N響・第1664回定期の放送
N響の1月定期はBS2で放送されたはずですが、録音予約リストに残っていませんでした。どうやら国会中継のために放送そのものが中止になったようですね。確認していませんが、昔から音楽番組は犠牲になる習慣でしたから別に驚きもしません。
で、この回は改めてハイビジョンで放送されたものを見ました。1月9日にNHKホールで行われたA定期です。
そもそも1月は予定されていたローレンス・フォスターが病気のために来日できず、AプロはN響正指揮者に指名されたばかりの尾高忠明がピンチヒッターに立った、コンサート。プログラムの変更はありません。
曲目はお正月らしく、前半がシュトラウス一家のワルツやポルカ、後半は同じシュトラウスでも血縁関係は無いリヒャルトの代表作が二つです。明細は、
①ヨハン・シュトラウス/喜歌劇「こうもり」序曲 ②ヨゼフ・シュトラウス/ワルツ「天体の音楽」 ③ヨハン・シュトラウス/常動曲 ④ヨハン・シュトラウス/アンネン・ポルカ ⑤ヨハン・シュトラウス/ポルカ「観光列車」 ⑥ヨハン・シュトラウス/皇帝円舞曲。以上が前半、後半はリヒャルト・シュトラウスのプルレスケと歌劇「ばらの騎士」組曲というもの。
N響がウィーンの楽しい音楽を演奏するのは比較的珍しいように思います。そもそもドイツのオーケストラを手本してきた伝統がありますから、ウィーン音楽は敬遠されてきた歴史もあるでしょう。
私が記憶に残っているのは、ウィルヘルム・ロイブナーが首席指揮者だった頃にはコンマスや首席チェロにウィーンっ子が並んでいて、随分ウィーン風の音楽をやっていたことと、ウィリー・ボスコフスキーが客演してニューイヤー・コンサートのようにヴァイオリンの弾き振りを披露していたこと位ですかね。
今回は尾高氏が振るということで、常動曲を何と言って終わらせるのか興味を持って見ていました。日本語で何と言うのかな?
前半の6曲は全て通して演奏されました。もちろん間に拍手は入りますが、マエストロは舞台裏に戻らず、直ぐに次を振り出すという具合。
その常動曲、途中で実に巧いタイミングで“ウン” という気合を掛けた楽員がいましたね。客席はほとんど気が付かなかったようですが、ここ、笑えましたね。N響にもこんなお茶目がいるんだぁ~。
最後にマエストロが客席に言ったのは、“以下、同文です” 。なるほどねぇ~。
ここで客席がドッと沸いて雰囲気もリラックスしてくる、というのがウィーン流でしょうが、N響の客席は堅い堅い。実際はどうだったのか判りませんが、テレビで見ている限りでは、お義理の拍手としか聞こえません。
観光列車では打楽器奏者の一人と尾高マエストロがシャフナーホーンというのでしょうか、列車の出発合図を吹きましたが、客席も若干ざわついた程度。
皇帝円舞曲はカットの無い完全全曲版が演奏され、前半は目出度く終了。
後半のプルレスケでソロを弾いたのは若林顕。実に男臭い、達者なピアノを披露していました。かなり難しい曲だと思いますが、これだけ弾くのは大したもの。楽器はスタインウェイ。
最後のばらの騎士組曲は所謂1945年版。シュトラウス自身のアレンジとなっていますが、実際はアルトゥール・ロジンスキが編纂してニューヨーク・フィルの定期で初演したものですね。
尾高忠明はピンチヒッターながらこの曲を完全に手中に収めていて、N響から見事なシュトラウス・サウンドを引き出していたと思います。
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