強者弱者(65)

涅槃会

 十五日、釈迦涅槃会。人皆かすかなる記憶をたどりて幼時故郷の寺に見たる大聖涅槃の図を思い浮ぶる日なり。夢の如き恐怖の情、袖にすがりて図を指し、物みなの歎き悲める理由を問ひかへしたる祖母なる人の俤、追想又追想、暖日南窓、白昼の夢悠々として尽きず。
 鶯鳴く。

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すっかりバレンタインの喧騒に忘れ去られていますが、今日は涅槃会です。つまり御釈迦様の命日。「入滅」という言葉を使います。
本来は旧暦の2月15日ですが、現在は新暦でもこの日が涅槃会ということになっていますね。

「涅槃」(ねはん)は梵語で吹き消すこと。消滅するという意味です。ニルヴァーナ Nirvana 。

この日は涅槃図を掲げて読経するのが行事で、子供たちはその恐ろしい絵に怯えた、ということを書いた文章でしょう。
釈尊が涅槃に入る様子を嘆く鬼畜などが、子供には珍しい涅槃図に描かれているのです。

我々クラシック音楽好きは、黛敏郎が作曲した涅槃交響曲 Nirvana Symphony でも聴きながら涅槃会を過ごそうではありませんか。

涅槃会は一方では、如月(きさらぎ)の別れという意味合いもありますから、この日を境に暖かくなるということでもありましょう。
「暖日南窓」とは暖かい日の南の窓。今年はもう少し先のことになりそうです。

 

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