読売日響・第168回芸劇名曲シリーズ
昨日は池袋で読響を聴きました。本来は今日(1月27日)のチケットを持っていたのですが、日本フィルのマエストロ・サロンとバッティング。当初はサロンをパスする積りでしたが、最終回のサロンということで参加しないわけにもいかず、幸い同じプログラムが前日にも行われることに気が付いて振り替えたものです。
(読響の各種定期は、同じ月内なら他日の公演に振り替えられるシステムがあります)
サントリーのチケットはAランクですが、回ってきたチケットはBランク。それも2階の後ろから3列目という特等席? いつもとは趣の異なる読響サウンドを楽しんできました。
モーツァルト/ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド変ロ長調K269
モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364
~休憩~
ブラームス/交響曲第2番ニ長調
指揮/マリン・オルソップ
ヴァイオリン/ライナー・ホーネック
ヴィオラ/鈴木康浩
コンサートマスター/小森谷巧
フォアシュピーラー/鈴木理恵子
プログラムはモーツァルトとブラームス。前半は♭系の小振りな協奏作品で、後半は♯2つのロマン派大作という中々気が利いたものです。
2階の奥から見下ろせば、1階席は良く埋まっているように見えました。
私の席は後ろから3列目。と言っても両脇は空席、後2列も完全な空席状態で、お陰で荷物を隣の席に置き、ゆったりと名曲を堪能できました。
今年のニューイヤー・コンサートでもコンマスを務めたウィーン・フィルの首席であるライナー・ホーネック、読響とはモーツァルト協奏曲シリーズを続けてきましたが、今回はその4回目だそうです。
この後は4月に2台ヴァイオリンのコンチェルトーネを弾いて完結する予定。その時は初めて指揮者としても読響デビューすることになっています。
私は彼のベートーヴェンとブラームスは聴きましたが、何故かモーツァルトは今回が初めて。プログラムが組まれたシリーズが違うから、という理由に過ぎません。
最初のロンドは、まぁ小手調べというか前菜的な一品。第1協奏曲の終楽章の代用品として書かれたという説もあるようで、ヴァイオリン・オブリガート付きのロンドという性格。ホーネックも最初から弦楽アンサンブルに参加します。
続く協奏交響曲もロンドと全く同じ管弦楽編成。管楽器はオーボエ2、ホルン2で変りません。弦楽器の編成は同じく12型でメンバーも2曲続けて同じでした。
このホルンの素晴らしかったこと! 舞台が遠いのでハッキリしませんが、多分ソロ・ホルンの山岸氏でしょう。
ヴィオラを弾く鈴木は言うまでもなく読響の首席。この曲はヴァイオリンとヴィオラの呼吸が合わなくては興醒めですが、実に見事なアンサンブルを聴かせてくれました。両者の音質も巧く合致、オルソップの流れの良い棒もあって、誠に気持ちの良いモーツァルトを楽しみました。
特に両端楽章のカデンツァは聴きもの。名手による典雅なモーツァルトと言うべきでしょう。
ヴィオラの音が輝かしく感じられましたが、もしかするとモーツァルト自身がそうしたように、調弦を1音高くして演奏したのかも知れません。
プログラム誌にはこの点に関する指摘は全くありませんでした。
メインはブラームスの明るいシンフォニー。弦の編成も16型に増えますが、管はオリジナル通り。ホルンにもアシスタントは置きません。
協奏曲ではチャンとスコアを置いて指揮していたオルソップも、ここでは暗譜で振ります。(時々協奏曲でさえ暗譜する指揮者もいますが、私はそれは邪道だろうと考えています。その点でオルソップは好感が持てますね)
定期ではオーケストラのコントロールにやや疑問を感じたオルソップでしたが、ブラームスではそうした懸念は全くなく、実に推進力に富んだ自然な流れでブラームスを紡ぎます。
モーツァルトに続いて気持ちの良いオーケストラ・サウンドを満喫しました。
第1楽章の繰り返しも丁寧に実行し、繰り返さなければ聴けない美しいパッセージも楽しみます。
但し個性的なブラームス演奏からは遠いもので、1年後にこの演奏を思い出せるかは自信がありません。
思うに、読響の指揮者陣は極めて多彩で、且つ個性的なマエストロが犇めいています。そんな中でオルソップは比較的無個性なタイプ。定期では指揮者とオケの間が未だシックリ行っていなかったのではないでしょうか。
モーツァルト/ブラームスでは、お互いの意思疎通も遥かにスムーズ。オルソップの中庸な解釈もオーケストラに充分受け入れられていたように感じました。
定期のバーバー/マーラーでは、オーケストラが突っ走った感があり、謂わば「暴れ馬」オケの読響をオルソップが御しかねた印象。ここではスッカリ手の内に入れた名騎手を見る思いでした。
余談ですが、この日はテレビ・カメラによる収録があり、公演終了後は1階席ロビーでサイン会も予定されていたようです。
会場で売られていたCD(多分、ブラームスの2番もあったのでしょう)を買い、列に並んでサインを貰い、出来れば女史とのツー・ショットを撮ってもらい、後日放送される番組を見、出来ればDVDにコピーして何度も繰り返して聴けば、あなたは立派なオルソップ・ファンになれるでしょう。
そういうサービス満点のコンサートでしたね。
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