強者弱者(38)
煙塵
快晴、毎年歳末に近く大気乾燥して火災漸く多し。街上煙塵の甚しきは小石川造兵側、本郷赤門前、青山学院前など行歩頗る悩む。歳末より西北の風につれて屡ゝ龍巻を見る。龍巻は青山練兵場に多し。渦き騰る煙塵の裡より騎兵の一列横隊が馬首を揃へて馳突し来れる、帽影剣光白日に映じて、濛々たる黄塵に閃出し来れる勇ましとも勇まし。
三日、旧式によれば煤払ひの当日なり。大名華族などの旧慣を墨守するものを例外として大掃除の強制施行以来市内に絶えて此事なし。
新兵の引率外出。皇城を拝して日比谷公園に休憩するもの多くは足の痛みを覚ゆ。互に靴を脱ぎて其おのれの足に適へるものと交換す。靴を足に合するに非ずして、足を靴に合するなり。艱苦察す可し。
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「馳突」は、「ちとつ」と読みます。突進すること。
三日が煤払いとなっていますが、昔の大名華族はこういう習慣だったものと見えます。
一般的には、関東では12月8日、関西では12月13日が煤払いですね。この日は正月始め、あるいはこと始めと言って、正月の準備を始める日です。
正月の準備は煤払いから始めるのを常としていましたから、8日や13日が煤払いなのです。煤掃きとも言いますね。
「大掃除の強制施行以」については良く判りませんが、明治政府から通達が出たことがあったのでしょうか。
鳩山政権が“日本の大掃除をやろう” と言っていますが、それとは少し違うようです。
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