騙しのテクニック、夢遊病の女

メット・ライブビューイング、今シーズンの最後から2番目の演目を見てきました。ベッリーニの歌劇「夢遊病の女」。
今日は上映初日、週末ということもあってか109シネマズ川崎はほぼ満員。こんなに混んでいたのは初体験です。
このオペラはストーリーに無理があって、そのまんま台本通りやったのではどうにもなりません。煮ても焼いても食えないオペラ、なんというとベッリーニ・ファンに叱られそうですが、とにかくカッタルイ。
メットがどうやって料理するか、半信半疑で見たキャストは、
アミーナ/ナタリー・デセイ
エルヴィーノ/ファン・ディエゴ・フローレス
ロドルフォ伯爵/ミケーレ・ペルトゥージ
リーザ/ジェニファー・ブラック
指揮/エヴェリーノ・ピド
演出/メアリー・ジマーマン
役の名前などもどうでもいいようなオペラで、要するに主役の二人の声を聴くだけの作品。デセイとフローレスと言えば前シーズンの「連隊の娘」が馬鹿受けでしたから、興味はそこだけかな。
これは新演出、舞台が開くとスイスの寒村などはどこにもなく、どうやらメトロポリタン歌劇場のリハーサル・スタジオのようです。合唱も主役も普段着で出てくるし、小道具などもリハーサルそんまんま。
もちろん音楽はベッリーニそのものですが、まだ稽古中という設定。
幕間インタビューでも暴露してましたが、デセイは自前の衣装だそうですし、フローレスも “見せられないけど、靴下と下着は自前だよ” って言ってます。
(今回のインタヴュアーはデボラ・ヴォイト)
ははぁ~ん、金融危機に端を発した経済恐慌がいよいよメットを直撃、予算も取れずに考え出した苦肉の演出だな、これ。
ということで、デセイとフローレスのベルカントだけ楽しみましょうか。
それにしても凄い、フローレスの張りのある高音。
橋ではなくオケ・ピットの上にせり出した舞台に乗り、夢遊状態で歌うデセイの抜群のテクニック。
歌に唖然としていると、最後にどんでん返しが起きます。あっという間に舞台は本番に転換。豪華なスイスの民族衣裳に身を包んだ登場人物たちによる華麗なフィナーレ。
経費節減舞台だと信じていたらスッカリ騙されます。相変わらずの豪華舞台。メットにしてやられました。
まだ来週一杯上映されていますから、あとは皆さんの目と耳で楽しんでくださいな。
鑑賞のポイント。
どんなに退屈な場面が続いても途中で絶対に寝ないこと。どうしようもないストーリーの展開に耐えてこそ、最後の驚きが活きます。

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