プロムスのサン・フランシスコ響(2)

前回に続いてサン・フランシスコ響のプロムス公演を聴きました。現地では8月最後の演奏会。

8月31日 ≪Prom 61≫
アイヴス/交響曲「ニュー・イングランドの祝日」
バルトーク/ピアノ協奏曲第2番
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第3番
 サン・フランシスコ交響楽団
 指揮/マイケル・ティルソン・トーマス
 ピアノ/ユジャ・ワン Yuja Wang

プログラムの最初は、前日ジェレミー・デンクがアンコールで弾いたアイヴスの作品。4つの独立した作品を纏めて「ホリデー・シンフォニー」と呼ばれていた作品から、この日演奏されたのは2番目の「Decoration Day」です。
そもそもアイヴスが選んだ祝日は、夫々がアメリカの四季を意味するもので、「ワシントン誕生日」は冬、「戦没将兵記念日」が春、「独立記念日」は夏、「感謝祭」が冬の休日。「Decoration Day」は当初南北戦争の犠牲者を悼む日でしたが、現在は拡大されて第二次大戦などの軍事行動で亡くなった兵士を悼む日に変わってきました。5月の最終月曜日ですが、アイヴスの時代は初期の北軍兵士追悼日だったはず。

作品は当時の行事を極めて描写的に追ったもので、緑地での集会→墓地への行列→町に戻る行進の3部構成。舞台裏から葬送ラッパが響くと、突然賑やかなマーチが始まります。何でも「コネチカット州兵第2連隊行進曲」のパロディーだそうですが、賑々しく終わった所が終わりでは無く、最後は弦楽器の静かな余韻が作品を締め括ります。
マーチの終わりでフライング拍手が出なかったのは、流石にプロムスの聴衆。MTTの振り方が良かったのかもしれませんね。

続いては前回同様ピアノ協奏曲名曲撰から、バルトークの極めて難しい2番。プロムスでは断然の人気を誇るユジャ・ワンが弾きました。
もちろん見事な演奏には違いありませんでしたが、第1楽章の23小節目でワンが1小節早く飛び出してしまい、暫く混乱が続いたのは残念。流石に音楽が止まることはありませんでしたが、いわゆる演奏事故でしょう。尤もスコアを見ていない人は気が付かなかったかもしれませんが・・・。

最後はMTTも全集録音を完成しているベートーヴェンのエロイカ。巨匠風スタイルと原典主義の中間に位置する解釈で、例えば第1楽章コーダでのトランペットは伝統的な加筆を実践していましたが、第1楽章提示部のリピートや、第4楽章ではDの24から弦をソロに変えたりしているのは現代の流行に沿ったものと言えそう。

客演二日目でもあり、アンコールがありました。トーマスが“ブラームスのハンガリー舞曲、でも皆が予想している奴じゃありませんよ。”と言って振りだしたのは、第10番でした。このブラームスから、翌日のオール・ブラームス・プロに繋げるのは、如何にもプロムス的。

 

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