アジアの時代

今朝の新聞を見ていたら、大晦日のベートーヴェン連続演奏会の記事が出ていました。
上野の文化会館といえば、あぁ、岩城さんがやっていた交響曲全曲振るマラソンのことね、と思う人がほとんどでしょうが、そうじゃなくて、クァルテットの話題。

もちろん新聞には交響曲のことにも触れていましたよ。それはそれとして・・・。

去年は初めての試みとして、小ホールでベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の全曲演奏が行われました。
第12・13と大フーガをこの日のために結成されたルートヴィヒ弦楽四重奏団が、後半は古典四重奏団が14番から16番までを取り上げたのです。

行こうかな、という考えがチラッと頭を掠めたのですが、結局は躊躇ってしまいました。今思い返せば残念なことをしたようです。

ルートヴィヒ弦楽四重奏団というのは、主にオーケストラの首席奏者で結成されたクァルテットで、第1ヴァイオリンが読響の小森谷巧、第2ヴァイオリンは大フィルの長原幸太、ヴィオラをN響の店村真積、チェロが元東響首席だった山本祐之介というメンバーだそうです。

記事によると、特に古典四重奏団の高度な集中力に対しては、室内楽には珍しくスタンディング・オーヴェイションが贈られたようですね。

アドヴァイザーを務めた重鎮・岩淵龍太郎氏は、「最高度の音楽を求めて人が集まる現在の日本の文化のありように希望を抱いた」と感想を洩らしたそうな。

日本のクラシック界は相変わらず海外ブランド信仰が中心だったり、フライング拍手に代表されるような聴衆のマナーが話題になったりと、いろいろ問題があるのは事実です。

しかし「優れた聴き手」、「本物を聴き分ける耳」が育っているのも事実です。

去年、晴海でモルゴーア・クァルテットがショスタコーヴィチ全曲演奏会を行いました。私はその最終回を聴きましたが、最後の15番が静かに幕を閉じたあと、ホールを長い沈黙が支配しました。何でも37秒間の静寂だったそうです。そのあとの爆発的な大拍手。

沈黙は長ければ良い、というものではありませんが、作品と演奏の質を完璧に捉えて反応した聴衆が、それも多数いたのです。
私は音楽は当然ながら、聴き手の素晴らしさに感動しましたね。恐らく大晦日のベートーヴェンにも同質の感動があったのだろうと想像します。

欧米ではクラシックの衰退が酷いようですね。一部に人気のあるコンサートがあって、それがNHKなどで放送されているので解り難いのですが、その方面に詳しい方やプロフェッショナルの音楽家たちが指摘されているので、間違いないのでしょう。

クラシック音楽は、これからはアジアの時代です。もちろん欧米には優れた伝統があって、「場」としては重要な拠点であり続けるでしょう。
しかし本当の意味で音楽を活性化させていくのはアジアです。日本はその最先端に立っているのです。
もっとそのことを、我々は自覚すべきではないでしょうか。それによって流れは加速するでしょう。

今年の年越しはベートーヴェンのクァルテット。これで決まりだね、と家内とも意見が一致したところです。

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