ジャパンカップ

明日はジャパンカップがあります。競馬の話。

海外から参戦するのは2頭だけという寂しさですが、日本を代表するディープインパクトとハーツクライの一騎打ちが話題になっていますね。私も楽しみです。ですが馬券は興味がないし、才能も無いので手を出しません。

第一、その時間にはオペラ「利口な女狐の物語」を観戦中、結果はネットなどで確認します。

私が今よりずっとサラブレッドにのめりこんでいた当時、国際レースの傾向を調べたことがあります。
イギリスのキングジョージ六世クイーンエリザベス・ダイアモンドステークスとフランスの凱旋門賞、それにアメリカのローレル・インターナショナルです。

アメリカのレースはその後発展・解消され、現在はブリーダーズカップにとって代わられましたが、スピードシンボリやタケシバオーが参戦していた当時は、世界から注目されていたビッグ・レースだったのですね。

そこで得た結論は、国際レースはどうしても遠征馬に不利、地元の馬が勝つ確率が高く、その確率は不思議にも7割に収斂して行く、というものでした。
即ち、10年という単位で例示すれば、キングジョージはイギリス馬が、凱旋門はフランス馬が、ローレルはアメリカ馬が7回は勝つ、ということです。

ジャパンカップはどうかというと、前回までの25回の内、日本馬が勝ったのが11回、外国馬は14回という結果になっています。日本の勝率は4割5分、残念ながら半分にも満たず、7割は程遠いですね。

このレースが創設された1980年代は、正直に言って日本の競馬と海外、特に英仏米とはそのレヴェルに大きな差がありました。
漸く最近になって水準が大幅に向上し、逆に海外レヴェルが落ちてきたことも幸いして、世界的にも競馬先進国として認められるようになりました。

こうしたことの累積が4割5分という結果に繋がっているのは明らかで、更に回数を重ねていけば、やがては7割のラインに到着して安定するだろう、というのが私の予想です。
従って、それまでは日本馬に期待し続ける。

もう一つ問題があります。それは競争力ということ。
日本は長い間「鎖国競馬」を続けてきました。現在でも完全開放には至っていません。もちろん国内生産者やら馬主やらを保護するためです。何だかんだ言っても、競馬は一大産業なのです。

日本の事情に良く似た国がドイツでした。ここも徹底的な保護政策下で競馬を行っていました。風土・気候が馬産に適さないこともあって、長年ドイツ産馬は低迷して来ました。
それがある時期、激論の末、全面開放に踏み切ったのです。当初は当然のこと、ドイツ国内の大レースは英仏馬の恰好の餌食となりました。しかしながらこの自由競争の嵐が吹き荒れた結果、ドイツ競馬界は改革と改良に目覚め、飛躍的にレヴェルを上げたのです。
スターアピールが凱旋門賞を、ランドがジャパンカップを征したのもその成果。結果は意外に早く出ました。

翻って我が国の音楽界を見ると、ここは西洋音楽が輸入された明治以来、ずっと開放政策が採られて来ました。現在でもそうです。
オペラもオーケストラも器楽も、「外タレ」が稼ぐに任せたままとなり、日本国内の音楽産業は一切の保護を受けずに苦戦して来ました。

イギリスでは、例えばベルリン・フィルがロンドンで演奏会を開く場合、2回までと限られています。(現在もそうかどうかは知りませんが)アメリカも似たようなものです。
つまり音楽サークルは、国内の演奏家や団体を保護しつつ、海外の演奏も受け入れてきたのです。

日本は今でも、ただでさえ少ないクラシックの聴衆をウィーンだのベルリンだのコンセルトへボウだのに奪われ続けています。これらが集中する時期の国内オケの演奏会場は閑古鳥が啼きます。実に不思議な光景が繰り返され、誰も疑問を呈さず、音楽ジャーナリズムは海外組に絶賛の嵐を浴びせるのです。

しかし諸君、この厳しい自由競争を潜り抜けた結果、日本の音楽レヴェルは驚異的な躍進を遂げました。正直に言えば、日本のオーケストラの平均演奏水準は世界一です。そのことを認めないのは批評家と音楽ジャーナリズムと大半の聴く耳を持たない聴衆です。

競馬とクラシック音楽。全く対照的な歴史を歩んできた二つのジャンルを比べて見てください。保護か開放か、どちらがより良い道なのか、結論が出ているわけではありません。私にも判断は不可能です。

明日のジャパンカップ、英国競馬ファンの私も日本馬に一票を投じた積りで結果を待ちたいと思います。

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