受賞作品はどれ?

この日記、書くべきか迷いましたが、少しだけ触れることにします。
今日(8月31日)、サントリーホールで行われた第18回芥川作曲賞選考演奏会。
コンサートの内容は以下のもの。
第16回芥川作曲賞受賞記念サントリー音楽財団委嘱作品
糀場富美子/月を食う空の獅子~トロンボーンとオーケストラのために
     ~休憩~
第18回芥川作曲賞候補作品
法倉雅紀(のりくら・まさあき)/延喜の祭禮第2番~室内オーケストラのための
伊藤聖子(いとう・せいこ)/ゴーイング・フォース・バイ・デイ~フルートソロと室内オーケストラのための
植田彰(うえだ・しょう)/ネバー・スタンド・ビハインド・ミー
 管弦楽/新日本フィルハーモニー交響楽団
 指揮/小松一彦
 トロンボーン/村田厚生
 フルート/多久潤一朗
現代音楽の評価はとても難しいものです。従って概要だけ。
毎年恒例の催し、いつものように冒頭で前々年の芥川作曲賞を受賞した作曲家の委嘱作品が演奏されます。
糀場氏は第16回を「未風化の七つの横領」で受賞された方。今回世界初演された作品は、一種のトロンボーン協奏曲です。掲載されたプログラムノートによれば、月蝕にまつわる世界各地の神話や噺を、トロンボーンを獅子に見立てて表現したもの。
大編成のオーケストラとトロンボーン・ソロが緊迫したやり取りでダイナミックに月蝕を描きます。糀場流の「夜の音楽」。
休憩の後、三つの候補作品が続けて演奏されました。続けてと言っても、どの作品もオーケストラの編成が普通のものではなく、舞台の設定に時間がかかります。裏方も総動員。
編成の大きさなどから、プログラムに書かれた順序とは異なる順序で演奏されました。
最初は法倉作品。1963年生まれで、今回の最年長。「延喜の祭禮」は1999年から続いているシリーズの一つだそうで、既に4番まで作曲。今回選ばれた2番は、当初大オーケストラのために発想されたものが挫折、今回の室内オケ用に新たに焼き直された由。
弦5部は全て1プルト、木管と金管も標準のものが1本づつ、打楽器は1人で多数を扱うもの。これにピアノとハープが加わります。
大太鼓の衝撃的な打撃と、大きく置かれた「間」でスタート。プログラムノートによれば、ハープ、ピアノと打楽器の鋭角的な対話から金管、木管、弦楽器への群による対話へと進み、交じり合い、拮抗し合いながら混沌の終末に向かう、というもの。
続いて伊藤作品。1983年埼玉県生まれ。今回はただ一人の女流作曲家。Going Forth By Day は、フルートと室内オケの協奏的作品。弦5部は各パートが1人という規模。セッティングが大変で、フルート・ソロのための譜面台が都合6箇所に据えられます。
最初にチェロの花崎氏が行方不明になるハプニングも・・・。
この作品は雅楽や歌舞伎からインスピレーションを得て作曲したもので、フランクフルトで初演されています。今回が日本初演。
フルートのソロは、アルト・フルートやピッコロも持ち替えながら進み、客席に背を向けたり正面に向き直ったり。その都度足で「ドン」とステップを踏みながら移動します。これは文楽での人形、人形遣いの直線的な動きの要素を含んだものだそうです。
題名は、古代エジプトの「死者の書」の原題を英語に直訳したもので、魂が日の光で旅立つように導かれるという意味の由。
最後の植田作品。1973年生まれで、第11回と第15回でも芥川作曲賞にノミネートされている常連です。
これは大編成オーケストラのための作品。冒頭に演奏された糀場作品よりも更に大きな編成で、楽器の様々な可能性を追求するに止まらず、奏者は足踏みを要求されたり、拍手や叫び声も発するという大仕掛け。
プログラムノートも実に不思議なもので、作曲家は通称Gと呼ばれる、ある危険な男を主人公とした一連の物語が最も気にかかっているとか。
Gの眼差し、標的の後に何を見ているのかが分れば、作曲などしなくてもよい、と言い、今のところはただ書くだけなのだそうです。
この作品は何かを描写しているものではなく、自分のルールで抱きしめているものを音にしただけ。それが Never Stand Behind Me 。
客席の「受け」が良かったのは、どうやら最後の植田だったようです。何しろ音を聴いただけではどの楽器がどのように演奏しているのか分らず、音響の大売出しといった様相です。
私が一番気に入ったのは、最初の法倉でしょうか。室内オケながら音色の多彩さやスリルも充分だし、必要最低限の要素で、書きたいことが全て表現された感じ。
伊藤はいかにも日本的な作品で静謐感も事欠かなかったのですが、やや舞台の動きに惑わされる面も。
植田の面白さは圧巻でしたが、私には少し長かったかなぁ~。
以上、1963、1973、1983年生まれと、丁度10歳づつ開きのある世代。これを比較して一曲だけ選ぶのは至難のことでしょう。感性も手法も三人三様の面白さがありましたからね。
このあと近藤譲、原田敬子、松平頼暁の三氏による高評と選考があったのですが、私は弟の義父の葬儀に参列せねばならず、ここでホールを出ました。
従って、これを書いている今現在、受賞作品がどれになったのか判りません。ブログやミクシィ日記でも結果を書いている方はまだのようです。結果が判りましたら書き込むことにして、今日はここまで。
そうそう、小松一彦指揮の新日本フィルの素晴らしい演奏、毎年のことですが、頭が下がります。

      *****

追記

今朝のインターネット新聞などによると、法倉雅紀氏に決まったそうです。どの報道も結果だけで、選考の経緯などは伝えられていません。それが面白いんですけどね。ま、それはいずれ何方かがブログに書かれるでしょう。
私としても一票を投じたかった「延喜の祭禮第2番」、結果に納得です。
演奏のレヴェルも極めて高いもの。再演の機会を期待しましょう。

 

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