ハンス・ロット/交響曲(1)

新しいカテゴリーに「知られざる佳曲」を加えました。不定期ですが、気の向くままにレアな音楽を取り上げていく積りです。第1回はハンス・ロットの交響曲、来月大阪シンフォニカーが演奏することになっていますので、それに合わせ、かつて某クラシック掲示板に投稿したものを再録致します。

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 ハンス・ロットの名はまだまだ一般に膾炙しているとは言い難いものがあります。実は私もつい最近までその存在すら知らずにきた作曲家です。多少私的な話になりますが、私がハンス・ロットを知るに至った経緯を紹介することにしましょう。
在京のオーケストラ・ファンの方はご存知でしょうが、日本フィルは、毎月の定期演奏会の聴き所を指揮者自身が語ってくれる「マエストロ・サロン」を開催しています。定期演奏会の行われる週の火曜日が原則で、会によって多少バラつきはありますが、毎回20名前後の方が参加されています。私はその常連なのですが、2003年の6月、ネーメ・ヤルヴィ氏が参加者の一人の質問に答える形で、あまり知られていない作曲家の一人として、このハンス・ロットを紹介してくれたのです。詳しい内容は日フィルのホームページで閲覧することができますからそちらに譲るとして、ヤルヴィ氏はロットの交響曲をブラームスとマーラーに関連付けて絶賛されました。
更に翌7月、同じマエストロ・サロンに登場した沼尻竜典氏も、ハンス・ロットの交響曲に言及されました。もちろん偶然なのですが、沼尻氏の場合はもっと直裁にマーラーがロットの交響曲から多くの部分をパクッたのではないかという見解を示されたのです。これも内容は日フィルのホームページで読めるはずです。
幅広いレパートリーと深遠な見識を誇る洋の東西の両マエストロが激賞するのを聞いて、関心を持つな、というのは無理な話。私も早速インターネットでハンス・ロットを検索、多くの情報を得ることができました。ヤルヴィ・沼尻両氏とも現に海外でこの作品を指揮しており、どの場合も好評で迎えられているということも知りました。
以上のような手続きを経て、私もロットの交響曲のCDを入手し、聴いてみました。予想に違わず、というよりそれを遥かに上回る感動を覚えました。全4楽章、楽章を追う毎に演奏時間が長くなるという、見ようによってはバランスの悪い構成なのですが、これが二十歳前後の若者の作品であることには改めて驚嘆の念を禁じえません。緩徐楽章(第2楽章)よりスケルツォ(第3楽章)の演奏時間が長い交響曲なんて他にあるのでしょうか。この辺にも彼の狂気を感じました。
私は、交響曲の歴史の中で、ブルックナーからマーラーへの移行がやや唐突であることに長い間疑問を抱いていました。このロットを知ることにより、その辺の疑問は氷解したような気がします。
皆様にも一度お聴きになることを強く薦めますが、何としてもナマで、実際にホールでどのように響くのか体験したいものです。これは聞こえてくる音楽ではなく、あくまでも聴く音楽です。近い将来我が国のオーケストラの演目に載るような気がしてなりません。その案内を見つけたならば、万難を排してこれに臨むべきではないでしょうか。それがクラシック音楽ファンの義務でもあると考えます。

 

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