2009クラシック馬のプロフィール(2)

続いて1000ギニー馬ガナーティ Ghanaati も紹介しましょう。
シー・ザ・スターズはドイツの名門ファミリーの出、と書きましたが、ガナーティの牝系は正に英国の名門牝系と言えるでしょう。
2000ギニー馬とは逆に6代母まで一気に遡ります。その名はフェオラ Feola 、血統好きが聞いたら泣いて喜びそうな名前でしょ。
フェオラはロイヤル・スタッドでも最も高名な繁殖牝馬でした。ロイヤル・スタッドと言えば、現在でこそ経営の実態は変わっているものの、かつては英国王室が全てを取り仕切っていた牧場。
フェオラは、当時の国王キング・ジョージ5世が購入し、1000ギニーとオークスに入着して繁殖に入ります。
詳しいことは省略しますが、フェオラの子供達は英国ばかりでなく、アメリカ(ラウンド・テーブル)、アルゼンチン(シデラルなど)に輸出されて夫々の生産界に多大な貢献をしてきました。
話をイギリスに限定すると、フェオラの娘ハイペリカム Hypericum はジョージ6世に1000ギニーをプレゼントします。
ハイペリカムの娘ハイライト Highlight は小さなレースに2勝しただけですが、母となってハイクレア Highclere を産みます。
ハイクレアは現在のエリザベス2世女王陛下の持ち馬として、大穴ながら1000ギニーを制して女王にクラシック馬主の栄光をもたらします。
ハイクレアは距離に若干の不安があったため、英オークスを断念して仏オークス(距離が2100メートルと若干短い)に挑戦、見事にクラシック2冠を達成。更にアスコットのキングジョージでもダーリア Dahlia の2着に食い込んで女王を歓喜の絶頂に導いたのでした。
恐らくエリザベス女王にとって、オリオール Aureole 、ダンファームリン Dunfermline (シルバー・ジュビリーの年にオークスとセントレジャーに勝った名牝)と並んで、ハイクレアは最も印象に残る名馬だと想像します。
そのハイクレアの娘ハイト・オブ・ファッション Height of Fashion もまた女王の馬として流行の最先端を走っていました。
クラシックこそ無縁だったものの、クラシック距離(1マイル半)のプリンセス・オブ・ウェールズ・ステークスをレコードタイムで制覇、名門血統を証明して見せます。
ここで女王は彼女をハムダン・アル・マクトゥーム氏に売却、ハイト・オブ・ファッションの産駒たちはマクトゥームの勝負服で競馬場に登場してきます。
ハイト・オブ・ファッションの輝かしい繁殖成績をご覧あれ。
1984 アルワスミ(ノーザン・ダンサー) Alwasmi
1985 アンフーウェイン(ノーザン・ダンサー) Unfuwain
1986 ナシュワン(ブラッシング・グルーム) Nashwan
1987 ムクダーム(ダンジグ) Mukddaam
1988 マンワー(リファード) Manwah
1990 バシャイヤー(ミスター・プロスぺクター) Bashayer
1991 ウィジュダン(ミスター・プロスペクター) Wijdan
1992 デヤージャー(デイジャー) Deyaajeer
1994 サライール(ミスター・プロスペクター) Sarayir
1998 ナイェフ(ガルチ) Nayef
ヨーロッパの競馬ファンなら腰を抜かすほどの名前の連続。マクトゥーム氏は幾らで女王からハイト・オブ・ファッションを譲り受けたのか知りませんが、完全に元は取っているでしょうね。
もとい、下品な発言は慎みましょう。
詳しいことは皆さん勝手に調べて下さい、ということでしょうが、ナシュワンは2000ギニー、ダービー、エクリプス、キングジョージ。
アンフーウェインはキングジョージ2着、凱旋門4着。
ナイェフはチャンピオン、ジャドモント・インターナショナル。
そして我がガナーティの母が1994年生まれの娘サライールなのです。
サライールは現役時代にオー・ソー・シャープ・ステークスという2歳馬の重要なレースに勝っています。今のところ目立った産駒は出ずにきましたが、遂に今年クラシック馬ガナーティを排出。もちろんハムダン・アル・マクトゥーム氏の持ち馬として。
ガナーティの父はジャイアンツ・コーズウェイ Giant’s Causeway。ストーム・キャット Storm Cat からストーム・バード Storm Bird を経てノーザン・ダンサーに到るサイアー・ライン。
ミスター・プロスペクター系牝馬にノーザン・ダンサー系種牡馬という配合は現在の世界の主流ですし、シー・ザ・スターズと全く同じ流れということになります。
ガナーティのオークス制覇の可能性は? この牝系にスタミナの疑問を感ずるでしょうか。
ファミリー・ナンバーは2号族f。

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