ヘッセの蝶
今朝、NHKのニュースを見ていたら、ヘッセの蝶の話題が放送されていました。
大阪のコレクターが集めた蝶の標本の中に、採集者がヘルマン・ヘッセであるというベニヒカゲの標本が紛れ込んでいたというニュース。
これをドイツ文学者の岡田朝雄氏が鑑定して、間違いなくヘッセ採集品であると確定した由。
私が蝶好きになったのも、実はヘッセの影響によるものが大きかったのは事実。久し振りに幼時の新鮮な驚きを思い出した感がしたものです。
退屈な日々でも、目の前を蝶が過れば心ときめくのは昔も今も同じ。それが珍蝶である必要はなく、モンシロチョウやヤマトシジミであっても翔跡を目で追ってしまうのはヘッセの影響でしょう。少年の時の思い入れは何歳になっても変わらないものと見えます。
ドイツに限らず、外国では蝶と蛾を明確に区別する習慣はありません。日本では蝶を好きな人を「蝶屋」、対して蛾のファンを「蛾屋」などと呼びますが、私は鱗翅類を区別・差別することには反対ですね。もちろん分類学とは別の話です。
ベニヒカゲだって昆虫に興味がない人にとっては汚い虫、蝶も蛾もないでしょうからね。蝶と蛾に美醜の差はありません。
ヘッセと蝶、と言えば岩波書店の同時代ライブラリーにあったミヒャエルス編の「蝶」がお勧めの一冊です。翻訳は正しく岡田朝雄氏。
ヘッセが蝶・蛾を題材にした文章を、美しい挿絵と共に纏めた好著で、表紙に載ったヘッセの署名は、正に今朝テレビに映し出された標本ラベルのサインと同一です。
今日は久し振りにこの本を開き、もう一度ヘッセ全集を読み返してみようかな、という心境になりましたね。
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