ウィーン国立歌劇場公演「ラインの黄金」

3月11日のブログでも紹介したように、ヨーロッパにも蔓延している新型コロナウイルスの影響で、ウィーン国立歌劇場は10日から3月一杯は閉鎖されることが決まりました。その後、リハーサルの関係から再開は4月3日からと正式に発表されています。ただし感染の拡大によっては再調整があるかもしれません。
これに伴ってオッタヴァ・テレビで放映されているライブストリーミングも中止されることになりましたが、現地ウィーンでは閉鎖期間中はアーカイヴ映像を無料で配信することが決まり、オッタヴァ・テレビも現地と調整を重ねた結果、本来ならライヴで行われる演目に付いては予定通り過去のアーカイヴ映像を放送から3日間は無料で視聴できるという素晴らしい判断が下されました。先ずは関係者の努力に感謝いたします。
これに加えて、今日(16日)から4月2日までは連日、アーカイヴから選りすぐりの映像も配信するとか。ライブストリーミング・ファンにとっては夢のような18日間がスタートすることになりました。

無料ですから視聴は簡単。先ずは下記オッタヴァ・テレビのホームページに行き、各自IDを取得してください。メールアドレスと自分で設定したパスワードを入力。視聴をクリックすれば瞬時にウィーンと繋がります。画面右下で字幕も選択できます。初日の「ラインの黄金」は日本語字幕を見ることが出来ましたが、その他のアーカイヴに付いては字幕が無いこともあるようです。これはウィーン駒立歌劇場のホームページで案内がありました。

https://ottava.tv/

ということで皆さん、大いに自粛生活を楽しみましょう。一人でも多くの方に見て聴いていただき、ストリーミングの素晴らしさを実感していただきたいと思います。平常時に戻っても、是非有料の配信を見ていただき、オペラの素晴らしい世界に参加しましょう。
すっかり宣伝になってしまいましたが、月曜日から始まったニーベルングの指環シリーズは、本来なら3月15日からスタートするプロダクション。プレミエではなくこれまで何度も重ねられてきた舞台の再演ですから、ウィーンにはアーカイヴが存在するわけ。この辺りは流石にウィーンで、今「ラインの黄金」を見終わりましたが、これまでのライブと全く変わりません。恰も現地で実際に上演されているものを鑑賞している気分になれました。
今回の配信は2016年1月10日に行われた公演で、今年3月に予定されていたものと全く同じ演出。指揮者とヴォータン、ローゲも同じですから、同じ体験が味わえるでしょう。キャストは以下のもの。

ヴォータン/トマーシュ・コニエチュニー Tomasz Konieczny
ローゲ/ノルベルト・エルンスト Norbert Ernst
フリッカ/ミカエラ・シュースター Michaela Schuster
エルダ/アンナ・ラーション Anna Larsson
アルベリッヒ/ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー Jochen Schmeckenbecher
ドンナー/ボアズ・ダニエル Boaz Daniel
フロー/ジェイソン・ブリッジス Jason Bridges
フライア/キャロライン・ウェンボーン Caroline Wenborne
ミーメ/ヘルヴィッヒ・ペコラーロ Herwig Pecoraro
ファゾルト/アイン・アンガー Ain Anger
ファフナー/ソリン・コリバン Sorin Coliban
ヴォークリンデ/アンドレア・キャロル Andrea Carroll
ウェルグンデ/レーチェル・フレンケル Rachel Frenkel
フロースヒルデ/ゾルヤーナ・クシュプラー Zoryana Kushpler
指揮/アダム・フィッシャー Adam Fischer
演出/スヴェン=エリック・べヒトルフ Sven-Eric Bechtolf
舞台/ロルフ・グリッテンベルク Rolf Glittenberg
衣装/マリアンヌ・グリッテンベルク Marianne Glittenberg
ビデオ/フリードリッヒ・ツォルン Friedrich Zorn

演出・舞台・衣装のコンビはこれまで配信された「ナクソス島のアリアドネ」「ルサルカ」でも組んでいて、ウィーンでは見慣れた舞台なのでしょう。指揮のアダム・フィッシャーは大人気で、登場した時点で大変な声援が起きています。
先頃配信されたびわ湖の「神々の黄昏は」ハンペ演出、最新の映像技術を使って台本に極めて忠実なリアリスティックな舞台を創り出していて感心しましたが、べヒトルフ演出も映像と照明を的確に用い、抽象的に指環の世界を描き出していました。

何よりウィーンが勝っているのは音質と画質でしょう。ウィーン・フィルの迫力ある響きが良く捉えられており、巨人族の動機、契約のモチーフなどの重低音の素晴らしいこと。これは、ウィーン国立歌劇場ライブストリーミングにおけるノウハウの蓄積があってのことだと思料します。
ウィーンでは通常コントラバスは6本ですが、この公演では8本も並ぶ壮観。オーケストラのみの部分では、コンマスのシュトイデ以下、楽員の演奏する表情を具に見ることが出来るのも楽しみです。

舞台の感想はご覧になられた方々に任せるとして、何度も繰り返されるカーテンコールがまた良いですね。多くの登場人物たちがコールに呼び出される順番、浴びせられる拍手と歓声の大きさなど、やはりウィーンの聴衆は耳が肥えていると思いました。
それにしても客席の沸きよう、やはりオペラは(オペラに限らず)観客あってのものだと改めて実感します。1日も早くこの日常が復活することを願って止みません。

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