NHK音楽祭/ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
NHK音楽祭の4種類あるプログラムのうち、3番目のものが放送されました。ライプチヒの名門、ゲヴァントハウス管弦楽団がライプチヒに所縁のある作品を演奏します。11月4日、NHKホールでのコンサートを収録したもの。
これは文句なく素晴らしいコンサートでしたね。出来ることならナマで接したかった、という印象を受けました。
曲目は、
①ヨハン・セバスチャンバッハ/ピアノ協奏曲第1番二短調BWV1052 ②マーラー/交響曲第1番二長調「巨人」。
指揮は音楽監督のリッカルド・シャイー、①でのピアノはキット・アームストロング。
①でソロを弾いたアームストロングは17歳ということで、どんな人かと思ったら東洋系の風貌を持つ少年でした。放送なのでスペルが判りませんし、国籍の紹介もありませんでした。
近年ではバッハの作品をフル・サイズのオーケストラの演奏会で聴く機会はほとんど無くなってしまいましたが、その意味でも貴重なコンサートだったと思います。
私自身この曲をナマで聴いたが何時だったか思い出せないほどです。
演奏のスタイルも昨今では古楽器が主流、今回のような現代楽器を普通に弾くバッハは却って貴重でしょう。
弦楽器だけのオーケストラ、編成は8-8-6-4-2で、対抗配置。
これは後半のマーラーでも同じで、左から第1ヴァイオリン→チェロ→ヴィオラ→第2ヴァイオリンの順。コントラバスは下手、第1ヴァイオリンの奥に並んでいます。
少年アームストロングはブレンデルの弟子ということで、音楽以外にも多彩な才能を持っている由。ここでも豊かな音楽性のバッハを披露しました。
楽器はスタインウェイ、鍵盤にのめり込むのではなく、常に指揮者やオーケストラとアンサンブルを創っていく姿勢はとても17歳とは思えません。
アンコールがあって、シューベルトのピアノ・ソナタ第10番イ長調作品120(D664)から第2楽章アンダンテ。
この楽章、実は二長調で書かれているのですよね。だからバッハの二短調からマーラーの二長調への繋ぎを見事に果たしている。こういう感覚をサクッとやるあたり、只者じゃありません。
②の弦楽器は、テレビで確認した限りでは16-16-14-12-10のようです。つまり第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが同数なのは、明らかに対抗配置を考えてのことだと思います。
東京のオケの標準サイズより一回り大きめ、ってことですね。
シャイーは指揮台で大暴れする人ですが、やっている音楽はハッタリでも何でもありません。
最近録音したシューマンはマーラー版だそうですし、メンデルスゾーンも異稿を取り上げていると聞きます(自分で確認したわけじゃありませんので本当のところは知りませんが)。
マーラーの「巨人」も先日新発見の資料に基づく演奏とやらを名古屋で聴きましたから、シャイーも何か仕掛けを用意しているのかと思いましたが、そんなことは全くありませんでした。
いや寧ろ、マーラーがスコア(昔から出ている出版譜)に細かく指示した記号を実に忠実に音にしていました。fff と ff 、f の違いをキチンと弾き分ける。アクセントとテヌートをごっちゃにしない等々。
もちろん第1楽章と第2楽章の繰り返しはスコア通り実行します。
更に、マーラーは第2楽章と第3楽章の間を「相当な時間」空けるようにという指示を書いていますが、こういう点についても楽譜に忠実。どうしたんだろう、と思うほどにタップリとパウゼを取っていました。
例の終楽章で金管楽器が立って吹く所。ここもマーラーの指示通り、7本のホルンと、ホルンの近くに座るように注意書きのある第5トランペットと第4トロンボーンがホルンに並んで立ち上がります。
その忠実度、一度通して聴き、改めてスコアを引っ張り出してきてもう一度見直したくらいですよ。
オーケストラも流石に伝統を感じさせます。もちろん現代的感覚、国際的スタンダードに変わっているのでしょうが・・・。
ただ、トライアングルの形が真っ直ぐでなく少し曲がっているのが如何にも古い楽器という感じで面白い見物でしたね。まさか250年前から使っているんじゃないでしょうけど。
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