ウィーン国立歌劇場公演「こうもり」

あけましておめでとうございます、と言いたいところですが、頭の中は中々大晦日から抜け出せません。
昨日、2019年12月31日は夕方から上野の東京文化会館小ホールでベートーヴェン後期弦楽四重奏にどっぷりと浸り、顔見知りの紳士淑女たちと年末の挨拶を交わし、年越しソバをかっ込んで布団に入ったときは除夜の鐘も打ち終わっていました。
2020年の初日の出を拝む前に起きだし、パソコンの電源を入れて繋いだネットが、オッタヴァ・テレビのウィーン国立歌劇場ライブ・ストリーミング。正に現地大晦日公演の「こうもり」第2幕の真っ最中で、何とヨーナス・カウフマンが歌っているじゃありませんか。ともかく最後まで見て、お屠蘇とお雑煮でお正月はチャチャッと片付け、最初から見直して今見終わったところです。というわけで頭と耳は2019年の大晦日、という状態なのですね。今年の、いや去年の大晦日の「こうもり」はこんなキャストでした。

アイゼンシュタイン/アドリアン・エレート Adrian Erod
ロザリンデ/ローラ・エイキン Laura Aikin
フランク/ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー Jochen Schmeckenbecher
オルロフスキー侯爵/マルガリータ・グリツコヴァ Margarita Gritskova
アルフレード/ベンジャミン・ブランズ Benjamin Bruns
ファルケ博士/クレメンス・ウンターライナー Clemens Unterreiner
アデーレ/ダニエラ・ファリー Daniela Fally
フロッシュ/ペーター・シモニスチェク Peter Simonischek
ブリント博士/ペーター・イェロジッツ Peter Jelosits
イーダ/ヴァレリーア・サヴィンスカイア
イワン/ツァバ・マルコヴィッツ Czaba Markovits
指揮/ニコラス・カーター Nicholas Carter
演出/オットー・シェンク Otto Schenk
舞台美術/ギュンター・シュナイダー=ジームセン Gunther Schneider-Siemssen
衣装/ミレーナ・カノネロ Milena Canonero
バレエ(雷鳴と電光)振付/ゲルリンデ・ディル Gerlinde Dill

ヨハン・シュトラウスの傑作オペレッタには解説無用でしょう。伝統あるオットー・シェンクの名舞台は、去年のクリスマスに放映されたゼッフィレルリの「ラ・ボエーム」と並んでオペラ演出の古典と呼べるもの。
シェンクは今年(2020年)の6月に90歳になる巨匠で、こうもりの名演出は、確かバイエルン国立歌劇場でプレミエされたものと記憶しています。ウィーンの年末年始は「こうもり」が当たり前で、大晦日と元旦、1月の4日と6日にも公演が予定されていて、放映中の舞台は大晦日のライブ。因みにお正月の夜だけは、フロッシュ以外のキャストは全員が入れ替えになるようです。

「こうもり」ですから思い切りウィンナ・オペレッタの世界を満喫すればよろしい。第2幕のパーティーの場面の出し物はポルカ「雷鳴と電光」とだけ告知されていましたが、実際にファルケ博士が歌のゲストとして告げたのは、ヨーナス・カウフマン!! このサプライズに字幕がパニックになって暴走していたのには笑いました。
カウフマンはロザリンデとの二重唱で「メリー・ウィドウ」のデュエットなど3曲を披露してくれましたが、最初と最後は何という歌でしょうか。ウィーンの歌の世界に詳しい方に教えていただければ幸いです。最後に歌った曲は行く年への別れを歌った内容の様で、「ツヴァンツィッヒ・ノインツェーン」という発音が聴き取れましたから、2019年に別れを告げて新年を迎えよう、という意味かも。カウフマンの喋りも含めて、ドイツ語を話すことは出来なくとも、何を言っているのかを理解できる程度には勉強したいと真面目に思いましたね。もちろんフロッシュの喋りに客席がドッと沸くのも、チンプンカンプンの身には悔しい限り。

アイゼンシュタインとファルケ博士のコンビ、エレートとウンターライナーが実に良い。二人ともウィーン国立歌劇場の常連で、ライブ・ストリーミングでもすっかりお馴染み。この二人の歌と踊りを聴き、見ているだけでウィーンそのものという世界に遊ぶことが出来ました。

全曲が終わり、最後にフロッシュの音頭で「プロジット・ノイヤール」の挨拶があるのも、いかにも大晦日のウィーンという素敵な時間。刑務所のカレンダー、12月31日の次が32日になっているのも笑えますし、年末なのか新年なのか混乱している所以でもあります。
こんなお正月は初めての経験。これもオッタヴァ・テレビのお陰でしょう。ということで、今年も宜しくお願いいたします。

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