今年の蝶

日記を始めたのが10月、蝶の季節としては終盤だったので、あまり日記で触れることはなかった。
折角だから、今年見たものの中で特に印象的だったものを書き残しておこう。

最近は態々観察や採集に出掛けるということはなくなってしまったので、主に都会の蝶。それでも結構珍しい経験をする。

先ずは遠征先。
遠征といっても、蝶が目的ではない。夫婦揃って還暦を迎えたので、記念に何処か行こう、という魂胆である。本来なら退職して引退記念旅行にしたかったのだが、世の中は儘ならない。
家内はサッサと辞めてしまった。内職だから気楽なもの。

で、旅先は全て彼女任せ。コチラは指示に従ってついて回るだけだ。結局、九州。連続の休みは取れないから、1日だけ休んで週末を利用する。

湯布院と阿蘇で泊まったけれど、本命は高千穂。日本人のルーツを体験したかった。生憎台風が通過中で、途中は酷い雨。しかし不思議なことに「高千穂峡」を散策した時間はウソのように晴れ、小一時間の観光。

ここで見たのがイシガケチョウ。そもそも関西の蝶だから、生まれて初めて生きた姿に出会った。関西方面には滅多に出掛けないし、偶に用があっても都会だけ。だからイシガケチョウには感激した。
最初見た時はモンシロチョウかと思ったけれど、飛び方も大きさも別物。直ぐにピンと来た。近寄って見るとなるほど「石崖」である。英名は Map-wing Butterfly だが、見ようによってはなるほど地図にも見える。英国人のセンスも捨てたものではない。「チズチョウ」。

これは5月19日のこと。

次は凄い。6月20日、いつものように迎賓館界隈を散歩していたときだ。目の前をやや大型のタテハチョウが掠めた。少し黒っぽく見えたのでルリタテハ、と思ったけれど少し違うようだ。ハテ、と思う内に西門横の土手に止まって翅を拡げた。
近づいて見ると、驚く勿れヒオドシチョウだ! 脳味噌がパニックになる。

実はヒオドシチョウは子供の頃に自宅近くで採集したことがある。昭和34年の標本がまだ残っているから、証拠もある。当時は東京と雖も彼方此方に雑木林が残っていて、タマムシだのクワガタムシなどを採っては遊んだものだ。ハナムグリやゴマフ・トラフなどのカミキリも珍しいものではなかった。

ところが何処かからオリンピックなるものがブルドーザーと一緒にやって来て、軒並み雑木林を丸坊主にしていった。ヒオドシチョウも呆れて何処かにいなくなってしまったのだ。

それから何年だ。40年以上経つのか。東京開発も相変わらず盛んだけれど、自然は強かである。ひっそりとではあるが、ヒオドシチョウも里帰りしたのだろう。小僧じゃあるまいし、山から飛んできたとは思えない。6月ですぞ。赤坂、四谷には少なくなったけれど、エノキの大樹も残っている。そこで発生したのかしら。

折角ヒオドシチョウが回帰したのに、どこぞの「トチヂ」がまたオリンピックなどと血迷っている。冗談じゃないぞ。自分は湘南だか何処だかに住んでいて週に2・3日通勤してくるだけだそうだ。そんな奴に東京を任せておいてよいのか。
今度の選挙では何としても落としてやらなきゃならん。でなければヒオドシチョウに申し訳がない。

吃驚第3弾は、それから1週間後の6月28日。今度はテングチョウだ。これもエノキを食す。テングチョウは会社の周り、ビルの谷間で飛んでいた。でも何故だ~~。
どうも自動販売機の周りに零れたジュースの匂いに惹き付けられているらしい。丁度昼時で、弁当を買いに出たのだが、テングチョウに面食らって昼飯を食い損ねた。そんなことは構わない。

どうも東京というところはよく判らない。江戸期の博物に関する資料を閲覧すると、オオムラサキもギフチョウも普通に飛んでいたらしい。だから自然力は本来備わっている土地なのだろう。環境が整えば、現在では想像もつかないような生物が復活し、定着する可能性はあるのだ。要するに人間様の意識の問題。

これからもシッカリと目を開け、観察し、日記に書き付けていこうではないか。

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