北九州珍道中

2月25日から2泊3日で北九州を回ってきました。私の場合は観光が第一目的ではなく、コンサートを聴く旅。今回は日本フィルの九州ツアーの一部を聴こうと目論んだのですが・・・。

当初の予定では25日に長崎に飛び、市内観光で数個所を巡って夜はコンサート。神尾真由子のメンデルスゾーンとラザレフのユニークなブラームス、名物のちゃんぽんももちろん視野に入れていました。

翌日は有田で陶磁器を物色し、柳川に寄ってうなぎを食う。午後に福岡入りしてもう一つのチャイコフスキー・プログラムを堪能。最終日は大宰府にでも寄り道して佐賀から帰京しようという計画。コンサートの選択は私ですが、旅程や宿泊場所は全て家内の担当です。移動はレンタカー、運転手と財務省ももちろん家内。これは毎度のこと。
尤も家内の最大目標は有田にあるのです。
九州は言わずと知れた陶器の国。正しく陶器オリンピックだ、という冗談も生まれましょうぞ。

しかし今回の九州旅はのっけから躓きました。私共のフライトは12時15分発長崎行き。出掛けにテレビを見ていると、羽田は濃霧のため欠航続出のニュース。もしや、と思い早めに出掛けます。

空港でアナウンスを見ていると、案の定フライトは欠航。取り敢えず航空会社のカウンターに行くと、対応が早かったのか、次の便(午後1時25分発長崎行き)に振り替えが可能とのこと。
やれやれ1時間ばかり遅れたものの何とか無事に長崎に行ける、と思ったのも束の間、この便も大幅に遅れる旨のアナウンス。
その後度々出発時間が後ろに伸び、最終的には16時発まで遅延。

よくよく問い質してみると、霧も晴れ、飛行機も整っているものの、運転手(パイロット)が来ない。
要するに、霧のため発着は辛うじて可能なれど、到着が不可能。便によっては別の空港に行き先を変更した便もある由。

このニュースは恐らく全国に流され、事態を憂慮した前原国土交通大臣が霧でも着陸できるシステムを早急に導入するよう指示したそうな。
何年に一度という事態に巻き込まれたのは、日頃の行いが悪いというか、よほどラッキーというか。

待つ身としては、最初は当日の長崎観光を諦め、次はコンサートの前半を断念、最終的には演奏会自体をパスするしかないと腹を決めましたな。

結局、16時に搭乗を開始したものの羽田は離陸ラッシュ。最終的に長崎空港に着いたのはコンサートが始まった18時30分でした。
それからレンタカーの手配。今日はホテルに辿り着ければ御の字という状態。

追い打ちをかけるように、降り出した雨は愈々激しく、初めて走る長崎自動車道は暗い上に対面通行1車線という個所が多くて怖いのなんの。
途中で迷ったりして、漸くホテルにチェックインできたのは20時に近くになっていました。今頃はブラームスの終楽章でしょう。

せめて有名店のちゃんぽんでも、と思ったら、何と長崎は夜8時閉店が大部分。町は雨に加えて春一番の大風、止むなくホテルの中華飯店でちゃんぽんと皿うどんにありつきます。ところが、これはやたら甘いだけでガッカリしましたね。
くたびれ儲けの一日。

翌朝、この日も一日雨、所によっては滝のような雨という予報に、観光は一切中止することに決定。
それでも折角の長崎。雨も小康状態なのでグラバー亭を回り、三浦環とプッチーニの像に敬意を表します。
ここから見る長崎港は、如何にも蝶々さんがピンカートンの来航を待ち侘びた風情。実際に現地で見れば、オペラの舞台が偲ばれようというもの。

小さな港町・長崎は、山が後ろに迫って坂道の多い町並み。今年は何処を覗いても坂本龍馬一色で、亀山社中の見学などはハナから遠慮しました。

雨は止む気配もなく、当初予定の柳川はキャンセルして有田一本に絞り、再び長崎自動車道に乗ります。途中で北九州自動車道に分岐し、家内の第一目的である有田は深川製磁のアウトレットモールへ。

彼女は眼の色を変えて物色していましたが、私の目に留まったのは手頃な価格の小皿。説明を読むと、2代目社長深川進の妻・敏子を記念した敏子メモリアルの一品。
30歳で天使になった彼女はヴァイオリンを良くした故でしょうか、この小皿には音符がデザインされています。
良く見れば、ドヴォルザークの新世界交響曲、第1楽章第2主題と第3主題のテーマ。それも再現部で出る第2フルートの部分なのですね。
2代目、という自身の立場を暗示した絵柄と取れないでもなく、家内の買い物コレクションに加えて貰いましたわ。

http://www.fukagawa-seiji.co.jp/cotp/index.php

ということで主目的は達成。少し早いけれど福岡に向かいます。

キャナル・シティに取ったホテルにチェックインし、日本フィルの知人プレイヤーに連絡。ゲネプロ前にお茶でも飲みましょう、ということにしてアクロスシンフォニーホールのあるビル内の喫茶店で笑い話。
他の楽員たちも三々五々時間を潰して行きます。

(このコンサートについては前の日記)

演奏会終了後、漸く雨も止んだのでぶらぶらと天神を俳徊。福岡という街は面白い所で、昼間とは景色が一変し、通りの一角を占拠するようにラーメン屋台が立ち並ぶのです。取り敢えずその一つを覗き、実にリーズナブルな値段で美味しいものを頂きました。これが夕食。

チャイコフスキーに酔い、満腹を抱えてホテルまでは福岡の街を歩いて帰ります。
小さな長崎に比べて、福岡は大都会。天神は銀座と新宿、渋谷をごっちゃにしたような世界と思えば良いでしょうか。印象はかなり雑多です。全てが総合的。

三日目は帰るばかり。福岡ではなく佐賀から帰るのは、家内の配慮で運賃が安いからとか。
雨も止んで時折陽も差す中、佐賀空港までの途中にある柳川散策を復活させることにしました。

柳川は水路の町。街に入って矢鱈に目に付くのはピンクの幟。季節がら「さげもの祭り」の最中で、どこの店でも雛人形と下げ物飾りが賑やかでした。
時間があまりないので水路巡りの勧誘は断り、目指すはうなぎ。東京とは違う、もちろん浜松や名古屋とも違ううなぎを美味しく頂きます。

残った小1時間は、北原白秋の生家を復元した白秋記念館で過ごします。
白秋は東京時代、我が在所でもある大森に住んでいたこともあり、親近感を覚える詩人。所縁かどうかは知りませんが、館内にはカラタチもありました。

ということで、霧と雨に翻弄された今回の九州。目的は半分程度しか達成されませんでしたが、次は、という目標も生まれたようです。
聞けば、ホールが素晴らしいのは佐賀の文化会館と宮崎のメディキットの由。“この二つのホールは是非聴いて下さい” という楽員の勧めもあることだし、次回は別のルートでリヴェンジしましょうか、ね。

 

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