名フィル・第355回定期演奏会

昨日は終日家を空けておりました。朝一番の新幹線で名古屋に向かいます。品川発午前6時丁度。
目的は二つ。一つは日記のタイトルにしたコンサートを聴くため。もう一つは、娘の命令で名古屋城の写真を撮ること。
城の写真などはどこにでもありそうですが、写真集などに無い所を撮ってこい、というのが使命。よく判らんけれど、ま、パチパチやりましょうか。
朝一番にしたのは単純な理由。JR東海の割引切符があるから。これだと正規料金の2割引で往復でき、現地で朝食も摂れるし、市内のバス料金も含まれている。名古屋城の入場料も2割引、引退した人間はコストをかけられないのであ~る。
普通に愛知県芸術劇場コンサートホールに行く場合は、新幹線名古屋駅から地下鉄東山線を捉まえ、二つ目の「栄」で下車すれば目の前なんですが、以上の次第で遠回りをします。
名古屋城の顛末は本題ではないので全部省略。ただ、現地はウメ、ロウバイ、コブシ、マンサク、スイセンなど早春の花が咲き揃っていて、個人的にはマンサクの良い写真が撮れたので満足。
名古屋に行けば家内の実家に挨拶するのが習い、今回も上がり込んで長話をしてしまいました。お陰でヒツマブシは食べ損なう・・・。
ウッカリ長居をして芸劇まで車で送ってもらい、慌しくホールに着くと丁度プレトークが始まるところ。
名古屋フィルハーモニー交響楽団・第355回定期演奏会
《ツァラトゥストラ・シリーズ》
シューベルト/交響曲第7番ロ短調「未完成」
藤倉大(ふじくら・だい)/『アンペール』ピアノと管弦楽のための協奏曲
     ~休憩~
マーラー/交響曲第1番二長調「巨人」
 指揮/ティエリー・フィッシャー
 ピアノ/小川典子
 コンサートマスター/植村太郎
名古屋遠征はもちろん藤倉作品の日本初演(厳密な意味では前日の金曜日でしたが)に立ち会うことであり、小川典子の奮闘振りを応援するためでもあります。
プレトークで新作を語る藤倉大。真赤なシャツで登場しました。これはイギリスのフィルハーモニア管弦楽団と名フィルとの共同委嘱作だそうで、話としてはイギリスが先。名古屋はこれに乗った形になるそうです。
本命の新作。通常のスタインウェイ・グランドの右脇に真っ赤なトイ・ピアノが置かれています。トイ・ピアノ、つまりオモチャのピアノですが、これにも小さな椅子が添えられているのが、かわゆい。これも真っ赤。
解説には“特製の鍵盤楽器”とありましたが、これもスタインウェイかな??? そこんとこは聴き損なったなぁ~。
登場した小川典子、彼女もまた真っ赤なドレスに身を包み、なぁるほど、これは真っ赤で統一した作品か、とニンマリします。
新作協奏曲は22分ほどの大作。プログラムに掲載された解説によれば、全体は5部で構成されている由。と言っても全体は通して演奏される単一楽章。
藤倉はピアノ協奏曲というジャンルには馴染めないモノが合ったようで、ここでは“オーケストラとピアノをひとつの大きなピアノとして扱った”のだとの事。そこが「アンペール」のポイントでしょうか。
特に面白かったのは二つのカデンツァ。第1は全体の第3部に相当する箇所で、三つの打楽器が時々加わる「カデンツァ・アカンパニャート」。
三つの打楽器とは、ティンパニ、ロート・トム、トーキング・ドラム。
もう一つのカデンツァは曲の最後、件の真っ赤なトイ・ピアノで演奏される「夢」のような音楽。これにはグラス・ハーモニカが幻想的な色合いで和するのでした。
ここでは、小川典子のデビュー20周年記念コンサートで紹介された藤倉の「リターニング」を、ふと思い出します。
藤倉によれば、前作からの直接の引用はされていないそうですが、「亡霊」のような形で影響を与えている由。なぁるほど、と納得。
(この部分は藤倉が見た悪夢の余韻かしら、ね)
名フィルのプログラム誌は新作の紹介も実に丁寧、オーケストラ編成もキチンと掲げられていて立派なもの。東京の某Y響などは見習って欲しいものです。必要なことは全て書いてあり、コンサートとは関係ない記事は皆無。
フィッシャー率いる名フィルも大健闘。リハーサルに4日間を掛けた熱意には頭が下がります。
新しい作品が二日間に亘って取り上げられるのは極めて大切なこと。藤倉作品も名フィルという意欲的なオーケストラを得て幸せです。
もちろん小川典子も大熱演。作品と演奏への集中のあまり、両耳のイヤリングを客席に飛ばしたのも気付かなかった様子。二人の聴衆から「落し物」を受け取った所で客席の拍手も一段と大きくなりました。
(小川典子の同時代作品に対する貢献に付いては、先日の菅野作品で書きましたから繰り返しません。それにしても一月に2曲の世界初演を成し遂げてしまうとは・・・)
この日は休憩時間に小川のサイン会が急遽開かれ、チョコッと挨拶をして来ました。
フィッシャー指揮の名曲。少しだけ触れておきます。
この指揮者は初めて見る人。譜面台にスコアを置き、指揮棒を持って振ります。
その棒を握り締めるのでなく、摘むように持ってしなやかに振るのです。この世代にはよく見かける、カルロス・クライバーを連想させる指揮姿ですね。
シューベルトは、コンサートの長さを考慮したのか、第1楽章の繰り返しは省略。第2楽章のシンコペーションに独特の味わいがありました。
メインのマーラーは、細部の彫琢よりは全体の流れと勢いを重視した演奏。
飛び上がるほど驚いたのは、第3楽章冒頭のコントラバス・ソロの主題をバス軍8人が一斉に弾いたこと。これに続くオーボエ・ソロの副主題もオーボエ二人のユニゾン。
恐らくフィッシャーの考えなのでしょうが、こういう処置は初めて見(聴き)ましたね。
ホルンの8人立ちも、そのまま最後まで立ったまま。
意欲的な名古屋を満喫してトンボ帰の一日でした。ふぅ~。

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