ダフネ・感想編

ダフネを体験してきました。とても面白かったですね。
予習編に書いた通り、いくつか注目点を事前にピックアップして臨んだのですが、ほぼ想定の範囲内でした。
欲を言えば切がないのはオペラの常、眼前に展開される舞台と音楽を素直に味わうのが、オペラの最も良い楽しみ方。私はそう思っています。

演出については全く予想していませんでしたので、“こういうやり方もあるのか”と感心しつつ、疑問を持ちつつ味わってきました。
大島早紀子という演出家は、バレエの振付も担当している通り、バレエ、いやコンテンポラリーダンスという手法をメインに据えているのですね。
指揮者が登場して直ぐ音楽が始まるのでなく、白河直子というメインダンサーが踊りを開始します。

私は不勉強でダンスというものに不案内なので、これがオペラとどういう繋がりがあるのかは理解できません。
記憶では、白河さんはオペラの中点、アポロがダフネに口づけする箇所でも登場し、最後の変身の場面でも踊られました。
この中点こそオペラの重大な転換点で、これを切っ掛けに田園劇が悲劇へと向っていくのです。
従って、このダンスが置かれているポイントは真に適切だと思います。ただ、私にはその意味がよく理解できなかっただけ。

その他、所々で4人の見事なダンサーが、私にはどのように踊るのか不思議に思えたアクロバティックなダンスを披露してくれました。これもよく判りません。私としては音楽に集中したい気持ちもありましたが、目には楽しめるものであったことは正直に白状しておきます。(観客の中にはこれだけを楽しんでいる様子の人もいましたがね)

歌はどれも立派でしたね。今回はダブルキャストで、私が観た12日は、ダフネが釜洞祐子、アポロは福井敬、ロイキッポス・樋口達哉、ぺネイオス・池田直樹、ゲーア・板波利加というキャスト。夫々の持ち味を充分に活かしていたと思います。
もちろんオペラですから全てが完璧という訳にはいきませんが、日本初演でこれだけ高い水準の舞台を実現する二期会は日本の誇りでしょう。欧米でも、一民族だけでオペラをここまで創り上げる劇場はないと思います。本当に日本人って凄いと感心してしまうのです。

我が国でリヒャルト・シュトラウスといえばこの人、若杉弘氏を第一に挙げなければいけません。本公演の成功は、何だかんだといってもマエストロ抜きには考えられないでしょう。
作品の捉え方に寸分の狂いはないし、公演全体を纏める手腕は正にヴェテランの芸。カーテンコールでも最も大きな喝采が贈られたのは当然でしょう。

それにしてもシュトラウスの音楽は憎らしいほど素晴らしい。彼の後期のオペラは創造力の枯渇を云々する批評家もいますが、私は決してそうは思いません。
確かにダフネは滅多に聴く機会がないので、時に馴染めないと感ずる聴き手もいると思いますが、繰り返し上演されて耳が馴染んでくれば、これほど五臓六腑に沁み込んでくるメロディーはありますまい。中でも最後の変身の場。単独でオーケストラの演奏会で取り上げても良いように思いますがねぇ。

日本で、日本人だけの手でダフネを堪能できる時代が来るとは、ついこの間まで考えられませんでした。二期会の皆様に感謝申し上げます。ホントに。

 

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