ウィーン国立歌劇場公演「エフゲニ・オネーギン」(オンライン)

急遽アーカイブ無料配信が決まったウィーン国立歌劇場、その経緯は昨日アップした「カヴ&パグ」の記事に書きました。前日に続いて配信されているのが、チャイコフスキーの「エフゲニ・オネーギン」。この公演は前シーズン以前のアーカイブではなく、今期の演目に加えられているウィーンとしては新しい演出によるものなので、ここで簡単に紹介しておきます。
当初オネーギンは11月4日の公演がライブで配信される予定だったようですが、最終的には2020年10月31日の公演を編集したものが放送されています。キャスト等は以下の通り。

タチアーナ/ニコール・カー Nicole Car
エフゲニ・オネーギン/アンドレ・シューウェン Andre Schuen
レンスキー/ボグダン・ヴォルコフ Bogdan Volkov
グレーミン侯爵/ディミトリー・イヴァシュチェンコ Dimitry Ivashchenko
オリガ/アンナ・ゴルヤチョヴァ Anna Goryachova
ラーリナ/ヘレーヌ・シュナイダーマン Helene Schneiderman
フィリピエヴナ/ラリッサ・ディアトコヴァ Larissa Diadkova
トリケ/(ミコラ・エルディク Mykola Erdyk)
陸軍大尉&ザレツキー/ダン・パウル・ドゥミトレスク Dan paul Dumitrescu
指揮/トマーシュ・ハヌス Tomas Hanus
演出/ドミトリー・チェルニャコフ Dmitri Tcherniakov
衣装/マリア・ダニロヴァ Maria Danilova
照明/グレブ・フィルシュティンスキー Gleb Filshtinsky

前シーズンまでのオネーギンはファルク・リヒターの演出でしたが、今回は全く異なるもの。チェルニャコフの舞台はボリショイ・オペラでお披露目された演出のようで、彼らのパリ引っ越し公演の舞台がDVDとして出ています。このDVDで指揮しているのは、ウィーンでの公演が収録された2日前にコロナの合併症で亡くなったアレクサンドル・ヴェデルニコフの指揮。何やら因縁めいたものを感じてしまいます。

24時間しか視聴期間が無いので一度しか見れませんが、とにかく風変わりな演出ですね。舞台はラーリン家の応接間というか、パーティーを開く部屋。第1幕だけでなく、第2幕も第3幕も全てがこの広間、中央に大きなテーブルが置かれ、周りに多くの椅子が並べられている空間で演じられます。庭もタチアーナの寝室もこの広間なら、オネーギンとレンスキーの決闘が行われるのもこの部屋。
流石に決闘の場にはそぐわないと思いましたが、銃を巡って揉み合いとなる中で銃が暴発、レンスキーが倒れるという設定に変えられています。

オペラと言えば普通は歌がメインで、演技はこれを補完するものですが、この演出では芝居がメインで、音楽はあくまでも付随するものとして扱われます。例えば主役のアリアでも、常に誰かが演技している。時には歌詞とは異なる芝居すら演じられるのでした。
従って歌手も客席に向かって歌うとは限らず、語り掛ける相手を見て横向きで歌ったり、時には客席に背を向けて歌ったりする。実際にオペラハウスで聴くとどんな感じに聞こえるのでしょうか。歌劇「エフゲニ・オネーギン」というより、付随音楽「エフゲニ・オネーギン」とでも呼べるような演出。

第2幕第1場、ラーリン家の広間での宴でフランス人のトリケがタチアーナを称賛する歌を歌いますが、何とこれはレンスキーが歌うように変えられています。(タイトル・ロールには名前が挙がっていますが、これは黙役でしょうか)
その他、演劇上の変更というか読み替えは随所にあって、これまで見てきたオネーギン、ウィーンの以前までのオネーギンに親しんできた眼と耳にはかなり面食らう思いでした。

この辺にしておきましょう。オネーギンを歌うシューウェンはイタリアのバリトン、タチアーナのカーもオーストラリア生まれのソプラノということで、共にスラヴ系でないのも聴き所、見所でしょうか。この上演に満足するかはご覧になった皆さんの判断に任せることにしておきます。
今回のアーカイブ配信、このあと暫くは既に前回のアーカイブ・シリーズで放送された上演が続くようです。当欄では繰り返しません。

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