NHK音楽祭/NHK交響楽団

2009年NHK音楽祭の最終日が放送されました。音楽祭の真打である地元N響の登場で弥が上にも盛り上がっている、とはNHKアナの前振り。それもそのはずで、世界の人気者ワレリー・ゲルギエフの指揮です。

曲目は、①芥川也寸志/弦楽のための三楽章 ②プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第3番 ③チャイコフスキー/交響曲第6番。ピアノのソロはアレクサンドル・ドラーゼ。

11月30日にNHKホールで行われたコンサートの録画だそうです。11月30日で思い出したのは、この日はサントリーホールで読売日響の定期が行われた日。ロジェストヴェンスキーがシュニトケの「長崎」を演奏したのですが、客席の入りが悪かったのはこれとバッティングしたからですね。納得しました。

音楽祭のテーマである故郷の名曲という意味では、読響の方が趣旨に叶っていたようにも思われます。
N響は日本のオーケストラである以上日本人作品をメインに据えるべきなのに、ロシア音楽が中心なのは指揮者の故郷だから。

ロシアに縁の深い①、作曲家が日本の印象を取りこんだという②があるのがミソでしょうが、折角ゲルギエフを呼んだのに③はチト残念、などと天の邪鬼の私は思ってしまいました。
ロジェヴェン御大のシュニトケを袖にしてまで駆けつけるほどのモノでしょうかねぇ~。

おや、と思ったのは、弦が対抗配置であること。しかもサンティと同じ並びなのは、そのままサンティ流を踏襲したのでしょうか、それとも「悲愴」第4楽章冒頭の効果を際立たせようと言う配慮か。
但し管楽器はいつものN響と同じで、ティンパ二もいつも通り中央。

サンティは11月26日の公演を振っていますから、間は3日間。ゲルギエフのリハーサルは何日あったのか知りませんが、①に関しては必ずしも完璧なアンサンブルとは言えなかったような気がします。

②のピアノは、ゲルギエフ同様に表現が極端に走ります。遅い個所は音楽が止まってしまいそうだし、アッチェレランドは猛烈を極めます。使用ピアノはスタインウェイ。
当然ながら客席は興奮の坩堝。私はこういうタイプは苦手の部類に属しますね。

③は②と同じことが言えて、冷静さより興奮が支配するチャイコフスキー。
弦の対抗配置による第4楽章の冒頭の効果は、放送では良く判りません。これは1階前方中央の席でないと、その真価は聴き取り難いものです。指揮者にとっては効果絶大。

第1楽章の爆発の前、例のファゴットの最弱音はクラリネットの2番奏者がバス・クラリネットで吹いていました。

特徴的だったのは、第1楽章の後だけ休みを取り、第2楽章~第4楽章を一気に演奏したこと。これにより作品への集中力が増したことは間違いありません。

アンコールは無し。

ゲルギエフは指揮棒を使用する場合としない時がありますが、今回は協奏曲だけ棒無し。最初と最後は指揮棒を持ち、例によってブルブル振るわせる独特な方法です。
3曲ともスコアを置いていましたが、見ていたのは①と②。③は1ページも捲らず、事実上暗譜で振っていました。

いずれにしても、こういうモノはテレビで見ても所詮は放送録音。音楽祭には放送を通じて、という謳い文句がありますが、クラシック音楽はナマを聴いてこそのもの。
私見では、毎年東京でやる必要は無く、寧ろオーケストラが無い地方都市を巡回して、日頃の視聴者に還元する方が音楽祭の趣旨に叶うのではないでしょうか。いわゆる「ハコ」がある街もたくさんあるでしょうしね。

東京には優れたオーケストラが溢れていますから、却って注目公演がバッティングしてしまって残念な結果になること大。
主催者に再考を促したい気持ちです。

 

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