エンターテインメントに徹したホフマン物語

昨日は久しぶりにメット・ライヴ・ビューイングを見物してきました。川崎ラゾーナの109シネマズ川崎。

シーズン最初のトスカを見た後、アイーダとトゥーランドットはパスしました。アイーダは見る積りで出掛けたところ、何と売り切れ。平日の午前中に何と言うこと、と唖然としましたが、映画オペラ人気が沸騰しているんでしょうか。

そんなこともあって、トゥーランドットは最初から敬遠のフォアボール。演出も相変わらずゼッフィレルリの蔵出しだそうで、無理にお金をかけて見ることもないでしょう。

ホフマン物語は新演出。頻繁に見られる作品でもないので、思い切って川崎に向かいました。この日も平日でしたがかなりの混雑、幸い売り切れにはならず無事に着席。

主なキャスト等は、

ホフマン/ジョセフ・カレーハ
ニクラウス/ケート・リンゼイ
悪漢4役/アラン・ヘルド
オランピア/キャスリーン・キム
アント二ア/アンナ・ネトレプコ
ジュリエッタ/エカテリーナ・グバノヴァ
 指揮/ジェームス・レヴァイン
 演出/バートレット・シャー

映画ですからあまり音楽的なことには触れません。例によって、映画館の音響は場面によっては耐え難いものがあります。

演出家のシャーは、既にメットでセヴィリアの理髪師を演出したアメリカ人。ブロードウェイのミュージカルでも活躍している人で、メットではこういう演出家を使うことが多いようですね。

デボラ・ヴォイトが舞台裏紹介やインタヴューを取り仕切っていましたが、登場したシャーによれば、ヘルドが演じた悪漢はホフマンの「悪夢」なのだとか。カフカにインスピレーションを得た「マジカル・ジャーニー」というコンセプトだそうです。

キャストの目玉は何と言ってもネトレプコでしょう。

シーズンが始まる前の発表では、ジュリエッタはガランチャが予定されているはずでしたね。これは私の想像ですが、カルメンを予定していたゲオルギューが降板し、カルメンにはガランチャが交替。カルメンのリハーサルとホフマン物語の本番が重なってしまうため、ガランチャはホフマンを降りざるを得なかったのではないか。謂わば玉突き事故みたいなもの。

その分、ホフマン物語のチケット販売はネトレプコに「おんぶにだっこ」状態だったのじゃないでしょうか。
良く言えば、メットの舞台はエンターテインメントに徹している、ということ。

ネトレプコはプロローグで娼婦姿を見せたり、エピローグではステラとしても登場。もちろんどちらも歌いませんが、演出とは別の理由で舞台に「登場」したのではと勘繰ってしまいました。

この演出、というか舞台は思い切った飛躍があって、エピローグでは三つの場面の女性たち全てが登場して合唱に加わる。しかもネトレプコには高音を張り上げさせるという具合で、私にはルール違反じゃないか、と思われる瞬間も多々あります。

競走馬で言えば、やや太め残りのネトレプコ。ナマの舞台を遠くから見ている分には問題がないのでしょうが、アップで写されるとどうなんでしょう。
特別に彼女のファンでもない私は、少し白けるところがありましたな。

しかし冷静に見れば、ホフマンのカレーハ、ニクラウスのリンゼイ、4役を務めたヘルド、コミカルなタッチで沸かせたオランピアのキムは夫々に見事で、正に適材適所。一定の水準はチャンと確保してます。
(総合ガイドブックに Karen Lindsay の名前が無いのは落ち度ですね)

1年待てば恐らくNHKでも放送されるでしょう。ネトレプコちゃんですからね。
慌てて映画館に行かずとも、それまで待っても良いと思いましたね。

幕間の休憩は2回。正味3時間40分の長丁場。幕間のインタヴューには、次の次に予定されているカルメンに出演するアラーニャとクフィエチェン(エスカミーリョ)も登場します。こちらのファンの方は是非映画館へ・・・。

 

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