。去年の8月にアーリントンでパッカー・アップ・ステークス(GⅢ)に勝ったのがG戦初勝利で、前走ブエナ・ヴィスタ・ステークス(GⅡ)に続く連勝で、G戦も3勝目となります。3強に挑む第4の古馬牝馬たりうるか。

 

 

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