マルカメムシ
“○○、助けてください!”
と、女子社員が血相を変えて駆けつけてきた。
“どうしたの?”
“会議室にへ、へんな虫がいるんです!”
私より遥かにオッカナイ顔をした逞しい男が何人もいるのに、よりによって一番華奢な私の所に何で頼み込んで来るんだ。「ヒトハミカケニヨラナイ」。
ゴキブリが出た、ハチがいる、と言ってはいつも出動するのはこの私。
《またか》と思いつつ行って見ると壁に一匹、マルカメムシ。
女子社員が3人、部屋の隅で震えている。
刺激しないように指で落とし、手のひらに受け止めて窓から逃がす。
“それ、何ですか”
“マルカメムシ”
“エッ、マルコメミソ・・・?”
“違う。丸いカメムシ、マ・ル・カ・メ・ム・シ”
“エッ、カメムシって臭いんですよねぇ”
“そう。臭いだけじゃなくて毒もあるらしい。アリなんか死んでしまうんだ。それに、密閉した容器に入れて匂いを出させると、自分も死んでしまうらしいよ。”
“○○、大丈夫ですか”
“平気だよ、人間には害がない。それに臭いって言ったって、人によっては良い匂いと感ずる場合もあるのさ。薄めて香水として使っている所もある”
“ウッソォ~”
“いや、ホント”
“ウッッッソォォォ~~~”
騒ぎが終われば他の話題でぺちゃくちゃ、こういうことでもなければ私の所に駆け寄ってくることもなかろうに・・・。
マルカメムシ、は成虫で集団なって越冬する。そろそろ寒くなってきたので越冬場所を探して屋内に入ってくるのだろう。
集団越冬をしている姿を彼女たちに見せてやりたい。
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