他山の石

12日の午後、NHK・BS2でN響80年を記念する番組が放送されました。外出と重なっていたので録画しておき、昨日見たのですが・・・。

番組は私の予想とは全く違っていて、スイトナー、シュタイン、サヴァリッシュの3「巨匠」の思い出の名演集というスタイルでした。私が期待していたのはこの名門オケの歴史を概観し、各時代を均等に検証するもの。もちろんそういう個所も僅かながらありましたが、ローゼンシュトック、ロイブナー、エッシュバッハー、シュヒターについてフィルムでチラッと紹介し、ストラヴィンスキーとカラヤンを映し出すに留まっていました。

番組はN響元団員、高名ピアニスト、現役の評論家と司会者で進められ、全体としては3巨匠に愛され、育てられたN響讃歌のようでした。
ようでした、というのは内容に失望したため、ほとんど飛ばして最初と最後しかロクに見なかったからです。

で、いろいろありますが、最後のサヴァリッシュのコメントには愕然としてしまいました。彼曰く、日本ではN響だけを40年間指揮してきた。他のオーケストラからも招聘があったけれど、N響以外のオーケストラは振りたくないので全て断った。確かそういう内容だったと思います。

私は自分の目と耳を疑いましたね。言葉の裏に、日本にはN響があればそれで充分、他は必要ない。という雰囲気が感じられたからです。
もちろんこれは私の空耳です。サヴァリッシュ氏はドイツ語で語られましたし、私はドイツ語のニュアンスなど判りませんからテロップを読んだだけ。編修子の意向があったかもしれません。
これを額面どおりに解釈してしまった私は、一瞬ながらサヴァリッシュの人格を疑ってしまったほどです。

そういえばN響は他にも数多くの指揮者と拘わってきました。私が記憶しているだけでもマルティノン、フルネ、スクロヴァチェフスキ等々。彼等には一言の言及もありませんでしたし、前音楽監督デュトワに至っては完全無視。
(デュトワについては番組全てを見たわけではないので、確信はありません)

これを見ていて、かなり以前に日本の高名な音楽評論家と指揮者がNHKのテレビ番組で対談し、日本には毎年ウィーンフィルとベルリンフィルが来日するのだから、日本人のオーケストラは全部止めてしまえ、と広言していた悪夢を思い出してしまいました。

NHKの言いたいことは判らぬでもありませんが、お気に入りの3巨匠だけを賞賛して80年記念とするというのには違和感が残りました。
そういえばN響が名誉指揮者という称号を与えているのは、N響以外の日本のオーケストラを振らない指揮者ばかりですね。何か裏があるのでは、と思ってしまいます。

辛うじて番組の最後に評論家氏が、近年はアジアから素晴らしい若手がどんどん誕生していて、N響は巨匠ばかりに頼らず、こうした若手にも積極的に声を掛けるオーケストラであって欲しい旨、やんわりと指摘していました。
司会者としては反応できる立場ではないでしょうから笑って誤魔化していましたが、これだけが救いでしたか。

真に恐ろしいのはマスコミによる報道対象の一方的、一面的な評価です。言葉の恐ろしさです。本人の意図とは別の視点で放送されてしまう危険性です。

わが身を振り返って、この日記にも勝手な感想を書き連ねていますが、全体公開にしている以上は様々な立場の方がご覧になるでしょう。自分への反省を含めて、文章には極力注意しなければいけないことを思い知りました。

それにしてもNHKには失望しましたね。

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