タンポポ
いつの間にか季節はタンポポの満開期を迎えています。タンポポと言えば最近ではテレビでも取り上げられるように、東京都心では専らセイヨウタンポポという種類がほとんどで、在来種のカントウタンポポは姿を消しているということが話題になります。
私も随分前から気が付いてカントウタンポポを探したこともあるのですが、世間で言われている通りだと思います。この頃は確認する気も失せてしまいました。
セイヨウタンポポとカントウタンポポの見分け方はすっかり有名になってしまいましたから、ここでは省略。
カントウタンポポという正式名称の種類がある位ですから、カンサイタンポポという種類もあります。名前の通り関西で出会うものはほとんどがカンサイタンポポだそうですが、私には関東と関西を区別する知識はありません。
(最近知ったことですが、トウカイタンポポという種類もあるのだそうですね)
関東にしても関西にしても、あるいは東海にしても、日本のタンポポは虫媒花によって増えるのが特徴。
対してセイヨウタンポポは、専門用語で言えば単為生殖で増えるため昆虫の助けは要りません。
これこそが、西洋が在来種を駆逐してしまった原因なのですね。何も幕末の攘夷論に限ったことではありません。俗に「タンポポ戦争」という言葉も生まれたくらい。
話を変えて、タンポポの語源。
「タンポポ」は、万葉集や古今集にはでてきません。古い時代にはタンポポは稀な植物であった、というのが理由だそうです。
タンポポが資料に登場してくるのは江戸時代から。
語源は諸説あって決定的なものはないようですね。
古名は「タナ」で、「タン」に転じ、花の後に綿が「ほほける」ように見えるからという説。
中国名の「婆婆丁」(ホホチン)をひっくり返したチンホホが日本に入ってタンポポになったという説。
フランス語のタンポから連想してタンポ穂に転じた、というのは牧野富太郎説。
私が最も正解に近いのではないかと思うのは、中村浩博士が出された“鼓の音”からの連想という説ですね。
詳しいことは中村浩著「植物名の由来」(東書選書)を読んでもらうことにして、要するに上田万年、柳田国男両博士の研究がヒントになっているのだそうです。
序に言えば、タンポポは漢字で「蒲公英」と書きます。これは何故でしょうかね。
万葉仮名の最古の辞書である「和名類聚抄」に記載されている「蒲公草」がタンポポと考えられていた時期があったそうです。しかしこれは現在のハハコグサのことであることが解っています。
蒲公草は「ホコウソウ」→「ホウコグサ」→「ハハコグサ」→「母子草」と繋がり、古代のタンポポとハハコグサの混同が現在まで尾を引いている、ということではないかと思います。
これはあくまでも私の想像ですから、真に受けないでくださいね。
カントウタンポポの学名は Taraxacum platycarpum タラクサクム・プラティカルプム。属名タラクサクムはアラビア語で「苦い」の意味。タンポポ類は薬草として古くから使われていた実利からの命名です。
種名は「幅広い果実」の意味。
セイヨウタンポポは Taraxacum officinale タラクサクム・オフィキナーレ。こちらの種名は「薬用の」ということで、タンポポを薬草として使うのはセイヨウタンポポの方が先輩かも知れません。
カンサイタンポポは Taraxacum japonicum タラクサクム・ヤポニクム。もちろん「日本の」の意。
道端や空き地、何処にでも咲いているタンポポですが、調べてみると中々深い世界が広がっていることに感心してしまいました。
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