昼の蝶

毎週月曜日は銀行の用事があるので、銀座に出る。
今日も並木通りを真っ直ぐに北へ向かい、晴海通りと交差する手前、三笠会館の前に差し掛かったとき、地面に大きな蝶の影が映った。
ふと見上げると、黒いアゲハがゆったりと舞っている。大きな白い斑紋が二つ目に入ったので、や、モンキアゲハか、と思ったのは一瞬。脳の記憶を司っている細胞から“違う違う”という信号が。
改めて目を凝らせば、これはナガサキアゲハに違いない。名前のとおり関西方面にしか生息しないこの蝶が、最近は関東地方にも出没しているという噂は耳にしているし、現に写真に収めている人もいる。
が、私はまだこの大物にナマで接したことはない。
当然ながら、焦る。
人目などは構っておれぬ。立ち止まってそのまま蝶を目で追っていると、どうやら並木の一本に止まる気配。しめしめ、シナノキの葉上に静止、ベロンと羽を広げた。
三笠会館の向い、看板にヴァレンチノと大書してあるビルの前にあるシナノキ。そう、並木通りの「並木」とはシナノキのことである。いわゆるリンデン。
道路を横切って、件の珍品が静止したシナノキに近づく。紛れもない、ド完品のナガサキアゲハ♀。前羽にある赤紋が眩しい。無尾型である。
初めて目撃したナガサキアゲハは、随分と緩やかに飛んでいた。♀だからだろうか。
ナガサキアゲハには何時か何処かで遭遇するだろう、という予感はあったが、まさか銀座のど真中で鉢合わせするとは思っても見なかった。
思えば何年か前の夏、これも関東に進出著しいムラサキツバメに初対面したのも、この並木通りだった。
並木通りは蝶のメッカか???
ここで捕虫網を片手に往復していれば、別に夜でなくとも珍蝶・美蝶が捕らえられるのではなかろうか・・・。

 

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