メットの「ボリス・ゴドゥノフ」

土曜日(11月13日)から始まったメット・ライヴ・ビューィング2010-2011の第2弾、「ボリス・ゴドゥノフ」を観てきました。
ナマの演奏会が続いた後であまり気が進まなかったのですが、日本では滅多に見られる演目ではないし、これを逃すと暫く出会えないと考え、思い切って出掛けたわけ。例によって川崎です。

平日の所為もあるでしょうが、入りは悪かったですねぇ~。ボリスという馴染無い作品なので敬遠した人が多かったのかも。
その上、総合プログラムに上映時間が5時間10分とあったので引いた人もいたかも知れません。

ところが、これはとんでもないミスで、実際は4時間10分ですよ。川崎は11時から始まりますが、終わったのは3時20分頃でした。行きたいけど時間が、と躊躇っている方、安心して下さい。

主な配役はこんな具合。今回はプログラムに掲載されていなかった役も独自に調べて書いちゃいました。どうぞ参考にして下さいな。

ボリス・ゴドゥノフ/ルネ・パーぺ
マリーナ/エカテリーナ・セメンチュック
グレゴリー/アレクサンドルス・アントネンコ
ピーメン/ミハイル・ぺトレンコ
シュイスキー/オレグ・バラショフ
ランゴーニ/エフゲ二ー/ニキーティン
ヴァルラーム/ヴラディミール・オグノヴェンコ
聖愚者/アンドレイ・ポポフ
 指揮/ヴァレリー・ゲルギエフ
 演出/スティーヴン・ワーズワース

ところで最近気が付いたんですが、今シーズンのライヴ・ビューィングは妙に政治絡みのオペラが多いじゃありませんか。
前回のニーベルングの指輪は見方によっては「政治もの」だし、今回の「ボリス」。続いて「ドン・カルロ」が待っていますし、「ニクソン・イン・チャイナ」に至っては政治そのもの。
もしかして何か意図があるのかも、って考えちゃいました。

さて、
私は「ボリス・ゴドゥノフ」は未だナマで観たことはありません。レコードは別として、放送や映像を含めて経験は3回だけ。

最初は、昔のテレビにシカゴ交響楽団シリーズという演奏会の放送があって、そこで流れたジョージ・ロンドンの独唱するボリスの有名なアリア2曲。ロンドンの個性的なマスクとムソルグスキーのカッコイイ音楽の虜になりましたっけ。

2回目は、スラヴ・オペラの来日公演のテレビ放送。ロヴロ・フォンマタチッチの指揮、ミロスラヴ・チャンガロヴィッチの名演は、忘れろと言っても無理なほど圧倒的な感銘を受けたもんです。

3回目がFM放送で流れたザルツブルク音楽祭の実況テープ。カラヤンの指揮で、ボリスはもちろんニコライ・ギャウロフでした。
どれも大分昔の話。

ですから、私はこのオペラはほとんど知りませんし、最近はとんと御無沙汰でした。その意味でも今回のメットは興味深かったし、改めてこういうオペラか、という気持ちで見てきました。
(毎回、何か違うような気がするんですが、今回もアレッ、というところはありました)

このオペラも様々な版がある所為で毎回印象が異なりますが、今回のは1872-75年の改訂版を基にして初版も若干引用しているのだそうです(プログラムによる)。

ワーズワースの演出は、費用対効果を考えざるを得なかったのでしょうか、豪華な装置は出てきません。
全体を3部に分け、第1部はプロローグから第2幕までを一纏めにしています。各幕の間は幕を降ろさず、装置を巧に動かして「○○の積り」という演出です。豪華なクレムリン宮殿を期待していると拍子抜けします。
この第1部は90分かかり、終わった後でパトリシア・ラチェット(前回蝶々夫人を歌ったソプラノ)の司会でゲルギエフのインタヴューも入ります。

で、第2部はポーランドの場面。ここは比較的短い幕。

最後は演出により、版により様々なやり方があるようですが、今回は前半に「ボリスの死」があり、後半はロシアの群衆による暴走の場面。最後は聖愚者の予言で終わるのは、どのプロダクションも共通していると思いますが・・・。

前奏曲が始まる前、ボリスのドミトリー皇子暗殺を暗示、それを聖愚者が咎める演技があるので、ストーリーの前史を知らない人にもそれとなく判るようになっているのが目を惹きました。ここ、注目。

もう一つはピーメンが書く「年代史」がとてつもなく大きく、これが象徴的に各幕でも置かれているのが面白いところ。その1ページに聖愚者がくるまる場面も何やら暗示的。
当然ながら聖愚者を重要な存在として扱っています。

登場人物は、ボリスを除いて全てロシア人歌手。ボリスだけがドイツ人のパーぺですが、これが見事ですね。私はモーツァルトやワーグナーを見たり聴いたりしたことがありましたが、このボリス役でパーぺを見直しましたよ。いやぁ、ロシア語も大したもんです。

忘れちゃいけないのは合唱。このオペラの主役は合唱じゃないかと思うくらい重要な存在ですが、ゲルギエフが彼らのロシア語の発音に感心したというほど素晴らしいものでした。

ロシア人歌手たちはさすが。中でもグレゴリー役のアントネンコ、凄いです。張りのある実に強いテノール、これからも要チェックですね。オテロを歌えるということで話題になっているそうです。

ゲルギエフはいろいろあるけど、こういうものを振らせたら天下一品。言うことありませんわ。

ということで、映画とは雖も「ボリス・ゴドゥノフ」を知る(識る、というべきかな)には絶好のチャンスですよ。

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