アンサンブルシリーズ2007・第1回

2006年度にスタートしたアンサンブルシリーズ、2年目に入って最初のコンサートを聴いてきました。ミューザ川崎シンフォニーホール。
2006年度は全4回全て聴きましたが、今シーズンは他の予定と重なる日がほとんどで、聴けるのは今日だけです。

因みにこのあとの予定は、9月24日がジャーマン・ブラス、12月15日はアーロン弦楽四重奏団、来年3月1日がベルリンフィルの弦楽ゾリステンです。
アーロンだけは何としても行きたかったのですが、どうにもなりません。他の会場での予定も今の所はないようで、全く以って残念です。
今日は以下のもの。

小川典子&エヴェリン・グレニー
(この二人の他にフィリップ・スミスのピアノも加わるのですが、何故かコンサートのタイトルに彼の名がなく、可哀想じゃありませんか・・・)
曲目は、
ジョン・サーサス/ドラム・ダンス
マティアス・シュミット/六つのミニチュア
アストル・ピアソラ(山本京子編)/デリカシモ、リベルタンゴ
ネボイシャ・ジヴコヴィッチ/ソナタ風に
~休憩~
ルー・ハワード・スティーヴンス/リズミック・カプリス
スティーヴ・ライヒ/クラッピング・ミュージック
ジョン・サーサス/断章
カミーユ・サン=サーンス/白鳥
アスケル・マッソン/プリム
菅野由弘/アース・ストリーム(大地の流れ)(小川典子委嘱・世界初演)

主役はもちろんスコットランドの女流打楽器奏者・エヴェリン・グレニー、去年爵位を授与されたので、デイム・エヴェリン・グレニーです。
聴覚に問題があるとは思えない、極めてエネルギッシュにして集中力の途切れない演奏で聴衆を圧倒しました。
彼女が登場しなかったのは、ピアノ連弾用に編曲されたピアソラ作品だけ。そのピアノは舞台左手端に置かれています。
舞台上段にはマリンバとドラムキットが置かれ、下段には様々な打楽器が作品に応じて組み合わされています。

冒頭のサーサスはスミスのピアノとドラムキット、続くシュミットはマリンバのソロによる演奏。
ピアノ連弾を挟んだジヴコヴィッチは再びスミスとグレニーのデュオ。私はこの作品が気に入りました。3楽章構成ですが全体は通して演奏され、第2楽章は緩徐部分で、第3楽章の最後の方には打楽器のカデンツァ風の箇所がありました。比較的古いスタイルのようです。

後半のスティーヴンスはマリンバ奏者でもある作曲家の手になるもので、マリンバ・ソロ。「スティーヴンス・グリップ」や「マリンショット」なる奏法も目で確認出来ました。
ライヒは曲名の通り「拍手」によるミニマル・ミュージック。小川典子の打楽器デビューでした(といっても拍手ですが)。
同じ曲のウッドブロック版もグレニーのソロで披露、座布団に座りながら演奏します(これは彼女のホームページでも見ることができます)。

サーサスの断章は、グレニーがピアノの前に座り、小川との連弾。グレニーのピアニストデビューじゃないでしょう。これがこの作品の本来の姿で、ヴィブラフォンとピアノにアレンジした版もあるそうです。
3人揃って(ピアノは連弾)白鳥を演奏したあとはマッソンのプリム。スネアドラム独奏の作品で、グレニーの超絶技巧に唖然。

最後は今日の最大の目玉、小川典子の委嘱になる菅野作品の世界初演です。
これは期待に違わずスケールの大きな、大変に聴き応えのする作品でした。
作曲者自身のプログラムノーツによれば、“2人のパワフルな女性の大地を揺るがすリズムと響き、それを照らすフィリップの明かり、この3人が織りなす地の叫び”が表現されていました。
ピアノ・デュオの最初は小川が高音部、スミスが低音部を担当していたのですが、途中から役割を交替して小川が低音を響かせ始めます。
この辺りから終結にかけての圧倒的な力感は、けだし聴きものでした。彼の代表作に挙げられるようになるのは間違いないでしょう。
客席の菅野氏も舞台に上がって盛んな拍手に応えます。

アンコールはグレニーとスミスによる「熊ん蜂は飛ぶ」。
これは現代音楽のコンサートと呼んでよいのでしょうが、戦後暫くの間に行われていた「前衛」というスタイルでは最早ありません。そこには西洋も東洋もなく、敢えて言えば世界音楽という無国籍音楽なのです。
現代音楽の流れははやここまで来たのだ、というのが実感でした。聴衆も特に「現代音楽」という身構えた聴き方ではなく、楽しいものは楽しい、凄いものは凄い、というリラックスした姿勢が感じられるコンサートでしたね。

とに角打楽器の迫力と様々な技巧、時にピアノが霞む場面もあったほど。単に叩くだけではなく、擦る、触れる、撫でる、はたく、引っぱたく、ぶん殴る、蹴飛ばす、押し付ける、引っ掻く、エトセトラ・・・。
あぁ、面白かった。

 

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