ムラサキツバメ

今年の5月以来、自然カテゴリーをお休みしていました。ネタが切れたわけではないのですが、他のカテゴリーが忙しくてついついサボっていたワケ。

それも一段落したので、そろそろ復活させましょう。これまでは散歩で出会ういわゆる雑草が主でしたが、これからは植物に限らず、動物も取り上げていく積りです。その時々に出会った自然。

ということで、今日はムラサキツバメの話です。蝶の一種ですね。

今朝は散髪の帰り、サッパリしたところで大井町方面に脚を伸ばしました。大井地区を流れる立会川を暗渠にして緑道にした「立会緑道」を歩いている時、やや大型のシジミチョウが眼の前を横切りました。どうやら路上で吸水したい様子。

良く見ると、何とこれがムラサキツバメじゃありませんか。暫く観察していると、飛び立ってヤブカラシの葉に止まりました。葉から滲みだしている露のようなものに口吻を伸ばしています。

実はムラサキツバメに出会ったのは、これが二度目。最初は7~8年も前でしょうか、銀座の並木通りで見付けました。そのときは初めてということもあって、並木通りを彼方此方駆け回ったものです。

蝶に詳しい人ならご存知のように、ムラサキツバメは本来東京にいる種類ではなく、主に関西の蝶。保育社の「原色日本蝶類図鑑」にも、“本州(近畿地方以西)、四国、九州(対馬を含む)、南西諸島に分布する”と書かれています。この図鑑は1976年初版ですから、少なくとも30年前は関東地方では無縁の蝶でした。

それが東京にも出現、というニュースが流れて久しくなりましたが、話題の地球温暖化などの影響で北上を続けているのでしょう。
銀座のときは、近くの日比谷公園辺りが発生地かなと考えたりもしましたが、今回は我が地元でも確認できたことになります。近所に住む愛好家T氏から得た情報では、品川区民公園にもいる由。ムラサキツバメの食樹はマテバシイですから、食べ物には困らないのでしょうね。

同じ保育社の生態図鑑によると、“秋に越冬集団を形成するため移住性が発達する”との記載があります。
また、本来は東南アジア原産の熱帯系の種であるため、特に関西地方の個体群は、他地域からの樹木とともに移入されたという研究もあるようです。

東京のものも、恐らく街路樹などが関西から持ち込まれた時に入ってきたものではないでしょうか。それが暖かい冬で越冬できるようになった、と。偶発から定住へ。

東京には昔からムラサキシジミという同属の種類がいましたが、区別は容易。ムラサキツバメにはムラサキシジミには無い尾状突起があるのが特徴。
♂♀の区別も簡単で、表の紫色が暗いのが♂、明るい藍色に近いのが♀。今朝私が目撃したのは、紛れもない♀でした。

ムラサキツバメの学名は、Narathura bazalus ナラトゥラ・バザルス。属名も種名も語源は不詳です。初めて記載したのは1862年、ヒューイットソンによってで、その時は Arhopala アルホパラ という属名が使われていました。

一方、ムラサキシジミの学名は、Narathura japonica 。その名の通り、横浜で採集されたものが最初の記載です。こちらは日本以外では、朝鮮半島南部と台湾に産する由。

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