サルビアホール クァルテット・シリーズ第22回
サルビアホールのクァルテット・シリーズ、第7シーズンがスタートしました。このシリーズが始まると愈々クラシック音楽シーズンも本格的になる、という感覚が生ずるようになってきましたね。
昨日は当シリーズではヴェテランに属する世代となるタカーチQ登場。このクラスのクァルテットを100人で聴くのは贅沢の極みと言えましょうか。プログラムも古今の名曲、真にバランスの良い選曲です。
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第4番ハ短調 作品18-4
バルトーク/弦楽四重奏曲第4番
~休憩~
スメタナ/弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」
タカーチ弦楽四重奏団
現在のタカーチ、改めてメンバー確認しておくと、ファーストがエドワード・ドゥシンベル Edward Dusinberre 、セカンドはカーロイ・シュランツ Karoly Schranz 、ヴィオラをジェラルディン・ウォルサー Geraldine Walther 、チェロはアンドラーシュ・フェイエール Andrash Fejer という面々。
1975年ブダペストで結成されたクァルテットで、当初ファーストを弾いたガボール・タカーチ=ナジェの名前から取った団名を現在でも継承しています。現在のドゥシンベルが2代目。またヴィオラを弾く女性ウォルサーは3代目とのことで、現在ではアメリカ(ボーダーのコロラド大学)を本拠地としているクァルテットとのこと。
彼らの今は、以下の公式ホームページをご覧あれ。
今回の日本公演は、鶴見を皮切りに4日連続のツアー。このあと紀尾井、武蔵野、静岡を巡る予定です。
ホームページによれば、11月10日と11日にはロンドンのヴィグモア・ホールに登場。特に11日はBBCのランチタイム・コンサートですから、BBCでネット中継があるでしょう。今旬の彼等を聴くならこの手もあります。
冒頭に書いたように、真に贅沢な2時間。ハンガリーをベースに、現在では英国の二人を加えて表現は更に洗練の度を加えてきた印象です。
セカンドとチェロはハンガリー人の創設メンバーで、特に二人の演奏スタイルは見て感動する類のもの。全身全霊を音楽に捧げるかの如き弾き振りは、鑑賞していて思わず見惚れるほど。
これを両端に座る英国の紳士淑女が絶妙にコントロール、頭脳とハートが程よくブレンドされた四重奏を満喫しました。
どれもシンフォニック、かつ構成的にも見事な演奏でしたが、やはりバルトークが圧巻。作品全体の核となる第3楽章のチェロは、歌でもあり独白でもある。その歌い回しこそ民族的な血の成せる技で、音符を正確に音にしただけの音楽とは決定的な差があると聴きました。
これを取り囲む内殻としての第2・4楽章、更に外の外殻としての第2・5楽章の構成的バランス感もほぼ完璧に描かれていました。未だにバルトークは現代音楽、難解だと感じている聴き手も多いと聞きますが、タカーチの弾くバルトークには晦渋さは皆無。恰もモーツァルトを聴くような心地良ささえ感じるほどです。必聴のバルトーク、本場ものにして国際的なバルトークと言えましょう。
もちろん他の2曲も見事な演奏。テクニックが完璧なことはもちろんですが、音色は尖ることなく、決して固くならず、何より音楽の流れが心地良い。加えて温かみを適度に含んだ音楽性に、補助席まで出た客席も大満足でした。
もちろんアンコールもあって、モーツァルトの「狩」四重奏曲からフィナーレ。これは武蔵野や静岡で演奏されることになっています。ヤナーチェクやブラームスも聴きたいところですが、鶴見の最高条件で聴いた一夜に満足することにしましょう。
ところで、この日はプログラムにSQSニュースが挟まれていました。その一つは、去年1月(SQS第8回)に登場して絶賛されたシューマンQが、先のボルドー国際コンクールで優勝したというトピック。ボルドーはかつてエヴィアン国際コンクールと呼ばれたもので、パオロ・ボルチアーニ、ロンドンと並ぶクァルテットの三大コンクールの一つ。
嬉しいことに、シューマンQは来年の11月にサルビア再登場がほぼ決定したそうです。これは絶対の聴きものになること必定。
次にSQSは既に第8シーズンまでが確定し、チケットも販売されていますが、早くも第12シーズンまでの登場団体がほぼ内定したという情報。
それによると、第10シーズン以降は以前に登場した団体の再登場がスタートするようで、来春の第10シーズンではカザルス、プラジャーク、パシフィカの豪華3点セットが実現。更に上記シューマンに加え、来年末にはウィハンも戻ってくる由。
次回の我がエクセルシオも2度目の登場ですが、もちろんシリーズに初登場するシマノフスキ、アトリウム、ミロなど聴き逃せないクァルテットが目白押し。増々期待の高まるシリーズになってきました。
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