ミチタネツケバナ

毎朝の散歩でタネツケバナの白い花が目立つようになってきました、と思ったのですが、これがどうやら違うようなのです。

タネツケバナは漢字で書けば「種漬花」。この花が咲く頃に種モミを水に漬けて苗代の準備をすることから付いたもので、農事と深い関係のある命名です。日本人が稲作を始めた頃からの知恵でしょうから、日本古来の野草であることが判ります。

田の畔や水辺に群生するものですが、都内でも春先には普通に見られます。

しかし極く最近に知ったことですが、タネツケバナとそっくりな帰化植物にミチタネツケバナという種類があるのだそうですね。
ヨーロッパから東アジアにかけて分布しているもの。

タネツケバナとの区別は、タネツケバナは比較的大型で、茎と葉に細かい毛が見られるのに対し、ミチタネツケバナは毛が無い。茎には葉があまり着かないそうで、花期もタネツケバナより早いそうです。

そこで今日も拙宅の近くにあるタネツケバナを調べて見ると、なるほど毛は無いし、茎から葉はほとんど出ていません。
これまでてっきりタネツケバナだと思っていたのは、実は帰化した別の種類だったんですねえ~。

尤も、水辺や水田に近い環境で見るものもありますから、これからは近付いて確認することにしましょう。
サラリーマン時代には赤坂御所の周りの土手にもたくさんありましたが、あれもミチタネツケバナだったのかも。いやぁ、不覚でしたね。

タネツケバナにしてもミチタネツケバナにしても、面白いのは花よりも花が終わって実が出来る時期。
細い果実の皮がバネの様に弾けて種を飛ばすのです。パンパンに育った果実にそっと手を触れると、思い切り弾ける。その感触が何とも面白いのですね。
何でも、芋虫・毛虫が這い上がろうとすると鞘が弾け、その皮が虫を縛り上げることで殺生武器にもなる由。私はその現場を目撃したことはありませんがね。

タネツケバナの学名は Cardamine flexuosa カルダミネ・フレクスオサ。属名は古代ギリシャ語の「アブラナ」。種名は、電光型に曲がった、という意味です。

一方、ミチタネツケバナは Cardamine hirsuta カルダミネ・ヒルスタ。こちらの意味は良く判りません。
(毛の多い、という意味だとしたら皮肉だとしか思えませんが)

日本での発見は1992年だそうで、宮城県が最初。既に関東地方にも侵入していると報告されていますが、遥かに速いスピードで広がっているように思います。

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