エルデーディQのシューマン全曲

昨日は晴海のSQWへ、今期も残すところあと2回です。
この夜はエルデーディQによるシューマン全曲。全曲といってもシューマンは作品41の3曲をまとめ書きしただけで、他にはありませんね。

シューマンは全曲であれ何であれナマでは初体験、だと思います。レコードも真面目に聴いた記憶がないし、実際所有しているCDもゼロ、のはずです。
だから、お勉強、という積りもありました。シューマン自身もお勉強しながら書いたそうですから、それで良いのでしょう。
しかし、これは素晴らしかったなぁ。シューマン、嵌りましたよ。大人の音楽。
晴海のシリーズは、古典・エクセルシオ・エルデーディが三本柱という感じがします。ほぼ毎シーズン、決まったテーマを掲げて独自の展開をしてきました。来シーズンも続きます。

エルデーディは、その名のとおりハイドンの「エルデーディ四重奏曲集」を中心にした3回でスタート、去年がメンデルスゾーン全曲、今年シューマンですね。筋が通っています。余計なものは挟みません。
全部やる、という姿勢は徹底していましたね。どの曲も提示部の繰り返しなどが指示されていますが、彼等は全て忠実に実行していました。特に第1番第1楽章提示部などはブリッジが22小節もあって大いに意味があると思いますが、キチンと繰り返してくれたのがありがたかったですね。

この日のプログラムは渡辺和氏執筆。実に丁寧で的確、必要なことは全て網羅されています。この手のプログラムは演奏会が終わるとゴミ箱行きになるものがほとんどですが、これは永久保存版ですね。
とうの和さん、2階の定席にお見受けしました。ひょいと向こうを見ると、古典の田崎氏も。お仲間の花崎さんが出るから来られたのではないでしょう。軽く会釈。

アンサンブルは実に丹念に磨かれていました。プログラムにもあるように、シューマンは“リズムが強調されない”、“不整脈なパルス”に満ちています。典型は第2の第3楽章や第3の第2楽章でしょう。こういう個所のアンサンブルは素晴らしかったですね。難しければ難しいほど冴える合奏。相当の練習量をこなしたと思いました。
そのことが、大人の音楽という印象を聴衆に深く与えたと思います。個々の力量で唖然とさせるのではなく、弦楽四重奏という合奏体としての熟練ということ。

あまり室内楽には縁のない家内が、“何て艶っぽい音。いつまでも聴いていたいシューマン”と告白したのは、彼等の演奏がシューマンを初めて体験する人にも素晴らしい音楽として鑑賞されたということでしょう。これ、大事なことだと思います。

第1ヴァイオリンの蒲生克郷氏、さりげなくアンコールを告げます。
普通ですと、“今日は忙しい中お運びいただき、ありがとうございます”などと前口上がありますが、蒲生氏は、
“シューマンは他にクァルテット書いていませんので”と、いかにも話の続きという趣で会場を和ませます。“第1番の第2楽章をもう一度演奏します”
こういうキャラクター、好きですねぇ。

前回のメンデルスゾーンと比較して感じたこと。メンデルスゾーンはロマンという衣裳を羽織った古典派。シューマンは古典という衣裳を纏ったロマン派。
二人の生年はたった一つ違いですが、二人とも先人の音楽を深く研究しつつ、独自の個性をクァルテットの歴史に刻み込みました。シューマンは作品41をメンデルスゾーンに捧げています。

この日、来期のシーズン券を予約してきました。休憩時間に予約申込みに並んだのは爺さんバッカリ。もちろん私もその一人、しっかりシニア券を押さえましたよ。

 

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