名演技と名舞台、必見のばらの騎士

今朝は東京でも2年振りの積雪、と言っても1センチという可愛いものですが、珍しい雪景色を見ながら川崎に遠征しました。さすがに広い多摩川河川敷の雪化粧は目を惹きます。

目的のメット・ライブ・ビューイング、今週はリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」です。
ところで今週は、2月1日からNHKハイビジョンでも昨シーズンの演目を順次放送中。当ブログでも検索が多いのはそのせいでしょうかね。

同時進行中の今シーズンの第5作、主なキャスト等は、

マルシャリン(元帥夫人)/ルネ・フレミング
オクタヴィアン/スーザン・グラハム
ゾフィー/クリスティーネ・シェーファー
オックス男爵/クリスティン・ジグムンドソン
ファーニナル/トーマス・アレン
イタリア人歌手/エリック・カトラー
 指揮/エド・デ・ワールト
 演出/ナサニエル・メリル

何とも豪華なキャストですが、期待通りの、いやそれを遥かに上回る舞台でした。歴史的舞台と評しても過言じゃないと思いましたね。

演出は新しいものじゃありません。メリルは2008年9月に逝去したそうで、1969年の演出を引き継いだもの。そもそもシュトラウスはワーグナーじゃありませんから、変に読み変えたり時代を移したりするものじゃない、というのが私の考えです。
その意味では真にオーソドックス、安心して見ていられる名舞台。

先ず指揮者が素晴らしいですね。ワールトは二期会の舞台でもオランダ人で見事な棒を披露してくれましたが、メトロポリタンがウィーンのオーケストラに変貌したのでは、と思えるほどにウィーン的な響きを引き出していました。
相変わらず映画館の音響には限界がありますが、それでも今回はオケが実に美しい響きを出していることが聴き取れます。恐らくライヴで接すれば相当な感激を得られたでしょうね。

ワールトのタクトは、決して歌手に負担を強いません。それでいて濃密な響きは、ほとんど室内楽の世界。エッ、ここはこんなオーケストレーションだったのか、と新発見続出。シュトラウスの細やかな作曲法に改めて舌を巻くほどです。
この舞台の成功の第一功労者はエド・デ・ワールトでしょう。

そして三人の美女が圧巻。歌も良いのですが、何より演技が凄い。特にフレミングとグラハムの目による心理描写。
例えばマルシャリンがオクタヴィアンに呼び掛けるとき、「カンカン」と呼んでいたのを「オクタヴィアン」に変更した時のグラハムの眼の色の変化。
もちろんフレミングも負けていませんね。第1幕後半の元帥夫人の微妙な心理状態の「揺れ」を物の見事に演技し切っています。

これだけで涙が出てしまう。歳の所為かな?

こういうことはナマの舞台、それも遠くの席では容易に見分けることが出来ないでしょうが、映像はシッカリそれを捉えてくれています。ライブ・ビューイングの良い所でしょうね。
それだけメットは細部に拘り、極めてリアリスティックな舞台を創っているということの証拠。

第1幕からしてオペラに惹き込まれること間違いなし。第1幕と第3幕で、少なくともハンカチーフが3枚は必要。
それにしてもシュトラウスは凄いオペラを書いたもんですな。

休憩は2回、上映時間は4時間半の長丁場。食事は放映が終わってからの方が良さそうです。

舞台裏の司会進行はプラシド・ドミンゴ。次回作「カルメン」の主役、エリーナ・ガランチャもカルメンを語りますから、ガランチャ・ファン諸兄も見ておくように。

 そうそう、二度目の休憩(第3幕の前)で、ドミンゴ、フレミング、グラハム、シェーファーの4人がマイクを持って並んでいることの壮観。何とはなしに見ていましたが、これって凄い光景ですよね。

 

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