デュトワが振る「青ひげ公の城」

8月3日のプロムスは、すっかり常連になったデュトワ指揮するロイヤル・フィル登場。ドヴォルザークとバルトークというマエストロ得意のレパートリーが並びました。

8月3日 ≪Prom 25≫
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲
     ~休憩~
バルトーク/歌劇「青ひげ公の城」
 ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団 Royal Philharmonic Orchestra
 指揮/シャルル・デュトワ Charles Dutoit
 チェロ/アルバン・ゲルハルト Alban Gerhardt
 ユディット/イルディコ・コムロージ Ildikó Komlósi
 青ひげ公/ジョン・レリエー John Relyea

前半はドヴォルザークの名作。今年のプロムスはチェロ協奏曲が多数取り上げられますが、ファースト・ナイトのエルガーに続く2作目がこのコンサートです。
恐らくチェロ協奏曲の最高傑作を弾く栄誉に浴したゲルハルトは、ベルリン生まれの若手。日本では2010年にN響でサン=サーンスを弾いた(マリナー指揮)チェリスト、と言えば覚えている方もあるでしょう。私がこの人を聴いたのは、このプロムス・ライヴ中継が初めて。

1969年生まれですから、若手というよりはヴェテラン。NMLでもバロックから現代まで幅広い音源が配信されていますし、BBC3でもヴィデオ映像を含めて様々な演奏が聴けます。
喝采に応えてアンコールは、バッハの無伴奏チェロ組曲第6番からプレリュード。

プログラム後半はバルトークの歌劇。今年のプロムス、これを加えれば5つのオペラが登場しますが、既に終わっているボリス、セヴィリアの理髪師に次ぐ3作品目です。
青ひげはオペラというよりカンタータ的な作品で、今回はプロローグは英語、本体はハンガリー語歌唱での演奏でした。最初の方で若干ミスがありましたが、スコアを見ていなければ判らない程度のもの。

そのスコア、手元にあるのは古いユニヴァーサル版で、歌詞はドイツ語と英語訳しか附されていません。そろそろハンガリー語版のフルスコアが欲しいところですね。
7つの部屋が登場しますが、第5の扉が開く場面が作品のクライマックスで、堂々たるハ長調がホール一杯に響き渡ります。ここを聴いていて、やはりバルトークは全体の構造、黄金比率に拘った作曲家であることを改めて感じ入った次第。

ところでこの日のデュトワ、写真を見ると白いジャケットで指揮しているのが目に付きます。

http://www.bbc.co.uk/events/en65v2#b07m5gph

最近は見掛けなくなりましたが、オーケストラ楽員も指揮者も全員が白ジャケットというのが昔の日本フィルの夏場の定番でした。故渡邉暁雄氏の発案で始まったもので、ボストン響と楽員交換をしていた時にも着用していたことを覚えていますから、小澤征爾時代も続いていたんでしょう。
ところが夏も昔ながらの黒に戻してしまったのは、小林研一郎氏。白は嫌、という単純な理由だと聞いたことがあります。

ところが何年か前、確か7月定期に当時正指揮者だった広上淳一が白ジャケットで登場したことがありました。楽員が皆黒なのに変だな、と思って楽員氏に聞いた所、“コバケンさんが昔に戻したことを知らずに、広上氏が本番で白ジャケットしか持ってこなかった。取りに帰る時間も無かったのでそのまま出ちゃったんだヨ”とのこと。
そんな裏話を思い出しながら、デュトワのバルトークを有難く拝聴しました。

 

 

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