NHK音楽祭/シンシナティ交響楽団
先日BS2で放送されたシンシナティ響の来日公演を見ました。
アナウンサー女史の解説によると、この音楽祭は今年で7年目。放送を通じてより多くの視聴者にクラシック音楽を楽しんでもらう、というのが音楽祭の趣旨だそうです。
ということは、テレビやラジオで聴くのが正しい接し方ということですね。私はNHKホールでナマを聴こうとは全く思わないので関心がありませんが、もしかして葉書で入場申し込みを受け付け、抽選で入場できる仕組みなのでしょうか。紅白歌合戦みたいな。
音楽祭は毎年テーマが決まっていて、今年は「オーケストラが奏でる故郷の名曲」ということになっているそうです。
で、シンシナティはアメリカのオケですから、こういうプログラム。
①コープランド/市民のためのファンファーレ ②バーバー/弦楽のためのアダージョ ③バーンスタイン/「ウェストサイド物語」交響舞曲集 ④ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」。
指揮は音楽監督のパーヴォ・ヤルヴィ。
10月26日、NHKホールでの演奏会ですが、N響とは並び方がやや違いますね。弦楽器はチェロが右端に座るアメリカ型。ただし木管楽器がN響よりも指揮台に近い。その分、弦楽器は横に広がる感じになっています。
ドヴォルザークの場合で言うと、どうも14型のようですが、コントラバスだけは4プルト8人でした。日本のオケの標準的なフル編成に比べて弦が少ないようです。
③と④の間が休憩。前半は所謂アメリカ名曲集で、新鮮味はありません。ドヴォルザークが故郷の名曲というのにはチョッと引っ掛かりますが、まぁ煩いことは言いますまい。
①は金管とティンパ二だけ、②は弦楽器だけですが、最初から舞台にはフル・メンバーが登場しています。一気に3曲聴かせちゃう、ということでしょう。
①はそもそもシンシナティ響が第二次大戦の戦意高揚のために多くの作曲家に委嘱したものの一つ。当時の音楽監督はユージン・グーセンスでした。
この直ぐ後にシンシナティ響は設立50周年を迎えたので、その時もコープランドは同響のために祝典曲を書いています。「ジュビリー・ヴァリエーション」という作品ですが、作曲家でもあったグーセンスの主題を用いた変奏曲。シンシナティにとってコープランドは思い入れの深い作曲家なんでしょう。選曲としては文句なしか。
②と③はアメリカを題材にしたコンサートの定番。どうということもありませんが、③ではスコアに無い箇所でも指パッチンを加えていましたね。ヤルヴィという人は、何か人と違うことで目立とうとする所があるようです。
その極みが④でした。まあ、さんざん聴かされている名作ですから、面白いと言えば面白い演奏でした。
第1楽章のフルート主題の歌わせ方の思い入れタップリなこと。本場チェコの演奏家はこんなあからさまなことしません。チェコ以上に郷愁を誘う表現。
そうそう、フルートは提示部では1番が吹きますが、再現部では2番が吹いていました。2番は東洋系面立ちの美人。
第2楽章のイングリッシュ・ホルンは、2本のオーボエとは別に用意してありました。従って持ち替え無し。
“あぁ、やっちゃったァァ~” というのが第4楽章。
先ず、チューバ。この曲では第2楽章にだけチューバが出る個所がありますが、ヤルヴィは第4楽章のコーダでもチューバに吹かせていました。吹かせると言っても恐らく第2楽章同様第3トロンボーンと同じパートをなぞるのでしょうが、いくら暇を持て余しているからと言ってオリジナルに無いことをやらせるのはどうなんでしょう? 尤も音だけ聴いている分には判りませんがね。
もう一つありましたよ。
それは第4楽章の第100~103小節。ここにある低弦のアクセントにティンパ二を追加しちゃいました!! お陰でアクセントは明瞭になりましたが、シンコペーションが強調されて真にジャッジー Jazzy 。
これ、如何にアメリカのオケだから、故郷の名曲を奏でるから、と言ってもやり過ぎじゃござんせんか。
う~ん、個人的には面白かったけれど、首を捻りますねぇ。
最近聴いた新世界よりでは、チューバを無視して使わなかった下野竜也/読響と並ぶ二大怪演でしょう。下野のは2番オーボエを途中で端折ょってイングリッシュ・ホルンに持ち替える節約タイプ。
対するにヤルヴィ/シンシナティは全部使っちゃえ式バブルタイプ。
断っておきますが、快演じゃなく、怪演。
マエストロ・ヤルヴィ、ドヴォルザークだけは暗譜で振っていましたが、譜面台にはスコアが置いてあります。テレビではシャーマー版の譜面であることが一目瞭然。アンコールがバーンスタインの「キャンディード」序曲であることがバレバレでした。
実は23日の日本フィル定期の後でサントリーホール前のトゥーランドットに食事に入ったら、当のヤルヴィさんも食事中でしたよ。日本人グループ3・4人と同席していましたが、ANA Hotel にでも泊っていたんでしょうか。
日本フィルと言えば、以前よく登場していた父親のネーメ・ヤルヴィ氏が、“指揮者としての才能はクリスチャンの方が上だよ” と語っていたのが忘れられません。実力と人気は必ずしも比例しない、ということ。
私の耳には、本当の大物はやっぱりパパ・ネーメだと思うけどなぁ~。お元気かしら。
こんにちは。
この中継では、シンシナティ響の実力、わたしはいまひとつよくわからなかったです。プログラムのせいなのか、ホールのせいなのか…
で、パーヴォですが、すみません、今日(1/16)ですが、BSハイビジョンで、カンマーフィルとのベートーヴェン二曲をやるので、よかったらどうぞ。
みなとみらいでのチクルスは、ほとんど予備知識なしで行ったのですが、本当にホールの英断だったと思います。