N響・第1653回定期の放送

ホグウッド指揮のN響定期、3回目の放送は9月19日にNHKホールで行われた第1653回定期でした。次の会とは後先になっているのは、放送の順序がこうだったから。何か理由があったのでしょう。

オール・メンデルスゾーン。それも名曲ばかりが並びましたが、そこは一癖あるホグウッドのこと、チョッとした仕掛けが施してあります。
序曲「フィンガルの洞窟」、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第3番「スコットランド」というプログラム。典型的な序曲→協奏曲→交響曲という組み合わせでしたが・・・。

最初の序曲は普段聴き慣れているフィンガルではなく、「ローマ版」というものです。普通に演奏されてきたものは「ロンドン版」と呼ばれる由。
メンデルスゾーンの各種エディションについては良く知りませんが、30小節を過ぎる辺りからロンドン版とは異なる展開になって行きます。大筋は同じで、終わり方も同一ですが、聴いた感想は、“変なのォ~” 。

次の協奏曲も「初稿」による演奏とか。何でもソロを弾いたダニエル・ホープがこの稿による演奏を希望したのだとか。
恐らくホグウッドが、この稿で演奏できるソリストを選んだ、ということじゃないでしょうかね。
序曲程ではないにしても、彼方此方で現行版とは異なる動きが出てきます。

ソロが休んでオーケストラ全奏が演奏する場面でもソリストが同時に演奏したり・・・、
カデンツァはずっと短く、技巧的に簡単(のように聴こえました)になっていたり・・・、
オケの弦がピチカートで書かれている所がアルコになっていたり・・・、
現行版には無い箇所でフルートが重ねてあったり・・・、

以上の2曲、残念ながら私には、こういう版も存在したという事実以外には敢えて取り上げる意義が感じられませんでした。
序曲はホグウッド校訂というテロップが出ましたが、恐らくローマでの演奏時のパート譜からホグウッドがスコアを新たに起こしたのではないでしょうかね。ネットで検索してみましたが、このエディションの楽譜は市販されていないようです。
(市販されたとしても買う気はありませんが)

協奏曲もこの形での出版は見当たりません。
そもそもこういう版を演奏したいというヴァイオリニストには、どうしても疑いの目を向けたくなってしまうのは私の悪い癖。先入観があるせいでしょうが、それほど達者なヴァイオリニストだとも思えません。

定期演奏会ですが、ソリストによるアンコールがありました。
ラヴェルの「2つのヘブライの歌」から1曲目の「カディッシュ」。本来は歌曲ですが、無伴奏ヴァイオリンにアレンジしたもの。昔はよくメニューインが演奏して録音もしていましたが、あれはピアノ伴奏付きでした。あるいはホープ自身が更にアレンジしたのでしょうかね。それ以上のことは判りません。

最後の交響曲はマトモな演奏でした。例によって第1楽章の繰り返しはキチンと実行します。
演奏もN響らしい堂々たるもので、これだけは安心して聴けました。

ただ私の知っている限りでは、スコットランド交響曲にも「1842年ロンドン版」なる異稿が存在するはず。
どうせなら序曲や協奏曲と同様にゲテモノ(失礼!)で統一して、聴衆の期待を完璧に裏切った方が痛快だったと思いますが。
どことなく中途半端。

ところでホグウッド博士、メンデルスゾーンは全て指揮棒を使っていました。これから判断すれば、メンデルスゾーンは現代音楽という解釈だと思われます。

N響のカーテンコールは至極あっさりしたもの。同じ9月の読響/スクロヴァチェフスキの大騒ぎとは好対照でした。

 

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