作曲者指揮による「ニクソン・イン・チャイナ」

昨日は、今年のプロムスで取り上げられる最後のオペラ全曲作品が演奏されました。

≪Prom 72≫
アダムス/歌劇「ニクソン・イン・チャイナ」(セミ・ステージ上演)
 管弦楽/BBC交響楽団
 指揮/ジョン・アダムス
 ニクソン/ロバート・オース
 ニクソン夫人/ジェシカ・リヴェラ
 毛沢東/アラン・オーク
 毛沢東夫人/キャスリーン・キム
 キッシンジャー/ジェームズ・ラザフォード
 周恩来/ジェラルド・フィンリー
 その他
 合唱/BBCシンガーズ
 演出/ホール・カラン

こんな題材がオペラになるのか、と最初は訝しく思っていたアダムスの「中国のニクソン」。先シーズンのメット公演がWOWOWでも放送されましたので、ご覧になった方も多いでしょう。
この政治的な事件そのものがあったのが丁度40年前ですから、今年のプロムスで紹介される理由の一つなのでしょう。今回は作曲家ジョン・アダムスがBBC響を指揮するのがミソ。BBC響も、今年のプロムスは最後から2番目の公演。あとはラスト・ナイトを残すばかりですね。

それにしてもアダムスの人気は大変なもの。未だ何もしていないのに、登場するだけで喝采に包まれるのですから。客席の反応も極めて熱狂的、ブーイングなんて一つもありませんでしたヨ。

全体は3幕、各幕の終わりに休憩が入り、放送も一幕づつ分けて聴くことが出来ます。どの程度のセミ・ステージかは不明ですが、ネット中継の音質はかなり優れていると思いました。

私的感想を言えば、最早アダムスは避けて通れません。私はあまり熱心なコンサート・ゴアーではありませんが、それでも彼の作品は何曲もナマで遭遇してきました。確か日本フィルも今シーズン、この歌劇の「主席は踊る」という管弦楽曲を定期で紹介するはずです。
所謂ミニマル・ミュージックという手法。短いフレーズを何度も執拗に繰り返すので、いやでも音形が耳についてしまいます。このオペラでも、第1幕のニュースのアリアや、第2幕の「私は毛沢東夫人」という毛夫人のアリアなどが良い例。好き嫌いは別にして、一聴すれば直ぐにアダムスの曲だ、と判る所が凄いのですな。

キャストも素晴らしいもので、キャスリーン・キムはメットでも同役を歌っていました。また周恩来のフィンリーはメット公演の「ドクター・アトミック」でも主役のオッペンハイマーを歌ったバリトンで、第3幕の彼の歌を聴いていて、このオペラの主役は実は周恩来じゃないか、と感じたことを思い出してしまいました。
もう一度メット公演の録画を見直してみましょう。

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