バントックとチャイコフスキー
プロムスのワーグナー・リング・サイクルは一旦休憩に入り、7月24日はいつものオーケストラ・コンサートです。
≪Prom 16≫
エルガー/ファルスタッフ
バントック/サッフォー風詩曲 Sapphic Poem
~休憩~
ウォルトン/ヘンリー5世(弦楽のための2つの小品)
チャイコフスキー/交響曲第4番
BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団
指揮/ジャック・ファン・ステーン
ラファエル・ウォルフィッシュ(チェロ)
ロイヤル・ボーイの誕生に引っ掛けた訳ではないでしょうが、この日はイギリス国王に因んだ作品が並びました。残念ながらジョージではなくてヘンリーでしたが、余りにもタイミングが良いですね。
尤もこの週末にはアスコットでキング・ジョージⅥ世クイーン・エリザベス・ステークスが行われますから、こっちの方がタイミングとしては上かも。先のことですが、いずれはジョージ7世の御代になるのでしょうか。
ということで、エルガーとウォルトンは同じヘンリー5世がテーマ。エルガーは曲名がファルスタッフですが、対旋律のように登場するのがヘンリー。国王になる前のヘンリー王子が描写的に描かれたもの。
エルガーもウォルトンも日本では一部の曲しか演奏されません。特にエルガーはシュトラウスのドン・キホーテも顔負けな位ストーリーに沿って音楽が展開されますから、もっと知られて良い名曲でしょう。
しかしこの夜の主役は、前半の最後に取り上げられたグランヴィル・バントックと聴きました。演奏されたのはチェロ協奏曲風の作品で、演奏時間は15分ほど。実に美しい一品でした。
独奏したウォルフィッシュは、今年還暦を迎えるイギリスを代表するチェリスト。
アンコールが演奏され、これがまた絶品。ウォルフィッシュの紹介では「ハマディール」と言っていましたが、バントックは多作家なので今一つハッキリしません。中継アナウンサーは「ヘブライの旋律」とも呼んでいました。
作品表にチェロとハープの作品に該当するものがありますが、今回演奏されたものはオーケストラ伴奏版。ハープがソロ楽器として活躍しますから、恐らくこれでしょう。もちろん管弦楽版の編曲者は判りません。
昨今のイギリスではバントック・ルネサンスが起きているようで、日本ではこうした動きは中々知れません。プロムス実況によって世界最前線の話題を知ることが出来るのは真に有難いことです。
バントックのメロディー、日本に受けること間違いなしで、今年のプロムスではバントック作品がいくつか取り上げられるそうですから、絶対に聴き逃さないように。この日のサッフォー風詩曲はプロムス初演だそうです。
最後は定番のチャイコフスキーですが、今年はチャイコの交響曲全6曲が次々に取り上げられる予定。アニヴァーサリーではありませんが、チャイコフスキーの交響曲も今年のプロムスの隠れテーマなのです。
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