きゅりあん・スプリングコンサート

九州旅行から帰ったばかりなのに、性懲りもなく日曜日のマチネーを聴いてきました。出掛ける気になったのは、会場が地元・大井町の「きゅりあん」で下駄履きで行けるほど近いことに加え、尊敬すべきピアニスト・小川典子が恐らく初めてであろう大井町に出没すること、からでもあります。

「フレッシュ名曲コンサート」というタイトルが冠せられていますが、これは東京文化会館が都内各地区の団体と共催して実施している新進音楽家の発掘と育成を目的とするもの。
品川文化振興事業団が主催する「きゅりあん」でのスプリングコンサートは、今回が20回目だそうです。

そもそも私は地元ながら当ホールにはほとんど出掛けません。「きゅりあん」開設当初は来日オーケストラの演奏会なども行われていましたが、現在は都内のコンサートホールとしては目立たない存在になっています。

私の数少ない体験でも、席によって空調のノイズが耳についたり、ステージの狭さとデッドな音響故にクラシック音楽の演奏会場としては問題の多い会場なのです。多目的ホールの宿命かも知れません。
コンサートホールとしては、後発の蒲田・アプリコ、川崎・ミューザに遥かに及ばない知名度になってしまいました。

この日の感想も同じ。
メインの大曲でもコントラバス5人がやっとの状態です。プログラムは、

モーツァルト/フルート協奏曲第2番
シューマン/ピアノ協奏曲
     ~休憩~
シューベルト/交響曲第9番「ザ・グレート」
 指揮/渡邊一正
 フルート/上野由恵
 ピアノ/小川典子
 管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団

オーケストラは東フィルということになっていますが、ここは実態が今一つハッキリしない団体。私が顔を知っているメンバーは一人もいませんでした。

前半の二つの協奏曲が寧ろメインになるコンサートでしょうが、私が感じたのは協奏曲の難しさ。
協奏曲という音楽形態は、前日に佐賀空港のテレビで見た五輪中継のパスート Pursuit という競技に似ていると思うのです。

つまり、スケート競技同様、ソリスト・オーケストラ・指揮者の3人が同じレヴェルで一つの目標を目指さなければならない、ということ。どれか一つが抜きん出いても音楽としての感動には繋がりません。
ただ音楽がスポーツと違うのは、勝ち負けを争う競技ではないこと。三者は其々のバランスを計りながら演奏を仕上げて行きます。そこは流石にプロで、モーツァルトにしてもシューマンにしても一定のレヴェルは保っていました。

最後のシューベルトは、ホールの音響の所為もあってブラスバンド協奏曲の趣。管楽器の音量に比して弦楽器がいかにも弱体でした。

名曲3曲が並びましたが、演奏時間としては通常より大盛り。正味2時間のコンサートに休憩が入り、この種のコンサートに付き物のアンコールはありませんでした。

 

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