オオイヌノフグリ

去年の春から秋にかけて散歩の途中で出会った路傍の花を「自然」というカテゴリーで思いつくまま紹介してきましたが、漸く春が巡って来て、今年も様々な花が咲き始めました。
そこで当ブログでも、去年取り上げなかったものを中心に、折に触れて扱っていく積りです。

さて早春の目立つ花の代表はオオイヌノフグリでしょう。今年も可憐な青い小花を付け始めました。
道端に見掛けるというより、少し広い空地や公園の日当たりのよい場所に纏めて咲いています。朝夕は閉じていますが、陽が当たると大きく開花する花。
小さいから目立たないように思いますが、他に花の無い時期から咲き出しますので、虫たちには早春の御馳走になるみたいですね。

私がこの花の名前を知ったのは比較的新しいことで、その妙な名前から同時に命名の由来も教えて貰いました。

「フグリ」とは♂のナニのことで、この植物の種の形が雄犬のフグリに似ているから。日本には古来からイヌノフグリという植物がありましたが、外国から入って来たより目立つ大型の種類を「オオイヌノフグリ」と命名したのでしょう。
原産地は西アジアから中近東の由。

ということは、オオイヌノフグリは堂々たる帰化植物。明治の中頃、正確には1880年頃に東京で確認されたのが最初なんだそうです。
現在は各地で昔からあったような顔をしていますが、実は江戸時代には日本に存在しなかった花なんですねぇ~。時代劇映画に映っていたらアウトです。

春一番に咲き出すのには理由があって、オオイヌノフグリはイヌノフグリと違って虫媒花であるため。虫が止まると、花はその重みで下向きに垂れます。虫は慌てておしべに抱きつき、その時に花粉が虫体になすりつけられる仕組み。
これは花粉学者の田中肇氏が観察して発見したのだそうです。

つまりオオイヌノフグリは背が低く、花も小さいので、他の植物が開花する前に虫を惹きつける必要があるのですね。だから他に先んじて開花するワケ。
日当たりの良い午後、ハナアブやハエが頻りにオオイヌノフグリに集まりますが、これも生物の戦略なのですね。味わうべし。

学名は Veronica persica ヴェロニカ・ペルシカ。属名のヴェロニカは、ゴルゴタの丘に向かうキリストに血を拭う布を捧げた伝説の女性の名前。

この属には花の中心が真っ赤な種類もあるそうですが、捧げた布がオオイヌノフグリのコバルト・ブルーだったからだ、という説もあるそうです。
種名のペルシカは、ペルシャの、という意味。

 

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