N響第1658回定期の放送
11月N響定期の放送が始まりました。11月はネルロ・サンティの指揮。
最初は11月14日にNHKホールで行われたAプログラム。曲目は①ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲 ②シューベルト/交響曲第7番「未完成」 ③ブラームス/交響曲第1番 というもの。
開いた口が塞がらないほどの名曲オンパレードです。ここまで徹底すると笑うしかありませんね。
サンティはこのところN響に定期的に客演しています。余程相思相愛なんでしょうか。以前は読売日響に度々客演していたサンティさん、N響に乗り替えてご機嫌みたい。
N響と読響はライバル関係にあって、発端は読への客演が決まっていたマタチッチを、Nが横から手を出して引き抜いたことだったようです。既に交わしていた契約書を破棄させてまで強引に横取りしたとか。有名な話ですし、もう時効でしょう。
チェリビダッケ争奪戦も凄かったらしくて、こちらは読の勝ち。
Nが先に手を付けて読が奪い返したのはアルブレヒトだし、スクロヴァチェフスキも両者の争いが激しかった例。
サンティは読が先でNが後から取り込んだケースでしょう。
さてサンティ翁、1931年9月22日生まれですから、78歳。ロヴィーゴで生まれてパドヴァで勉強した人ですから、北イタリア出身です。
1951年に本拠地パドヴァのヴェルディ劇場で振った「リゴレット」がデビューだったそうですから、生粋のイタリア・オペラの指揮者。歌手に優しい「歌い手のための指揮者」として知られているので、ドイツ音楽が得意なN響とウマが合うというのは面白い現象ですね。
高齢な上に巨漢ですから、階段を備えて指揮台に上ります。
対抗配置を採用しているのは如何にもヨーロッパの伝統を重んじる指揮者。同じ対抗配置でもホグウッドとは違って、左から第1ヴァイオリン→チェロ→ヴィオラ→第2ヴァイオリンの順。コントラバスは下手、第1ヴァイオリンの後ろに横一列に並べていました。
管楽器の並べ方も変っていて、ホルンは木管と見做して3列目に横並び。トランペットとトロンボーンは上手奥、いつもならコントラバスが座る位置に置かれています。ティンパ二も金管の横。ステレオなら右からティンパ二が聴こえてきます。
散々聴いている曲なので特に触れることもありませんが、①は第2主題のテンポをかなり落としてタップリ歌わせるのがイタリア風。コーダ、209~210小節の木管にホルンを重ねるのは伝統的な処理。
②は特に変わったことは無く、第1楽章の提示部は繰り返し実行。
③の第1楽章提示部繰り返しも実行しているのは珍しいかも。
第4楽章の主部は四つに振っていたので、プレイヤーは弾き易いでしょうね。269と270小節の木管にホルンを重ねるのはウェーバー同様に良くやる変更。
360、362、363にティンパ二を追加するのは最近では珍しいと思っていたら、コーダの金管によるコラールにもティンパ二を加えていたのには吃驚。確かイタリアの大先輩トスカニーニがやったことですが、今時のブラームスでは大珍品と言えるかもしれません。
お客さんは大喜びでした。
イタリア人指揮者には時々とんでもなく記憶力の良い人がいて、ジュゼッペ・パターネなどスコアだけじゃなくてヴァイオリンのパート譜を何処で捲るかまで記憶しているのだとか。大野和士が呆れていました。
もちろんサンティもその一人で、こんな名曲は全部暗譜。
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